仕事を辞めるとき、会社から「退職理由」を訊ねられます。この「退職理由」を説明するのは簡単なことではなく「どう切り出したら、うまく辞めさせてもらえるだろう」と悩みます。派遣会社に登録していれば、営業担当者がうまく立ち回ってくれますが、正規社員として採用されている場合はすべて自分で話を進めなければなりません。
不満な気持ちを持っている場合は、その気持ちをダイレクトに伝えてしまってもいいのでしょうか?定年退職を迎えない限りは「退職理由」が必要です。スムーズに次のステップに進むためには、どのように行動したらいいのでしょうか。
スムーズな退職は、スムーズな転職活動の第1歩
転職活動を始めるには「退職予定日」が必要です。「いつ辞めさせてもらえるかわからない」そんな状態では、転職先の会社も入社日が決められず話が進みません。
働きながら「転職活動」を始めておこう!
現実では「次の仕事が決まってから退職したほうがいい」と言わてれいるように、求職期間を長引かせないためには現在の会社に勤務しながら転職活動を進めていくのがベストです。無謀な転職活動は、保険料の自己負担など金銭的にも負担がかかります。
勤務中に転職活動をするヒマがない、という人は転職活動を支援してくれる「転職サイト」に登録しておいてもいいでしょう。自分のキャリアや希望に合った企業をピックアップして紹介してもらえることは非常に効率的です。「転職エージェント」や「リクルート」など求人サービスは無料で利用できます。
「転職=逃げること」ではない!
退職すると決めてからの行動は、転職経験者の話を参考に多くの情報を集めてみましょう。面接で問われる内容が時代によって変化するように、新卒採用された時代とは採用要件が変化している可能性があります。
転職回数が多いことがネックになった時代もありましたが、個人の多様性を認める世相の現代では「転職力」の強さは「生きる強さ」と言えます。これから長年「労働の道」を歩んでいくために、今回の転職経験を知識に変えるつもりでしっかりと取り組んでいきましょう。
いざ転職!みんなが悩む「仕事を辞める理由」
退職届さえ提出すれば、後は引継ぎをして辞めていくだけです。しかし、この「退職届」を提出するまでが「悩みのタネ」です。
「建前」を使って円満退社を!
自から退職を申し出る場合に、会社を辞めたい理由をなにもかも真実を打ち明けなければならない義務はありません。「辞めると言っている人の本音を聞きだしても仕方がない」という考え方もあります。しかし、これはあくまで「人間の心情」としての話です。
「職場環境が悪すぎて勤務が続けられない」など、企業として「非難」を浴びせられた場合は、「どのような問題がわが社にあるのか」など詳しく事実を調べられる可能性があります。そのような面倒なことになりたくないのなら「嘘も方便」と割り切って、退職理由の「建前」を持ち出すことをオススメします。
上司にはどう説明する?「退職する理由」
ベストなスケジュールで転職活動を行うには、現在の会社から協力を得られることが理想的です。そのためには、まずは一番に、直属の上司に相談しなければなりません。上司を説得し、協力を得るには「前向きな退職理由」を用意しましょう。「なんとなく、自分に合わない仕事だから」とか「人間関係に疲れたから」という理由では、「一時的な気の迷いだろう」と保留にされてしまうか、逆に考え直すよう説得され、退職交渉に失敗するのがオチです。
「新しい業界にチャレンジしたい。チャレンジするのは今しかない」「経験を積んでキャリアアップをしたい」と前向きに新しいフィールドに立ち向かう意志を示しましょう。新しい世界に勇気を持って飛び込んでいこうとしているのを阻害するような上司の場合は、同僚に相談しておくのも手です。
退職意思を伝えるタイミング
退職の意思を伝えて、すぐに退職できるとは限りません。会社の就業規則には「退職する○ヶ月前以上前に申し出ること」など、規定されていることがあります。この「○ヶ月以上前に」は、短くても1ヶ月、長いところでは4ヶ月以上の日数が規定されています。
会社によって違いがありますので、自分が働いている会社の就業規則を確認してみましょう。後任者を採用して、引き継ぎをするためにはそれ相当の時間がかかります。円満退社をするためにも、計画に余裕を設けましょう。また、引き継ぎをしっかと行うことは社会人としてのマナーです。
会社としては「極力辞めさせたくない」のが本音
社員の能力は別問題として、会社側としては「離職率」の高さは企業としての問題になります。転職サイトや求人サイトを閲覧していると「社員の定着率の高さ」がPRしている企業があります。
また、「あなたの会社の良いところはどこですか?」という質問には「社員の定着率がいいところです」と回答している企業もあります。 「すぐに人が辞めてしまう職場」には必ず何か問題があります。反対に「人がなかなか辞めない」というのも、必ず高いメリットがあるからです。
そんな会社側に対し、「人間関係の理由」などを持ち出すと配置転換や人事異動を提案され、「考え直してください」と丸め込まれ、一旦保留にされてしまう可能性が高まります。スムーズに辞めたい場合は、会社に不満がないことや今の会社では出来ない経験を積みたい、などの理由を示すことが最も無難です。
円満退社をするための「退職理由」とは?
会社に残る人たちの気持ちを考えて「円満退社」を目指しましょう。「こんな会社二度と働きたくない!」その言葉は、そこで働き続ける人を侮辱することになり、あなたの人間性が問われます。
ポジティブな理由なら、素直に伝えたほうが得。
会社を辞める理由が「自分で会社を興す」だとか、「どうしても就きたい職業がある」、「さらにキャリアアップしたい」などの「前向きな理由」がある場合は、取り繕わずにそのまま伝えましょう。正直に伝えることで、今いる会社の人たちからの応援や協力を得られる可能性が高くなります。
仕事をしながら転職活動を行うとき、面接の日には有給休暇など休みをとらなければなりません。現在の会社の人たちからの協力が得られていれば、休みも取りやすくなります。会社を興す場合、後の「お客様」になってくれることもありますので、人脈をもっておくためにも、丁寧に伝えておきましょう。
ネガティブな理由、素直に伝えると・・・
退職希望の原因が上司に対しての不満だったとします。しかし、「あなたが原因です」と言い切ってしまってスッキリするのは、その時だけです。いくら「辞めることになっているから」といっても、退職日までの「長くて数ヶ月」はその上司・その環境で仕事をしなければなりません。
ここで波風を立ててしまっては、残りの日数が憂鬱になりますし、周りの人たちにも「険悪なムード」が伝わってしまいます。そんな状態で退職しても得になることは1つもありません。人間関係などネガティブな理由で辞める場合は「別の理由」を用意するほうが、はるかに平和で建設的なのです。
波風が立たない「退職理由」
「職場の雰囲気に馴染めない」という理由をそのまま伝えた場合、「次の人が働きやすい職場環境にしよう」と前向きに受け止めてもらえればいいのですが、「悪口を言って辞めていった」とか「人間関係に馴染めない人だった」のように捉える人もいます。
波風が立たない、誰もが納得するような「退職理由」をご紹介します。上司がカンのいい人であれば「これは本心じゃないな」と気づくかもしれませんが、「ウソつくな」とは突っ込みにくい内容のものです。ただし、使い方には少し注意が必要です。
家族の問題
家庭の事情による退職は、理由として無難なものになります。親の介護、配偶者の遠隔地への転居などの理由は、会社側が最も引き止めにくい「致し方ない理由」になります。結婚による「寿退社」も正当な理由になります。
しかし、これらが全て「建前(嘘)」である場合、バレる可能性・バレたときのリスクが高くなります。特に「寿退社」という名目を使ってしまうと、社内の人たちから餞別を兼ねた「結婚祝い」をされてしまうことがあります。後日、外出先でバッタリ会ってしまったときの気まずさを考えておきましょう。
身体の問題
会社によっては、診断書の提出を求めるケースもあります。実際には、退職する場合診断書の提出義務はありません。企業側には診断書の提出がないからといって退職届を保留にしたり無効にしたりすることはできないのです。
しかし、身体の問題で仕事が出来なくなり療養を余儀なくされるような病状であれば「傷病手当金」という制度が利用できますので、会社側から「傷病手当金」の申請について問い合わせされるケースもあります。身体の問題を退職理由にする場合には、「大風呂敷を広げる」ことや「会社のせいで体を壊した(病気になった)」などの理由は避けましょう。
辞めた後「不意の再会」の可能性がある!
人と人との繋がりの不思議なところですが、ひょんなことから辞めた会社の人と「再会」してしまう可能性があります。外出先でバッタリという再会の仕方なら「その場だけやり過ごす」ことができます。しかし、中には「やり過ごせない再会」を果たしてしまうことがあります。
- 新しく就職した会社の同僚と、前の職場の同僚が知り合い同士だった。
- 新しく就職した会社と、前の職場が取引関係にあった。
- 新しい職場に、前の職場の同僚が「お客様」として訪れた。
遠い地域に転居を伴うような転職でもしない限り、このような「不意の再会」の可能性はまったくゼロではありません。仕事の「辞め方」今後の人間関係に影響を与える可能性があることを忘れず、慎重にすべきポイントです。
引き止められそう!そんなときの対処法
退職する覚悟は十分にあるけれど、辞めるために乗り越えなければならないのが「上司の引き止め」です。しつこく引き止められることで、せっかくの覚悟が揺らいでしまうこともあります。
とにかく、引き止められないようにすること!
しつこく引き止められないために出来ることは「相手を慌てさせない」ことです。「これから大変なプロジェクトがあるのに!」「これから忙しくなるのに!」という状況が分かっているのに、退職希望を出しても逆効果です。
しつこく引き止められることだけでなく、「逆襲」される可能性があります。退職の切り出し方を誤れば「会社や同僚を裏切ろうとした人」という評価をされてしまいます。 あなたを引き止めなくても良い状況になれば「前から”辞めたい”って言っていたよね。もう大丈夫だから、そろそろ辞めていいよ!」まるで「退職勧告」のような扱いをされてしまう危険性もあります。
退職希望日は、繁忙期を避ける
繁忙期に重なる退職希望日は、相手に「引き止めるネタ」を与えるようなものです。上司や同僚に迷惑がかかるという考え方でもありますが、「繁忙期を過ぎてから辞めてくれ=その間に考え直せ」という時間的猶予を与えることになります。最初から繁忙期を過ぎた日をこちらから提示することで、このような引き止めを回避することが出来ます。
退職日までの日数に、余裕を持って上司に相談する
「今月末で辞めようと思います」と言うと、必ず引き止められます。そして「せめて再来月まで残ってほしい」など具体的に「引き伸ばし作戦」を取られてしまいます。会社側の言い分は「これから求人を出して、面接・採用するまでに1ヶ月。そこから引き継ぎに1ヶ月。
「人がすぐに決まらない可能性もあるので、最低3ヶ月は待って欲しい」と相手に自分の退職日を決めさせてしまうことになります。
「どんな条件なら残ってくれるか」という問いには応じない
勤務条件・給与条件を退職理由にすると、「どんな条件なら勤務できるか」という話に移ってしまいます。「給与を上げてくれたら」とか「残業を減らしてくれたら」など、具体的に答えてしまうことで「では、人事に掛け合ってみるからしばらく待って」という流れに持ち込まれます。
「給与は上げることが出来ないが、今より残業が少ない部署に異動させてあげる」こんな回答が返ってきてしまったら、辞める話はどこかへ行ってしまいます。「断固、辞める」というスタンスを崩さないことが大事です。
まとめ
退職届を書いたことがある人ならすでにご存知でしょうが、退職届には「退職理由」を詳しく書きませんよね。「一身上の都合」の一筆で退職の理由は完了します。「退職届」は、「退職します」と一方的に会社に届け出るもので、上司に当る人が受理した時点から効力を持ちます。一度出した「退職届」は撤回することが出来ません。
よく似たものに「退職願」というものがあります。こちらは「退職したいのですが・・・」という“お伺い的”な性質を持ちます。「退職願」を出してしまうと、「引き止める余地がある」と判断され、上司などから退職理由を細かく問い詰められてしまいます。「嘘も方便」で退職をするなら、「退職届」を出しましょう!
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