上司や取引先とのやり取りで必要となる敬語・謙譲語表現スキル。汎用性の高い話言葉の中に「大丈夫です」「問題ないです」などの言葉があります。しかしこれらは目上の人に対して使用する言葉としては適切ではありません。そのほかにもシーンによっては「結構です」や「構いません」などとも表現できますが、どう言い換えるのがベストなのでしょうか?
今日は普段何気なく使用している「大丈夫です」「問題ない」という言葉のビジネスシーンで使える敬語表現について紹介しいていきます。
「大丈夫です」が敬語として間違いな理由
「大丈夫です」という言葉は一般的な会話の中で「問題ありません」「必要ありません」「いいです」という意味で使われます。いろんな状態をそれだけで済ませられる汎用性の高い言葉ですよね。
しかしこの言葉は敬語として適切ではありません。その理由についてまず紹介します。
「大丈夫」は正しい日本語ではない
普段使用されている汎用性の高い「大丈夫」で意味が通じないわけではありませんが、ビジネスシーンでは使用を控えた方がいいでしょう。
なぜなら「大丈夫」には複数の意味が含まれるため、いかにニュアンスや話の流れで通じる場合だとしても聞き間違いが発生することもあります。
また「大丈夫」という返答は曖昧な返事と感じられてしまうことも多く、そのはっきりしない返答に不快感を感じる方もいます。特に目上の人に使用するのは避けた方がいいでしょう。
あまり近しくない上司や会議の場や取引先とのビジネスに関する会話の中では、「大丈夫です」を使用するのではなく、そのシーンに適しているはっきりとした意味の言葉の敬語表現を使用することがベストです。
「大丈夫です」以外のNG表現
「大丈夫」と同じようにNGとなる敬語表現の言葉を洗い出しておきます。いずれの言葉も普段よく使用し、口馴染みの深い言葉なので咄嗟の返答で使用してしまわないよう注意しましょう!
「OKです!」
「問題ありません」
「構いません」
「結構です」
「了解です!」
「了解しました!」
これらの敬語を使用してしまっていませんか?これらは全てビジネス敬語としてはNGとなる言葉です。「了解です」はわかるが「了解しました」はどうしてNG!?と思っている方は謙譲語についての認識が必要です。
基本的にビジネス敬語で使用される言葉は”謙譲語”です。上記の言葉は全て「です・ます」調ですので、いずれも丁寧語となります。一般敬語であることに間違いはないのですが謙譲語ではないためビジネス敬語としてはNGなのです。
特に「了解」という言葉は目上の人が目下の人に対して使用する言葉です。ですのでその言葉に「です・ます」をつけたところで上下関係に準じた言葉遣いになるわけではないのです。
ビジネス敬語に重要な「上下関係意識」
日本語敬語の中の謙譲語は上下関係をはっきりさせる言葉です。
自分が相手よりも立場的に下ということが明らかである場合、相手を持ち上げた言葉遣いもしくは自分がへりくだる言葉遣いをビジネスシーンではしなければいけません。
ですので「了解」「大丈夫」「OK」などの言葉のチョイスでは対等という印象が言葉遣いの中に感じられるためビジネスシーンではNGなのです。
正しいビジネス敬語、ないしは謙譲語を身につける上ではそのことを意識して理解を深めていきましょう。
「大丈夫です」を正しいビジネス敬語に変換
では早速「大丈夫です」や上記で紹介したNG敬語を全て正しいビジネス敬語に置き換えていきましょう!
使用例や解説を交えながら、わかりやすく紹介しますので参考にしてください。
「支障ございません」
「構いません」という意味で「大丈夫」を使用する場合におすすめの言い換え。
上司や取引先に「スケジュールはこれで大丈夫か(大丈夫でしょうか)?」と尋ねられた場合に「大丈夫です」言いたい場合に使用できる言葉です。
「ご提示いただいたスケジュールでこちらは支障ございません。ご配慮いただきありがとうございます。」などと使用するといいでしょう。
そのほかにも同じ意味の言葉として
「差し支えございません」という風な表現方法もあります。それ単体で使用する場合は「そちらで差し支えございません」を使用する方がスマートでしょう。
「問題ございません」
上記でNGとした「問題ありません」を丁寧にした表現です。
資料やプロジェクトの進行になどに不備がないかを尋ねられた時に「今の所問題ございません。全て当初の計画通り順調に進行しております」などと使用できます。
敬語表現で「〜ありません」「〜です」の形になる言葉は全て「〜ございません」「〜でございます」という形に変換すれば謙譲語表現となります。
「承知致しました」
上司などに「明日までにこの仕事を片付けておいてくれる」と指示された場合に「承知致しました」と使用できる言葉です。
「承知」は承る(うけたまわ)という言葉が含まれているので、すでに謙譲語表現の言葉です。ですので「承知しました」という表現でも自分を下げる言葉として謙譲語表現が成立しています。
「承知しました」をさらに丁寧にする場合に「承知致しました」と自分を下げつつ相手も持ち上げてへりくだる表現をするとよりかしこまった表現となります。
ほかにも「かしこまりました」とシンプルに表現することもできます。
シーンに応じて使い分けて行きましょう。
「ご遠慮させていただきます」
上司や取引先の方との飲みのお誘いや休日のお誘いを受けた場合に「大丈夫です」と断りたい場合に使用できる言葉です。
「今日はあいにく家族との先約がありご一緒することができません。お誘いいただいているところ大変恐縮ですが、今回はご遠慮させていただきます。次の機会はぜひご一緒させてください!」
ちょっと長文になりましたが、文章中に「ご遠慮させていただきます」「ご遠慮させてください」を自然な形で含めると相手に不快感なく誘いを断ることができます。
紛らわしい「了承しました」に注意
稀に「了承しました」「了承致しました」と「了承」をさも謙譲語のように使用している光景を見かけますが、これは間違いです。
「了承」も目上の人が目下の人に対して使用するのが適切な言葉となります。ですので謙譲語として使用するのは間違いです。注意しましょう!
ビジネス敬語表現まとめ
上記で紹介したビジネス敬語表現をここにまとめておきます。
「支障ございません」
「差し支えございません」
「問題ございません」
「承知致しました」
「かしこまりました」
「ご遠慮させていただきます」
※「了承しました」は謙譲語ではないので注意!
まとめ
ビジネス敬語、謙譲語について色々と紹介しましたが謙譲語を使用することが正解ではありません。正しい言葉遣いを学ぶためには必要なスキルですが、相手とのコミュニケーションを第一に考える場合必ずしも必須なスキルではないこともあります。
実際西洋風の考え方が輸入されている昨今、謙譲語はビジネス社会の中でもなくなりつつあります。敬語禁止の会社があるくらいですからね。そういった場合は「大丈夫です」などの言葉を使用してもいいでしょう。しかし、ただ「大丈夫です」というのではなく「大丈夫です。明日までに片付けておきます!」と後ろに付け加えるだけでだいぶん印象が柔らかく好印象になります。一般的な会社でも浸しい上司や先輩の前ではこのような言葉のチョイスをした方が可愛がられるでしょう。
うまく敬語と謙譲語を使いこなして、ビジネスシーンでのコミュニケーションを円滑にして行きましょう!
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