給料の話が出た時に、「手取りで」とか「総支給で」といった表現をすることがあります。また、求人情報に載っていた給料が、すべて丸ごと口座に振り込まれるわけではありません。
「あんなに働いたのに、これだけ??」と落胆する人もいるでしょう。
ここでは、そもそもの「給与額」と「手取り」の違いをまず理解した上で、その手取りの計算方法について学んでいきましょう。
「手取り」とは?
給料を振り込まれた経験のある人なら当然ご存知だと思いますが、会社からもらう給料は、総支給額からそれに応じて控除された金額となります。
昔は手渡しもよくありましたが、現代では基本的に本人口座への銀行振り込みが一般的となっています。この実際の振り込み額が「手取り」ということになります。
手取り=実際に手元に入る給料
会社から支給される給料の総額を「額面給与」(総支給額)と言います。この支給額には基本給の他、残業代や役職手当なども含まれています。
この額から、所得税や住民税などの「税金」、厚生年金や健康保険料などの「社会保険料」が控除として差し引かれた金額が「手取り」、つまり実際に手元に入る給料ということになります。
支給と控除
では、手取り金額とはどのようにして計算されるものなのでしょうか。まずは「支給」と「控除」をそれぞれ、具体的に見ていきましょう。
【支給】
支給とは、会社からもらえる額面上の給与のことです。大きくは、固定されている基本給と、毎月変動する残業代を合算したものになります。そこに、各種手当がプラスされます。
■基本給
固定されている基本的な賃金のことです。月給制の場合はその月給、時給制の場合は「時給×労働時間×労働日数」が基本給という考え方となります。なお、出来高によって変動する「歩合給」は除きます。
■時間外労働手当
いわゆる残業代のことです。所定の計算方法によって加算された額を指します。深夜残業や休日出勤などは除き、それらは次項の手当扱いとなります。
■超過勤務手当
残業代のうち、深夜残業や休日出勤にあたるものです。時間外労働手当よりもさらに割り増しされます。
■資格手当
業務において必要な資格を持っていると支給される手当です。会社や雇用形態によっては、取り入れていないところもあります。
■住宅手当
住宅補助制度を採用している会社の場合にもらえる手当です。家賃補助などとも言われており、住宅費の補助として支給されます。
■通勤手当
いわゆる交通費のことです。雇用形態によって、全額支給、限度額まで支給、そもそも支給されない会社があります。なお、非課税となっています。
■出張手当
出張があった場合にもらえる手当のことで、こちらも非課税となっています。
■役職手当
管理・監督の責務がある役職、あるいはこれに準ずる職務の者に対して支給される賃金のことを指します。 具体的には、部長手当、課長手当、主任手当などがあります。
■その他の手当
他にも、良好な勤怠を評価して一時的に支給される「皆勤手当」、実績評価によるインセンティブ(奨励金)などを取り入れている会社もあります。
【控除】
額面上の総支給額から自動的に引かれる(天引き)金額のことを「控除」と言います。厚生年金や健康保険料などの社会保険、所得税、住民税などがこれにあたります。なお、社会保険料や住民税は所定の基準によって年に1度決められたら1年間は額が変わることがありませんが、所得税は月ごとの支給額によって変動するため、インセンティブや残業などにより支給額が多くなった月は、差し引かれる所得税も多くなる仕組みとなっています。
■健康保険
怪我や病気で病院にかかった際、医療費が実際には3割負担となる医療保険のことです。パートや自営業の人は国民健康保険組合に加入していることが多いですが、企業の勤め人の場合は通常、会社独自の健康保険組合による組合保険、中小企業の場合は社会保険事務所による社会保険に加入します。その他、船員保険などもあります。
保険料は会社と半額ずつ負担し、どのような保険組合かによって保険料率は異なります。
■介護保険
介護が必要になった際に、1~2割の負担でサービスを受けられるようにするための保険です。40歳以上になると加入義務が発生し、健康保険料と一緒に納めることになります。
■厚生年金
将来、年金をもらうために払う掛け金のことです。会社と半額ずつ負担となっています。
■雇用保険
失業した際に、失業給付などを受けるための保険です。事業によって保険料率は異なります。
■所得税
給料から、非課税の各種手当を除いた部分にかかる税金です。年収が高いほど税率も高くなる累進課税方式となっており一旦は必ず天引きされますが、「年末調整」や「確定申告」により、正確な税額が改めて算出されて後日精算されます。
■住民税
住民票に登録している都道府県・市区町村に収める税金です。前年の年収によって額が毎年見直され、翌年の6月から12ヶ月分を均等に割って支払っていく仕組みとなっています。
一般的に、正社員やそれに準ずる契約社員に組み込まれており、アルバイトやパート、自営業の人は自分で直接払い込みます。
■その他の控除
会社を通じて団体保険に加入している場合はその保険料、社宅に住んでいる場合はその賃料、退職金のための積立金などが控除される会社もあります。
給与明細で確認
給与明細を見ることで、手取りの金額は確認できます。
明細の項目名は会社によって異なりますが、一般的に「総支給額」から「総控除額」や「合計控除額」といったものを引いた「差引支給額」が、手取りということになります。
雇用形態によって各項目の金額が違っていたり、特定の項目がブランクになっていたりしますが、一定の労働日数および労働時間を超える契約形態の労働者には、健康保険や厚生年金の加入が義務付けられています。
手取り金額の目安
手取りはおおよそ、額面上の総支給額から20%強を引いた額、つまり75~80%程度となります。よって、概算で手取り金額を取り急ぎ知りたい場合は、月の給料の80%を算出すれば良いということになります。
割合の幅
しかしながら、仮に全く同じ額面給与であったとしても、人によって手取りが異なってくる可能性があります。なぜならば、結婚して扶養家族(※)がいる場合、扶養家族の人数に差がある場合、前年の年収に差がある場合など、控除される金額は様々な要素により変動するためです。
※無収入の専業主婦、子供など、収入を得ている人に養われている人たちのことを「扶養家族」と言います。扶養家族がいる場合(申請している場合)、「配偶者控除」や「扶養控除」といった制度により、所得税や住民税で優遇されます。
正確に算出したい場合は?
手取り額の計算自体は、支給額や各項目の控除額が分かっていれば比較的簡単にできます。
実際には先述の通り給与明細を確認することで一目瞭然なのですが、考え方だけは押さえておきましょう。
まず「総支給額」は「基本給+各種手当」となります。基本給は月給制や年俸制の場合は毎月の固定額、時給制の場合は「時給×所定労働時間」で算出することなりますので、昇給などがない限りは変動しません。
そこに規定の計算式によって出す残業代や通勤手当などの各種手当を加算しますが、残業代や休日出勤手当などについては毎月変動することになりますので、都度の計算が必要です。
控除額については、1度決まれば1年間変わらない社会保険料や住民税は実質「固定」となります。社会保険料率は会社(組合)によって異なるため、それに則ります。そこに、事業により異なる雇用保険や、当該月の支給額によって毎月変動する所得税を加算し、それらを総支給額から減算します。
これにより、実際の手取り額が算出できます。
ボーナス(賞与)の場合
ここまではあくまでも月々の給料について見てきましたが、次にボーナス(賞与)についても確認していきましょう。
概算としては、額面の75~85%が手取り額となります。
ボーナスの場合、所得税の計算は「前月の給与」がベースとなります。前月の給与から課税対象となる社会保険料を差し引いた金額に対し、所得税率をかけて算出します。この際の所得税率は毎月の給与の時よりもやや高めに設定されていますが、これについても年末調整または確定申告によって精算され、払い過ぎた分は戻ってきますので安心してください。
なお、住民税はボーナスからは引かれません。
「収入」として申告するのは、総額?手取り?
転職時に応募先の会社から前職の年収を聞かれたり、クレジットカードなどを申し込む際に年収を記入する欄があります。
このような場合、総支給額を回答するのでしょうか。それとも、実際の手取り額を回答するのでしょうか。
通常は、額面上の「総支給額」
基本的な考え方は、手取りではなく額面上の総支給額を基に年収を回答しましょう。よって、基本給だけではなく残業代やボーナスも含めた総額ということになります。ただし、交通費は「収入」とは異なりますので、除外します。
なお、別途「手取りで」といった文言がある場合には、それに従って回答することになります。逆に、そうでない限りはきちんと総額を回答しないと大きな差異が出ることになり、特にクレジットカードなどの申し込み時においては審査に影響が出る可能性がありますので、気をつけましょう。
求人広告などに記載されている給料も同様
こちらから回答する場合と同様に、会社側が提示する月給や年収なども基本的に総支給額となっています。(別途、「手取り○○万」と補記されている場合もあります)
よって手元に入ってくる額とは異なりますので、あらかじめ確認しておきたい人はきちんと手取り額も概算で出しておくようにしましょう。
まとめ
以上が、給料の考え方と手取りの計算方法となります。支給額を手取りと勘違いしていて、給料日に口座を確認したら予想よりだいぶ少なかった、支給額を基準にクレジットカードで買い物をしてしまっていた…といった不測の事態が起きることのないよう、注意してください。
何より大事なことは、単純に額が多い・少ないではなく「自分の収入をきちんと把握する」ということですので、しっかりと経済管理をして生活していくようにしましょう!
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