あなたは「存じます」という言葉を使うことがありますか?「言葉自体は知っているけど使わない」とか、「多少仕事では使うこともあるけど…」という方、いるかもしれませんね。その言葉自体を知らない人は少ないと思いますが、実は「存じます」とは、あまり多くの人には使われていない言葉なのです。
でも、だからこそ「存じます」という言葉をうまく使えると、周りが一目置くようなオトナに見えちゃうんです!大事な仕事の場面や、かしこまった場面でも使える「存じます」。
今回は、そんな「存じます」をうまく使いこなせるように、意味や正しい使い方についてご紹介していきます。
今さら聞けない敬語の種類と使い方
突然ですが、あなたは人や状況によって、正しい言葉遣いができていますか?
「存じます」についてご紹介する前に、相手に敬意を示すために用いる3つの言葉遣い「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」について再確認しておきましょう。
尊敬語
・相手を高めることで、敬意を表する言葉遣い。
・尊敬語1「お~になる」「ご~になる」→「お越しになる。」「お話になる。」など。
・尊敬語2 言葉の形そのものが変わる言い方。
→「いらっしゃる。」「おいでになる。」(来る、または居るの尊敬語独自の使い方。)
→「ご覧になる。」(見る、の尊敬語としての使い方。)など。
・尊敬語3「れる」「られる」敬意を示している人を主語にしたときに、動詞の後につけることで尊敬語とする話し方。
→「ご飲食なさる。」「歌われる。」など。
謙譲語
・自分を下げる、へりくだることで、相手を高めて敬意を表する言葉遣い。
・謙譲語1「お~する」「ご~する」→「お暇する。」「お邪魔する。」など。
・謙譲語2 言葉の形そのものが変わる言い方。
→「伺う。」「拝聴する。」「承る。」(聞く、という意味で使う謙譲語。)
→「拝見する。」(見る、という意味で使う謙譲語。)」など。
丁寧語
・自分の気持ちを、丁寧な言葉で話すことによって、相手への敬意を表す言葉遣い。
・丁寧語1「~です。」または「~ます。」「~ございます。」を語尾に付ける。
→「きれいです。」や「行きます。」「そうでございます。」など。
尊敬語や謙譲語に比べて仰々しさがなく、使い方も簡単なので、多くの人が日常で使っている言葉遣いだと思います。
「存じます」の意味と使用例。
多くの人があまり使わないという、「存じます」という敬語。「何となくニュアンスは分かるんだけど、自信をもって使えない」という人のために、こちらで「存じます」の正しい意味や、使用例はどのようなものかご紹介していきます。
「思う」の謙譲語
「思う」の謙譲語としての「存じる」を、丁寧語を使ってあらわしたものです。「(私は)思います」という意味で使います。
相手に敬意を示しながら、自分が物事をこのように「思っている」というのを伝える言葉遣いです。
使用例としては、
- この件に関しましては、私もそのように存じております。
- 私が用意しようと存じますが、よろしいでしょうか。
などですね。それぞれ、「この件に関しては、私もそのように思っています。」「私が用意しようと思っていますが、よろしいですか。」という意味になります。
単純に言ってしまえば、敬語を使うべき相手に、自分の意見を伝えるときに使える言葉遣いなのです。
また、この「思う」の意味として使える「存じます」は、同じく「思う」の謙譲語である「所存」を丁寧語にしている「所存です」「所存でございます」と置き換えることができます。ただ、少し前後の文章の形を変える必要があります。
先ほどの使用例を「所存」に置き換えると、
- この件に関しましては、私もそのような所存でございます。
- 私が用意する所存ですが、よろしいでしょうか。
となります。意味は変わりません。
「知る」の謙譲語
「知る」の謙譲語としての「存じる」を、丁寧語を使ってあらわしたものです。
「(私は)知っています」という意味で使います。
相手に敬意を示しながら、自分がそのことについて「知っている」ということを伝える言葉遣いです。
使用例としては、
- 私は存じません。/私は存じています。
- ご存じのように〇〇です。
などです。それぞれ、「私は知りません。/私は知っています。」「知っての通り、〇〇です。」という意味になります。
こちらも、本来の意味の通りに使って構いません。敬語を使うべき相手に、知っているか知っていないかを伝えるときに使えばいいのです。
こちらの、「知る」の謙譲語として使う「存じます」は、「所存」とは置き換えられません。
「存じます」を使うときの注意点
「なんだ!思う、知るを敬語で使いたいときに使えばいいのか!」というのが分かったところで、「存じます」を使う上での注意事項もご紹介していきたいと思います。
なかなか人が使わない「存じます」という言葉だからこそ、正しくマスターするために注意点をしっかり把握しておきましょう。
意味が重複しないように注意
説明したように、「存じます」というのは思っている、知っているという意味を持っています。ですがそれを忘れて、何となくの語感で使ってしまうと失敗しがちなのが意味の重複なのです。
たとえば
- 私はそのように思って存じます。
- このことを知って存じます。
などといった言葉遣いですよね。「存じます」をなんとなく「です・ます」のような感覚で使ってしまって、意味が重複してしまっています。
これでは「私はそのように思って思います。」「このことを知って知っています。」と重複して意味の分からない文章になるか、「私はそのように思って知っています。」「このことを知って思っています。」という、本当に支離滅裂な文章になってしまいます。
使う場面は選ぶこと
「存じます」がなかなか使われないことの理由の一つとして、「なんだか堅苦しい」「武士みたい」と感じる人がいるからだといいます。
使いこなしていると、一目置かれることもある「存じます」という言葉ですが、確かに「思います」「知っています」よりも、かなり堅苦しく感じますよね。
そのため、使う場面や人は選んでうまく使うべきでしょう。いつも敬語を使っているからと言って、たとえば同じ会社の先輩に使ったり、親戚に使うのは、「行き過ぎた敬語」となってしまう可能性が高いのです。
行き過ぎた敬語は相手の居心地をかえって悪くしたり、委縮させてしまう可能性もあります。使うべき場と相手の見極めが大切です。
こんな言葉遣いは恥ずかしい!「バイト敬語」
一時期話題になりましたが、よくアルバイトの学生たちが接客の際に使っている、日本語としては間違っている不思議な敬語のことを「バイト敬語」と言います。
あなたもうっかり使ってしまっているなんてことありませんか?
いくら「存じます」がうまく使えていても、バイト敬語を使っていては台無しですから注意しましょう。ここではいくつかあるバイト敬語の中で、よく使われている3つの使用例をご紹介していきます。
なぜか未来形?「~になります」
よく飲食店で聞くことがありませんか?「こちらご注文の〇〇になります」という一言。
これは完全な間違いですよね。「〇〇になります」って…じゃああなたが今持ってきたこれは、今は何なんだ?〇〇じゃないのか?と思わず追及したくなる不自然さです。
意味は分かりますが、不自然さはやはり拭えません。
それに、学生アルバイトがそんな言葉遣いをしているならまだ許せますが、いい大人がそんな話し方をしていたら、まともな言葉遣いができない人とみなされ、多少信用度は落ちますね。
正しくはもちろん、「こちらご注文の〇〇でございます」「こちらご注文の〇〇です」など。
謙譲語を誤用!「~いたしますか?」
これは学生アルバイトに限らず、もしかしたら結構多くの人が間違って使っているのではないか、と思われるバイト敬語です。
これも飲食店を例に挙げるとすると、「ご注文は何にいたしますか?」というような使い方のことを指します。
「いたす・いたします」というのは本来謙譲語です。ですから、「お客様、ご注文はなににしますか?」という意味の文章において、主語が相手(お客様)である限り、使うのはおかしいですよね。相手のことをへりくだった言い方にしているので、大変失礼に当たります。
「え?間違ってないんじゃない?」と思ってしまった人は要注意です。あなたも間違って使っている可能性があります。
「ご注文は何になさいますか?」が正解です。
意味のない言葉「~のほう」
バイト敬語でやたらと付け加えられているのが、「~のほう」という言葉。
本来「~のほう」をつけることで、そのものの範囲などをあいまいにする効果がある言葉ですが、バイト敬語においては、「これをつけるとなんだか丁寧に聞こえる」というくらいの意味で使われていると思います。
「こちらのほうでよろしいですか?」や、「お皿のほうお下げしてよろしいですか」など、あなたもよく耳にするのではないでしょうか。
しかし、「こちら」も「お水」も、別に「ほう」をつけて、あいまいにする必要はこの場合全くありませんよね。
「こちらでよろしいですか?」、「お皿をお下げしてよろしいですか」というのが適当でしょう。
まとめ
言葉遣いは人間関係を円滑にするツールです。当たり前のことですが、うまく使いこなすことができれば、あなたは周囲の人にいい印象を与えることができますし、意味も正しく伝わります。
反対にうまく使いこなすことができなかったり、間違って使ってしまった場合は、そもそも意味が正しく伝わりませんし、周囲の人から「常識のない人」と悪い印象を与えてしまいます。
あなたの言うことが、どんなに重要で素晴らしいものであったとしても、人に悪い印象を与えてしまったり、正しく伝わらないのでは意味がありません。
「存じます」だけに限らず、伝える人と状況に合わせた言葉遣いができるように、日ごろから意識する必要がありますね。
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