「ありがたい」は敬語じゃない!正しい言葉遣いとマナーを紹介!

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お世話になった人へ、感謝の気持ちを伝える言葉で最も多く使われるのは「ありがとう」です。最近よく耳にするのが「ありがたいです」というお礼の言葉です。感謝の意であることは間違いありませんが、きちんとした「ありがとうございます」とはちょっとニュアンスが違う気がしませんか?

実はこの「ありがたいです」は、間違った言葉です。イメージで例えるならば、「サザエさん」に登場するタラちゃんの「タマと遊んでくるです」とか「ごめんなさいです」とよく似た言い回しです。そんなタラちゃん用語をビジネスシーンで使っているとしたら・・・ゾッとしますよね。今日は「ありがたい」という言葉について迫ります!

「ありがたい」ってどんな言葉?

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「ありがたい」という日本語は、「めったにない・貴重である」ことを表す「有り難い」から由来した言葉です。現代ではその形を変えて「感謝していること」の意味として使われています。

何気なく使っている?「ありがたいです」

仕事に苦心していると、様子をみていた先輩が「手伝おうか?」と声をかけてくれました。なんて優しい先輩なのでしょう!感謝の気持ちを伝えようと、あなたは次のように言いました。「先輩、ありがたいです!」

あれ?お礼の言葉としては、何かが足りていないのでは?と違和感を覚えたあなたは正解です。「ありがたい」と思う気持ちは伝わりますが、手伝っていいのか・手伝わなくていいのか、はっきり回答できていません。そして、なによりも大切な「感謝している」という意味合いの言葉がありませんよね。

「ありがたい」は単独で使えない言葉です!

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「お気持ちありがたいです」のような「ありがたい」を単独が使っているのをよく耳にしますが、これは間違いです。一見丁寧語に見えますが、実はこれ「かなりくだけた表現」なのです。

「ありがたい」は形容詞!

「ありがたい」に「です」をつけると、一見丁寧語のように見えますが、実は間違った使い方ですので、目上の人に対しては使う場合は注意が必要です。

「ありがたい」は、気持ちや出来事を表現する形容詞ですから、「ありがたい+お言葉」「ありがたい+お気遣い」などの「名詞」をつけるのが正しい使い方となります。さらに「感謝します」と付け加えると、気持ちをより強く伝えることができます。

第三者に対しては使ってもOK!

会話の中に登場する第三者に対しては「ありがたいです」を使っても大丈夫です。よくあるシーンを例にしてみましょう。業務繁忙期、経験豊富な先輩が、ヘルプに入ってくれることになりました。そのことに対して「とても心強いです。本当にありがたいです」と言うのは問題ありません。

つまり、直接本人に対して「ありがたい」と単独で用いるのが×!なのです。

 ちなみに「助かります!」も×です。

「ありがたいです」「助かります」も自分より目上の人に対してはタブー用語です。2つとも「感謝している」という意味の言葉が入っていませんよね。とくに「助かります」は「私を助けなさい」という上から目線のフレーズです。

使い方を間違えると、相手は「命令された」と受け取ってしまうかもしれません。助けていただいたことに感謝するのなら「○○部長のおかげで~することができました。ありがとうございました」と最後まで伝えましょう。

「ありがたい」を言い換えてみよう!

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「ありがとうございます!」と言うだけでもOKですが、嬉しい気持ちを伝えるのですから、ちょっと気の利く言い回しをしたいですよね。

かしこまって「ありがたい!」と言いたいとき

敬語としては不十分な「ありがたい」を、言い換えるにはどのような言い換え例があるのでしょうか。率直に「ありがとうございます」と言うだけでも、感謝の気持ちは伝えられます。もちろん、感謝の気持ちを伝える言葉は他にもあります。間違った日本語である「ありがたいです」の乱用をやめて、はっきりとした感謝を表す別の言い回しを心がけましょう。

「幸いです」「幸甚に存知じます」

ありがたい、をちょっとくだいて「「○○していただけると、非常にありがたいです」と使う場合があります。このときに使われるのが「幸いです」という言い回しです。

  • 「早急にご連絡くださると幸いです。」
  • 「ご来場くだされば幸甚に存じます。」

「幸甚」とは「非常にありがたく思うこと」という意味です。話し言葉で使うより、メールなどの書き言葉に使いやすい依頼表現です。

「恐れ多い」

これは目上の人に対して使う言い回しです。友達や同僚に対しては用いない言葉です。

  • 「恐れ多いお言葉、ありがとうございます」

この場合は「もったいないお言葉」という意味になり、目上の人がかけてくれた言葉を「貴重なもの」として感謝の意を表しています。「ありがたいお言葉」の同義の言い回しです。

普段から使える「ありがたい!」の言い換え例

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感謝するとき、あなたはどんな言葉を使っていますか?嬉しいときこそ、美しい言葉を使いましょう。謙虚な気持ちの持ち主は、言葉遣いも綺麗です。

お土産をもらった時

上司や先輩からお土産や差し入れをもらった時などには、つい「ありがたいです!」と言ってしまいそうになりますが、どちらも自分にとっては目上の人です。お礼の言葉は正しく使いましょう。

  • 「お心遣い、ありがたく頂戴致します」
  • 「お気遣い、ありがとうございます」

「お心遣い」=「お気遣い」でも同じ意味になります。話し言葉としても耳障りがよく、さまざまなシーンで使えます。

褒められた時

「いつもよく頑張っているね」と声をかけられたとき、なかなか上手に答えられないですよね。「いえいえ、そんなことないですよ」と謙遜してしまう人が多いですが、せっかく褒めていただいたのですから、嬉しい気持ちを素直に表しましょう。

  • 「ありがたいお言葉、感謝いたします」
  • 「ありがたい感謝の気持ちで一杯でございます。」

褒められる、高評価される、採用されるなどのシーンで使いたい言い回しです。2つ目の例文は、メール文として使うのが一般的です。

「感謝の気持ち」を伝えるメール作法

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話し言葉と書き言葉は、意味は同じですが「言い回し」が違います。話し言葉をそのまま文章にすると、目で文字を追いづらく、理解するのに時間がかかります。

 文字だからこそ、気を配りたい「お礼の言葉」

ビジネスシーンでは「感謝を伝えなければならない機会」がたくさんあります。自分か立てた企画を採用してもらったり、かねてからPRしていた商品を購入してもらったときなどに、お礼メールを送ることがありますよね。「ご購入いただき、本当にありがたいです」なんて書いたりしていないでしょうか?

過去に書いたメールの内容を一度チェックしてみましょう。お礼は色や形のようにはっきりと表すのが難しいです。曖昧な表現をしている部分があれば、以下の例文一覧を参考にして書き換えましょう。

  • お世話になっております。この度はご注文誠にありがとうございます。ご愛顧頂きありがたく心より感謝申し上げます。
  • お世話になっております。先日は色々とお心遣いをいただき、ありがたく厚くお礼申し上げます。
  • ありがたいお言葉、心から感謝しております。
  • ありがたく、ただただ感謝の気持ちで一杯でございます。

どの例文にも「感謝」や「お礼」の言葉が含まれていることがポイントです。「ありがたい」を単独で使っているものはありませんよね。この例文から「感謝」などの文字を消してみると、お礼の気持ちが薄くなることがわかります。

「大和言葉」をご存知ですか?

固くなりがちなビジネスメールは「大和言葉」を使うだけで柔らかな印象に生まれ変わります。「大和言葉」とは、かつて日本人が造った、生粋の和の言葉です。柔らかな言葉が特徴的で、話す(書く)人の人柄を顕著に表します。

『仕事美人のメール作法』の著者・神垣あゆみさんが書かれた「感謝の気持ちの伝え方」の記事をご紹介いたしますので参考になさってください。

大和言葉で書き換える」

「平素より格別なご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます」といったお礼の一文を、ビジネス文書で見かけます。

漢字が多く、かっちりしていて硬い文なので定型文として都合はいいのですが、メールで使うなら、もう少しやわらかい言いまわしにしてもよいのではないでしょうか。例えば…

・「ひとかたならぬお引き立てをいただき、心からお礼を申しあげます」

「ひとかた」とは、普通の程度。「ひとかたならぬ」は、普通どおりではない、並みひととおりではないことを指します。「格別な」の言い換えとして用いると、文が和らぎます。

・ 「お引き立てにあずかりまして、ありがたく存じます」

「あずかる」は「与る」と書き、目上の相手からの好意や恩恵を受けることを意味します。ひいきにしてもらっていることへの感謝の気持ちを表す言い回しが「お引き立てにあずかりまして」です。

 ・「いつもお心にかけていただき、ありがとうございます」

「心にかける」は、心に留めて気にかけること。自分や会社のことをひいきにしてもらっている目上の相手や客先に対して、感謝の気持ちを伝えるときに「お心にかけていただき」を使います。

硬い調子の文章になっているな、と思うときは、このように大和言葉を使って書き換えると文章がやわらかく、やさしい印象になります。

出典:ビジネスメールは「大和言葉」を使うだけで格段にやわらかくなる

ビジネスシーンでは、相手との距離感をふまえた発言(発信)をしなければなりません。取引が始まったばかりの相手と、日ごろから顔を突き合わせている相手とでは緊張感が違います。

いくら慣れ親しんだ相手とはいえ、あまり砕いてしまうと不躾ななれなれしいマナー違反のメールになってしまいます。相手によって表現に変えたいときは、「大和言葉」のような柔らかなニュアンスに書き換えてみてはいかがでしょうか。

「ありがたい」はこんな時にも使えます!

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直接的な言葉を使うと、相手に誤解されることがあります。「ありがたい」という言葉を上手に使うと、「クッション言葉」のように相手の気持ちをやわらげることができます。

断る場合

「ありがたいお話なのですが・・・」

お誘いを受けたけれど、それを受けることが出来ない場合の言い回しです。お誘いを「もったいないお話」や「貴重なお話」と謙虚に受け止めていますよね。せっかくの好意をお断りすることも、このように相手を立てる言葉を1つ付け加えるだけでカドが立ちにくく、「お断りする」という行動の印象を和らげることができるのです。

お願いする場合

「○○していただけると、非常にありがたいのですが・・・」

早めのレスポンスを要求する場合や、貸したものを早く返却してもらいたい場合、「早く返事をください」「早く返してください」とはなかなか言いづらいものです。「申し上げにくいのですが」「失礼ですが」を付け加えてしまうと、相手に肩身の狭い思いをさせてしまいます。社会人のビジネスマナーの基本は「相手を尊重すること」です。相手を立てる言葉遣いとしても、「ありがたい」は使える言葉になります。

こちらの条件を飲んでもらうようお願いする場合

「なんとかお引き受けいただければ、ありがたく存じます」

こちらが相手より上の立場であっても、相手を立てる「謙虚な表現」の「ありがたい」や「幸い」を使うことで、今後の取り引きもスムーズになります。メール術としても取り入れやすいです。このように「お願いできたら」「お引き受けいただければ」という条件を前に置いたものを「条件表現」といいます。

まとめ

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「こちら和風パスタになります!」「野菜のパスタでよろしかったでしょうか?」これらは、バイトシーンでよく使われており、「バイト敬語」や「マニュアル敬語」と呼ばれています。「おかしな言葉だなあ」と感じる人も多いですよね。しかし、時間が経つ過程で、その違和感にも次第になれてしまうのが怖いところです。

日本人の大学教授が発表した「日本人のための日本語マニュアル」という“マニュアル”があります。このマニュアル文の内容は「表す日本語」と「伝える日本語」の役割の違いから「言い換えルール」まで及びます。専門家が集まって作成した日本語マニュアルを、一読してみてはいかがでしょうか。

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