今時、中途退社は珍しいことではありません。「この会社に骨を埋める!」という意識でしっかりと働き続けて貢献することはとても素晴らしいことですが、自分のやりたいことを新たに見つけたり、適性を自己分析して能力をさらに発揮できる仕事に転職することも、素晴らしい選択・判断です。
そんな転職時に必ず付いて回るのが、退職の申告。本音が単純に「嫌になった」「つまらなくなった」というものだとしても、それをそのまま上司に伝えたのでは角が立つ可能性がありますし、退職日までの期間を気まずい状態で過ごすことにもなりかねません。
このような状況を招かないためにも、円満な退職方法を学んでいきましょう!
退職理由について
なんだかんだ言っても、退職理由には建前と本音が混在します。これは必ずしも悪いこと・小賢しいことと言うわけではなく、社会人として適切な表現をするための、言わば社会通念の一つでもあるでしょう。
とはいえ、「嘘」で塗り固めてしまってはいつかどこかでボロが出てしまう可能性が高く、また罪悪感を少なからず抱く意味でも精神衛生的によろしくないので、ベースは「本音」である必要があります。
本音
まずは、実際のところ「どうして退職したいのか」を自分自身で整理しましょう。これはあくまでも自己分析の一つですので、無理に飾って綺麗事を考える必要はありません。むしろ、自分に正直になって改めて考えてみてください。
頭の中だけで整理がつかない人は、不平不満も含めてノートなどに書き出してみるのも良いでしょう。すると、意外と「自分は、こんなことを考えていたのか」「こんなに溜め込んでいたのか」ということを自己認識することができ、場合によっては解決手段が思い浮かび、退職を踏みとどまる可能性も出てきます。
単に「理由を整理するため」だけではなく「現状把握をするため」という意味でも、自分の本音をノートやメモ帳などにアウトプットしてから考えてみるのがオススメです。
後悔しないように!
本音を整理できたら、次に「本当に退職するのか」を再検討しましょう。本音を振り返ってみて、それが一時的に感情が高ぶっただけのものなのか、やはり冷静に考えても答えは変わらず決断できることなのかを改めて判断します。
一見どんなに理由がまとまっていたとしても、それが後々になって悔やむようなことになってしまっては元も子もありません。今一度冷静になって、最終判断を行いましょう。
理由の昇華=建前
退職理由が整理できたら、最後にその本音を適切な表現に「昇華」します。もちろん、本音をそのまま伝えるという手段もありますが、不平不満などを並べ立てたり、他社と比較した主観的評価をダイレクトに話してしまうと、やはり角が立ってしまう可能性があります。そうなると、退職日までの期間が辛くなるだけでなく、退職後にも影響が出てくる恐れがあります。
退職後に前職の人と再び会う機会があったり、再就職先に前職と関わりのある人がいたなんてことも実際にあるケースです。円満に退職することで、以後に何かあっても円滑に事が運べるようになりますので、退職前から先を見越して対応しておくことはとても大切なポイントと言えるでしょう。
では、理由の昇華例として3つ紹介します。
●上司や同僚が嫌いになった、気に入らない
⇒仕事を通して色々と学んだ結果、自分の長所や短所を見つけ、より自分に合った仕事をしたくなった
●給料が低い、正当な評価をされていない
⇒自分のキャリアップのため、違う環境にもチャレンジしたい
●仕事がつまらない
⇒新たに■■■に興味を持ち始めたので、それに携わる仕事をしたい
本音と建前は、完全一致する必要はありません。あいまい一致で良いのです。それにより「嘘」ではなく「真実」を、堂々と上手く伝えることができるようになります。そして、もう一つのコツは、ネガティブな理由をポジティブな理由に変化させることです。
最初の例ですと、「職場の人間が嫌いになった」という結果は、実際に働いていく中で発生した(≒学んだ)ものであり、誰かに対して好き嫌いという感情が生まれたことで自分の特徴(その人と合わない要因にもなる長所や短所など)を知ったということに繋がります。
そして、それをきっかけに「別の仕事をしたい=より自分に合った仕事をしたい」という希望が生まれたということになりますので、一見は建前と思える言葉でも、すべて「真実」なわけです。
他の2つについても同様で、「正当な評価をされていないと思うため、自分の納得のいく評価を得られるような環境で働きたい=キャリアップが期待できる」ということになりますし、「仕事がつまらない」時には必然的に他に何かやってみたいことが少なからず生まれている(=新たに興味を持った)わけなので、これもまた本音を言い換えているだけで何も嘘ではありません。
このように、「あくまでも自分は、前向きな理由で退職を決意した」ということを上司に伝えることが、円満退職の大きなポイントの一つとなります。そして、それが嘘ではなく真実であることで、言葉の端々にも本気さが表れ、説得力を高める要素にもなるでしょう。
もちろん、実際に話を進めていく中で具体的な内容提示の必要性も出てくるかもしれませんが、そのあたりは多少「味付け」をしたとしても、根本的なものが「真実」である以上、大きな後ろめたさなどは生まれにくいと考えられます。
上司に伝えよう
退職理由がまとまったら、いよいよ会社(上司)に伝えます。理由そのものも大事ですが、やはり「伝え方」一つで同じ理由でも印象が変わってきますので、ポイントを押さえておきましょう。
申し出の時期
まず最初に心がけることは、少しでも早めに伝えることです。あなたが役職者であっても一般社員であっても、現場から社員が一人減ることは会社にとって多かれ少なかれダメージとなります。
「自分は全然役に立ててなかったし、むしろ足手まといだった」と思ったとして、仮にそれが事実だったとしても、退職者が出たこと自体は上司としては決してプラス評価になりません。
より上位の立場の者からしたら「きちんと管理できていなかった」「部下を育てられなかった」と、あなたの直属の上司に対してマイナス評価をする可能性が高いのです。
またアウトソーシングなどの場合は、実際に役に立っているか否かではなく稼働している従業員数によってダイレクトに売上が変動する契約になっていることもままあるため、やはり様々な観点から退職者の発生は会社としてマイナスになると考えられるでしょう。
そのマイナスを埋めるためには、後任が必要となります。そして後任を育てるためには、業務内容に応じたそれなりの引き継ぎ期間を確保しなければなりません。そういった準備をするためにも、できるだけ早い時期に退職の申し出を行う必要があります。
また退職理由によっては、申し出が遅れると矛盾が生まれる場合もあります。整合性の取れた行動をするように気をつけていきましょう。
まずは「相談」から
退職の申し出の際、最初から一方的に話すのは好ましくありません。「宣言」ではなく「相談」というニュアンスで切り出し、色々と悩んで答えを出したということと、なるべく会社に迷惑をかけないように終わらせたいという誠意が伝わるように心がけましょう。
建設的に話そう
要領を得なかったり、結局何が言いたいのか分からないような伝え方では、説得力が弱くなるだけでなく誤解を生む要因にもなりかねません。
現状をより良くしていこうという前向きな態度で、ロジカルに話していくことを意識してください。
結論から先に述べ、現状をふまえた上で退職理由を伝え、採用面接時のようにしっかりと自分の意思表示をしていきましょう。
安心感を与えること
自分自身の展望だけではなく、退職日まで責任をもって尽力することもきちんと伝えましょう。後任を育てて間違いなく引き継ぎを行うこと、退職日まで気を抜くことなく業務に従事することをはっきりと言うことで、上司は安心感を得ることができます。
実際問題、後任となった人のスキルレベルや適性によって、スケジュール通りに引き継ぎが進まないこともあると思います。それでも、自分が責任感をもってやるだけのことをやれば、印象が悪くなることはないはずです。
退職日までの言動
退職の話が上手く通ったからといって、そこで終わりではありません。退職理由と整合性の取れた言動を心がけることがその後を左右することにもなりますので、最後まで責任感を持ちましょう。
退職理由に沿った行動をする
遠方への引っ越しや家族の不幸などが理由の場合はまた話が変わってきますが、例えば「キャリアアップ」が理由なのであれば、最後まで一生懸命に働くことで一貫性が見られます。
「次を見ているので、もう今の会社はどうでもいい」という雰囲気をかもし出してしまっては、前向きに表明した退職理由の説得力が急低下してしまいます。そんな考え方の人が「キャリアアップ」を目指しているなんて、おかしいですからね。
そもそもモラルとして、退職日まで気を緩めずに働き切ることが社会人としてあるべき姿ではありますが、とはいえ気持ちの上で、「次」に心が移ってしまうと得てして「今」がおろそかになりがちです。どんな理由であろうと心がけるべきことではあるものの、少なくとも退職理由と整合性の取れた言動を意識していきましょう。
同僚などに、安易に「本音」を洩らさない
どんなに上手く理由をまとめて上司に伝えられたとしても、「実際のところ、●●がウザくてさ~」などと同僚や部下にポロッと毒の部分を出してしまうのは危険です!その「ポロッ」という言動は、伝えた相手も同じように行う可能性があるからです。
そうなると「人の口に戸は立てられぬ」というように噂は広まっていき、やがて上司の耳に入ることになるでしょう。こうなってしまっては、昇華した理由も、誠意を込めた申し出も、退職日を迎えるまでの意識的な行動も、すべて水の泡です。
もちろん、そもそもの退職理由が何も飾っていないものであれば差し支えありませんが、元々がネガティブであったものをポジティブに変換させたものであるならば、そのネガティブな部分を出してしまっては意味がありません。例え仲良しの同僚であっても、言葉をきちんと選んで話すようにしましょう。
これは単に「相手を疑え」ということではなく、「余計な誤解が生まれないように」という自分のリスクマネジメントの一つであると言えます。自分の在職中はもちろんのこと、退職後にもあることないことが噂として流れてしまわないよう留意することで、真の「円満退職」の成立が期待できます。
まとめ
以上が、退職理由をまとめるためのコツと、上司への伝え方やその後の言動の留意点となります。
どんなに前向きな理由であったとしても、退職の申し出はどこか後ろめたさや申し訳なさを伴うものです。それは責任感や愛社精神から来るものであったり、時には悲観的なものや面倒な気持ちから来るものであったりもするでしょう。
しかしどのような理由であろうとも、まとめ方や伝え方によって、円満に持っていくことができます。今の自分だけではなく今後のことも見据えた上でより良い行動を取り、できるだけ後腐れのない退職となるように進めていきましょう!
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