会社を辞めようと決意したとき、どのような手続きを取ればいいのか、悩む人も多いでしょう。テレビドラマなどでは、よく「部長、お話が…」などど言って、上司にそっと封筒を差し出す場面が出てきます。
もう少し詳しく知りたい!という人のために、退職に必要な手続きをまとめました。
退職に必要な流れ
ドラマなどでよく出てくる「退職願」と書かれた白い封筒ですが、まずは表書きの種類について知っておきましょう。
退職届・退職願・辞表の違い
・退職願…文字通り退職を願い出る書類です。○日に退職させてください。という意思を表示したもので、これが受理されただけでは退職扱いになりません。あくまで「願い」なので、本人が後から取り下げることもできます。
・退職届…○日に退職します。という決定事項を届け出る書類で会社側に受理されると退職が決定となります。受理後は、特別な理由がない限り、取り消すことができません。
・辞表…役員以上の管理職または公務員が辞めるときに提出するもので、一般のサラリーマンは使いません。
退職届を出すタイミング
実は、退職にあたって書類の提出は義務ではありません。したがって、書式も基本的には自由です。しかし、ほとんどの会社では、後のトラブルを避けるために従業員の退職の意向はなんらかの書面に残しておく方法がとられています。
実際に退職届を提出する前には、上司に口頭で意思表示をしておくほうがよいでしょう。なんの相談もなしに退職願を出しても、「どういうことだ?」と結局面談することになるでしょうし、退職をくつがえせない退職届をいきなり提出するのも少々乱暴な印象です。書類を作成するのは、それなりに手間も時間もかかりますので、確実に受け取ってもらえるよう、事前の根回しは必須です。
法律上では、退職の意思を伝えてから14日経つといつでも退職ができますが、会社の就業規則に「1ヶ月前に申し出ること」というような記載があることもあります。この場合は、就業規則に書かれている手続きを基本的に優先しましょう。残務整理や引き継ぎなども考慮すると退職の1~2か月前には、上司に口頭で意思表示をしておくのが円満な退職につながります。退職日は会社の給与締日や、残りの有給休暇の日数などで調整がある可能性もあるので、退職届を作成するのは、退職日が正式に決まってからのほうがよいでしょう。
なお、契約社員など雇用期間に定めがある雇用形態の場合はこの限りではありませんので、契約期間満了前に退職したい場合は、雇用契約書を確認の上、上司との相談が必要になります。
退職届を受理されなかったら?
退職届は受理された時点で、会社側に退職を引きとめることはできません。しかし、中にはあれこれと理由をつけて退職届を受け取らず、従業員の退職を引き延ばそうとする会社もあります。
できるだけ話し合いのもとに穏便に解決したいところですが、どうしても会社が退職を認めてくれない場合は、最終手段として、「内容証明郵便」という手があります。
内容証明郵便とは、郵便書留の一種で、郵便局が書類を送った日付と受理した日付を証明しますので、会社側が「受け取っていない」と言うことはできなくなります。
退職届の書き方
退職までの一連の流れを確認したところで、いよいよ実際の退職届の書き方を紹介します。
書式を確認しよう
退職届には、決まった書式はありません。しかし、封筒に入れることを考えてA4またはB5サイズの紙か、縦書きの便せんが望ましいです。手書きでもPCで作成しても構いませんが、手書きのほうがやや改まった印象になります。PC入力で作成した場合でも、最後の署名と捺印は自筆で書きましょう。
また、会社によっては、人事部で定型フォーマットを持っていることもあります。この場合、せっかく自作の退職届を提出しても、会社指定の書類でもう一度提出するよう言われることもあるので、書式は事前に確認しておくことをおすすめします。
退職届の文例とマナー
退職届
私事、このたび、一身上の都合により、来たる○年○月○日をもって、退職いたします。
○年○月○日
△△部□□課
氏名 (印)
株式会社×××××
代表取締約社長 ○○○○○ 殿
ここでは横書きで書きましたが、便せんに縦書きの書式が一般的です。便せんは白無地(罫線ありも可)を選びましょう。
◆注意事項
- 文章は用紙にバランスよくおさまるよう、適度に改行をいれます。
- 私事(または私儀)…謙譲の意味をこめて、行の末尾に下げて書きます。
- 日付…和暦か西暦で表記を統一しましょう。縦書きの場合は和暦が一般的です。退職届の提出日と実際の退職日の違いに注意しましょう。
- 退職理由…上司が嫌い、給料が安い、など思うところがいろいろあっても、書類上は「一身上の都合」とのみ書きましょう。
- 署名欄と印鑑…PCで作成した場合でも、この部分は自筆で書きます。印鑑は認印でかまいません。シャチハタはふさわしくありません。
- 会社の代表者名…代表者の名前が自分の署名より上にくるよう配置を考えます。
なお、書類上は会社の代表者宛になりますが、実際に提出するのは会社の直属の上司に手渡すのがマナーです。机の上に黙って置いていくのはやめましょう。
封筒の選び方
退職届は封筒に三つ折りにして入れるのが基本です。文字の書いた面を内側にして折り、退職届の用紙右上が、三つ折りにして入れたとき、封筒の右上に来るよう折りたたみます。
サイズ
退職届を書いた用紙サイズによって、封筒のサイズも変わります。
- B5サイズ、色紙判便せん…長形4号(90×205ミリ)
- A4サイズ…長形3号(120×235ミリ)
用紙と封筒は内ポケットに入れる可能性なども考慮すると、小さめのB5サイズと長形4号の組み合わせがおすすめです。
封筒の種類
退職届は、履歴書と同じく改まった書類です。これを入れる封筒は、中身が透けて見えない白無地の二重封筒がいいでしょう。郵便番号を書く四角い赤枠がないものが選びます。
茶色のクラフト封筒は、本来、領収書や小銭を整理するような事務用品という扱いなので、退職届のような書類を入れるのには適していません。
表書きの仕方
封筒の表側には中央に「退職届」、封筒の裏側には、左下に自分の所属と氏名をフルネームで書きます。黒のボールペンか万年筆で書くのが無難です。目立たないように渡すものなので、太文字のサインペンを使用したり、デカデカと文字を大きく書いたりするのはおすすめしません。
退職届、封筒どちらも、修正ペンなどの使用はさけたほうがよいでしょう。間違えた場合は潔く再作成してください。
糊付け
封筒に糊づけ用のシールがついている場合は、糊づけしたほうが見栄えがよくなります。封をした場合は、ビジネスマナーとして、「〆」マークをつけましょう。
糊がついていない封筒の場合は、封筒のフタ部分を折り曲げておくだけでもかまいません。
退職届の渡し方
いよいよ、退職届を渡すときがきました。気まずい雰囲気にならないよう、スムースに提出しましょう。
提出するまではクリアファイルに入れておく
退職届は改まった書類ですから、折り目やシワなどが入らないようにします。
カバンや引き出しの中ではクリアファイルに入れて保管しましょう。中身が見えないクリアファイルなら、上司のもとへ手渡す瞬間まで封筒をきれいに保つことができます。スーツの内ポケットにしのばせて、上司に手渡すのもいいでしょう。
提出のタイミングは目立たないように
会社側にとっても、退職者が出るということはあまり周囲に目立たせたくないはずです。退職届は上司に手渡すのが基本ですが、人が大勢いるところで渡すのはやめましょう。
事前に口頭で退職の相談ができていれば、それらしい書類を持っているだけで上司も察してくれます。
やむをえず郵送する場合
手渡しが基本の退職届ですが、遠方にいたり、病気療養中などでやむを得ず郵送するケースもあります。その場合は、退職届を書いた封筒をさらに一回り大きい封筒に入れ、添え状をつけて郵送します。
宛先は、直属上司宛、人事部担当者宛など会社のシステムによって変わりますので、事前に確認しましょう。直属上司宛に郵送する場合は、「本人以外開封しないで」の意味を込めて赤字で「親展」と書きます。
受け取り拒否を防ぐためにも「退職届在中」とは書かないようにしましょう。普通郵便では、届いたかどうかの確認ができないので、できるだけ窓口で配達証明で送るほうがよいでしょう。郵便局の窓口から送ると、料金不足などの確認もできます。
添え状の文例を記します。
「拝啓 貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
このたび一身上の都合により退職させて頂くこととなりました。つきましては、同封の通り、退職届を提出させて頂きます。ご査収のほどよろしくお願い申し上げます。
短い間ではございましたが(長い間)、大変お世話になりました。
末筆ながら 貴社のご健勝をお祈り申し上げます。
敬具」
まとめ
「立つ鳥跡を濁さず」ということわざにもあるように、退職するからといって、これまで所属した会社に失礼なことはしたくないものです。転職した先の会社で、以前働いていた会社の人といっしょに仕事をする可能性もあります。
退職する意思の伝え方、退職届の書き方、提出するタイミングなど、社会人としてのマナーをもって、円満に退職したいですよね。
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