パワハラで退職を考えている人が準備することは?証拠集めが肝心?

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「ブラック企業」という言葉が世間一般で使われるようになり、パワハラ・セクハラが、これまでよりもさらに厳しい目で見られるようになりました。ハラスメントを取り締まることは簡単なことではありません。「この行為は違法だ」と言い切れる明確な規定がないからです。

個人同士の問題として扱われやすく、被害者本人が行動を起さない限り「本人はハラスメントを受けていると思っていない」と解釈され、問題視されにくいのです。「誰か助けてほしい」と思うほどのハラスメントを受けているなら、自ら意思表示をしなければなりません。

意思表示をせず、黙って退職してしまう人も少なくありません。黙って退職してしまうと、「自己都合による退職」として自分に不利益が生じます。このように「泣き寝入り」しないためには、どうしたらいいのでしょうか。

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パワハラの定義

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「○○さん、お茶入れて欲しいんだけど」と忙しい時間に上司からお茶を頼まれました。来客用ではなく、個人的に飲むお茶の依頼です。こういうものも、取り方によればパワハラになり得ます。

パワハラはこのように定義されています。

「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的、身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」

出典:職場のパワーハラスメントについて

これでは少し分かりづらいので、厚生労働省が作成したパワハラを細かく類型化したものを見てみましょう。

職場のパワーハラスメントの6類型

上記で定義されていた、職場のパワーハラスメントについての具体的な行動を6類型に分け、整理されたものです。

1)身体的な攻撃

暴行・傷害

2)精神的な攻撃

脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言

3)人間関係からの切り離し

隔離・仲間外し・無視

4)過大な要求

業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害

5)過小な要求

業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと

6)個の侵害

私的なことに過度に立ち入ること

出典:職場のパワーハラスメントについて

この6つの項目は、いずれも具体的な範囲が書かれていません。ハラスメントとは「嫌がらせ」のことですから、ハラスメントを受けた人が「嫌がらせだ」と精神的ダメージを感じていることが大前提になります。

パワハラの「パワー」は「権力」のことです

自分より弱い立場の相手が、自分に逆らえないことを知っていて行う「嫌がらせ」です。勝てる相撲しかとらない、卑怯なやり口ですが「指導」と言って誤魔化せてしまうことが大半です。下のリストの中の「人権を侵害している」「精神的・肉体的苦痛」「雇用の継続への不安」などは、いくら権力を持っている人間であっても、してはならない行動です。

  • 加害者・被害者の間に、社内などでの立場に“上下関係”がある
  • 適正な範囲を超えるものを要求するなど、職場の“上下関係”を行使している
  • ”権力の行使”が継続的で、被害者の人権を侵害している
  • 被害者は継続的に行われる加害行為によって精神的・肉体的苦痛を感じており、雇用の継続に不安を持っている

「俺に逆らったら、どうなるか分かっているのか?」などの圧力をかけるのもパワハラ言動です。有給休暇取得を申請しても取らせてもらえない、過剰な残業を強要される(残業代の未払い)、業務とは関係ない個人的要素を取り上げて責め立てる・・・などもパワハラに該当します。

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パワハラで退職は「自己都合」なの?

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上司からのパワハラを理由に会社を辞めたいと思っている方にお聞きします。

どのような辞め方をするか考えていますか?波風を立てず、ひっそりと去りますか?それとも、きっちりこれまでの落とし前をつけて辞めますか?

「自己都合」「会社都合」の違い

会社側に「自己都合による退職届」を出せば当然「個人的な都合による退職」と見なされます。この「自己都合」の退職をしてしまうと「会社都合」と比較する場合、2つの大きな不利益を被ることになります。

  1. 退職金が大幅に減額される
  2. 失業保険がもらえるまでに日数がかかる・給付日数が制限される(失業給付が少なくなる)

どちらも「お金」に関することです。「自己都合」の退職をすると、「会社都合」で退職を余儀なくされたときより受け取れる金額が少なくなるのです。職を奪われるような仕打ちを受けた上に、お金の面でも損をすることになるのです。

失業保険を受ける場合、「自己都合退職」では1回目の保険が給付されるまでに3ヶ月ほどの待機期間が設けられます。しかし「会社都合退職」の場合は「特定受給資格者」と見なされ、待機期間なしに給付してもらえます。「自分の意思ではない理由で退職を余儀なくされた人」の方を手厚くするということです。

会社都合で退職する場合と、自己都合で退職する場合では「離職票」に記入される内容が変わります。職業安定所は、離職票に記入された「離職理由」を元にして、受給資格を決定します。一度書かれた離職票を後から変更することは簡単なことではありません。「会社都合」と書いてもらうには会社に会社の都合で退職することを、認めてもらわなければなりません。しかし、離職票に「会社都合による退職」と書きたがる企業はほとんどありません。

「会社都合」はこんな場合にも適用される

最も身近な「会社都合」の退職は、派遣契約の契約が終了するときです。派遣契約の場合は、あらかじめ決められていた契約期間が満了し、それ以上の労働契約の更新がされないこと場合は「会社都合による退職」となります。自分がここでもっと働きたい、と契約更新を希望する意思表示をしたが、派遣先企業から契約更新がされなかった場合です。

反対に、期間満了時に派遣先企業から契約の更新の要望があったのに、それを断る(退職する)場合は個人的都合と判断され「自己都合退職」となります。ポイントは、契約の更新「をどちらが受け入れなかったか」で判断されるということになります。

パワハラの事実を認めさせれば「会社都合」に出来る

「会社の上司のパワハラのせいで、私はこの会社を辞めざるをえなくなりました。」このような内容退職届を、やすやすと受理する企業はほとんどないでしょう。「ブラック企業」という噂が流れれば当然企業イメージも悪くなりますし、退職金も自己都合退職より多く支払わなければなりません。

このような理由から、企業側は退職を申し出た社員に対して、手を変え品を変え、「自己都合退職」してもらおうと説得をするでしょう。会社側としては、「パワハラを受けた」と言われた時点で実はヒヤヒヤものなのです。(これには法的な根拠があるからなのですが、それについては後の項でお話します)

確固たる証拠がない限り、会社側はパワハラの事実を簡単には認めようとはしないのです。「会社都合」にするために、パワハラを認めるような証拠を普段から集めておきましょう。

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パワハラを会社に認めさせるには、証拠集め!

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パワハラの被害は、証拠なくしては証明することができません。

本人の主観だけでは十分な証拠にならないため、「パワハラの証拠」を揃えておく必要があります。

パワハラ被害の証拠を集める方法

もっとも効果的な証拠は、ボイスレコーダーの「音声記録」です。相手の暴言や、不適切な会話が録音されているものはとても強力な証拠になります。メモなどに記録する場合は、「いつ」「どこで」「誰に」「どのような行為」をされたかや、そのとき自分がどう感じたかも書いておきましょう。

メール・LINEなども証拠になりますので、発信者と日時、内容を印刷して証拠にしましょう。この他、同じ職場で「明らかにパワハラを受けているように見えた」という証言をしてくれる人を確保しましょう。また、パワハラによるストレスで体調を悪くした場合は専門の医療機関を受診して診断書をもらいましょう。公的書類として重要な証拠になります。

退職届には「パワハラによる会社都合」と書く

通常の自己都合の退職の場合、一身上の都合という理由を書くことが一般的ですが、パワハラを受けたと考えている場合は絶対に「一身上の都合」と書いてはいけません。臆することなく「パワハラによる退職である」ことを明記しましょう。

口頭でパワハラを受けていたこと、パワハラが原因で退職することを告げても、口頭では証拠が残りません。書面で残しておくと、退職金や職業安定所に提出する書類(離職票など)に記載される退職理由などのトラブルが起きたときに役に立ちます。

パワハラに対する抵抗「内容証明」に効果はある?

パワハラを受けたことを証明するために、内容証明郵便の文書を作成して職場へ訴える人がいます。このように内容証明郵便を職場に送ると、パワハラが存在したことを証明することができるのでしょうか。弁護士の回答はこのようになっています。

1.被害者と称する人物の一方的な発言ですから、証明にはならないはずですが、内容証明郵便の内容によっては、他の事情と相まってある程度どの状況を示すことになるかもしれません。

2.内容証明を送ったからといって,その内容がすべて正しいとは限らないので,パワハラがあったこと,の証明にはなりません。ただ,内容証明は,相手が受け取ったことを郵政会社が証明してくれますから,将来,訴訟になった際に,きちんと請求したけど,相手が支払わなかった,という証拠になるのです。

出典:パワハラに対する内容証明郵便による効果について

回答にもあるように、確実な証拠となるのは「加害者の発言」なのです。被害者が加害者の行動を集めておくことが重要になることがわかりますね。

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パワハラ加害者に対する「懲罰」はないの?

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自分をここまで痛めつけた加害者だけが、ノホホンと過ごしているのは腑に落ちない!損するのはパワハラ被害者だけなのでしょうか?法律で罰する方法はないのでしょうか?

証拠が揃えば「懲戒解雇」させられるかも?

「懲戒解雇」させるのはパワハラ加害者を雇い入れている会社です。被害者は会社にパワハラの事実と確固たる証拠を提出しなければなりません。会社には「職場環境配慮義務」(従業員の職場環境を良好に保つ義務)があります。

さらに、「使用者責任」(加害行為を行うような従業員の雇った側としての責任)がありますので、証拠を突きつけられて、それを無視することは出来ません。しかし「懲戒解雇」は簡単に実行できるものではなく、加害行為が違法性の高いものであり、その行為を止めるよう会社が再三指導しても改善されなかった場合に、初めて懲戒解雇を突きつけることが出来ます。

つまり、被害者の報告が一度だけでは実行できないのです。また、就業規則に「パワハラ行為を行ったとき」の懲戒処分が規定されていることも条件になります。

懲戒解雇だけではない!「退職勧奨」とは?

前項で書いたとおり「懲戒解雇」を行うには多くの条件がありました。条件が揃わず、解雇されなければ結局また同じことの繰り返しになってしまい、そのうちに被害者が音を上げてしまいます。こうなってしまったら、一体何のための「職場環境配慮義務」なのかわからなくなりますよね。

さまざまな理由から解雇することが出来ない場合には、加害者に対して「退職勧奨」を行うことができます。「退職勧奨」は「懲戒解雇」のように法的な“しばり”がありません。再発の可能性が高いと考えられる場合や、職場規律に悪影響が懸念される場合、加害者にあてがう適当なポジションがない場合などの条件が合えば、「退職勧奨」を行うことができます。

損害賠償や慰謝料はもらえる?

慰謝料請求は。パワハラを行った加害者本人と会社に対して行ないます。「パワハラは個人的な問題」と決め付けず、「会社の問題」として人事部や組合に報告しましょう。相談を何度繰り返しても全く改善されないようなら、加害者本人と会社を相手取った訴訟を起すことができます。

パワハラ加害者に対して被害者は、民法上で「損害賠償」や「慰謝料」を請求することができます。会社には「使用者責任」という雇い入れた従業員が業務中に第三者に損害を与えたときは、会社が賠償しなければならない民歩条の法律があります。これを追及することで「損害賠償請求」することが出来るのです。

会社側の責任は1つだけではなく、被害者からの報告でパワハラの存在を認識していたにもかかわらず、改善しようとしなかった場合は「債務不履行責任」が追及されます。「パワハラによる会社都合による退職」を企業が避けたがる理由はここにあると言えるでしょう。

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パワハラはどこに相談する?

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同僚など、身近な第三者の協力を得ることも必要ですが、プロの知恵も借りましょう。プロに話を聞いてもらうことで新しい解決策が見つかる可能性もあります。

「労働基準監督署」は、パワハラ相談窓口ではありません。

労働に関する問題を解決するための相談窓口として「労働基準監督署」を思い浮かべる人は多いでしょう。実は、労働基準監督署に訴えても、パワハラに関して動いてくれることは、ほぼありません。

なぜなら、労働基準法にはパワハラについての規定はないのです。「労働基準法」は、「労働者を使用者(会社)から守るため」に存在しています。パワハラに関しては、加害行為者も被害者も同じ「労働者」になるため、労働基準監督署が手出しすることは出来ないのです。

社内や外部の「相談窓口」を利用しよう!

自分が勤務している会社に、「パワハラ相談窓口」といった相談出来る部署がある場合、その窓口担当者に相談することもできます。しかし、実際にその窓口を利用するのに戸惑う人も多いのが現実です。なぜなら、相談したことがパワハラ上司になんらかの理由で知られてしまうことを恐れる人が多いからです。

このような心配をするなら、公的機関など外部の相談窓口を頼りましょう。外部の相談窓口として知られているのが、厚生労働省が開設している「こころの耳」というサイトです。職場のトラブルに関する相談だけではなく、メンタルケアやその他の藤堂相談に関することも電話やメールで対応してくれます。

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転職する時「パワハラ退職」はネックになる?

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好きで転職するわけではない!とい言いたい気持ちですが、転職先の企業には関係ありませんよね。「どうして前の会社を辞めようと思ったのですか」と聞かれたときはどのように答えるのがいいでしょうか?

事実を伝える必要はなし!前向きな理由を述べましょう!

パワハラが原因によって転職する時、1つ注意点があります。それは応募先企業の面接官に転職理由を聞かれたとき「パワハラで会社を辞めた」ことを正直に告げるのは避ける、ということです。面接時間は限られていますから、「本当にパワハラだったのか」など審議する時間はありません。

「パワハラで退職した」ことについて面接官が良い印象を持たない可能性の方が高いでしょう。採用してもすぐにまた「パワハラだ」と言って辞めるのではないか、ストレスに極端に弱い人なのではないかと思われてしまいます。退職理由の原因がパワハラであっても、別の「前向きな転職理由」を用意して、面接を受けることをおすすめします。

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まとめ

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せっかく就職した会社で、相性の悪い人に出会うと本当に苦痛です。まして、自分だけがその人からの攻撃対象になっていると確信したときは、「転職」を考えて当たり前です。もう少し頑張ってみる、という心構えは素晴らしいものですが、苦痛が度を超してしまうと心身にまで影響が及びます。

筆者の経験ですが、あからさまなパワハラを受けている同僚に「一緒に戦おう!」とスタッフ全員で協力を申し出たことがあります。しかし、被害者である同僚は「上司が怒るのは、私が悪いからだよ!」と言って、その申し出を受け入れませんでした。

その後しばらくして、同僚は会社に来なくなりました。「ベッドから出られない」というのです。心が会社に来ることを拒否するようになってしまったのです。ほどなくして同僚は家族を介して退職を申し出てきました。同じ班のスタッフで、パワハラ上司の行動を会社に報告しましたが「本人から直接報告を受けていないから、何も出来ない」と取り合ってもらえませんでした。

今回書いた記事にもあるように「本人がパワハラを受けていると意思表示すること」がキーになります。パワハラを受けていると感じている方は、勇気を出して会社の窓口などに報告を入れてください。心と体が悲鳴を上げる前に、早めに誰かに相談してください。

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