「行く」の正しい敬語って知ってますか?上司に失礼がない言葉遣いを覚えよう!

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仕事中、誰かに呼ばれました。声の主を確認しないで、あなたはとっさに「はい、今行きます!」と答えました・・・。とっさに口をついて出た「今、行きます」という返事、ビジネスシーンに相応しい言葉遣いだったでしょうか?これがもし、社長に呼ばれていたら・・・ちょっと気まずいですよね。

このように、正しい敬語を使わなければならないシーンは、「突然」やってきます。とっさにどう答えたかで、あなたの印象は変わります。敬語というものは使い方を間違うと、立場が逆になったり、ときには「失礼な言い回し」になることもあります。

今回は多くのシーンで使われる「行く」という言葉を敬語にする時についてお話いたします。

敬語の表現は「3つ」あります!

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「敬語美人」の代表格・秘書の方は、自然に敬語を使い分けていましたよね。

敬語は1つではありません。誰を指すかによって3つの種類に分けられます。

「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」

敬語には「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」という3つの種類があります。これは、目上の人に接する機会が多いビジネスシーンでは、欠かすことが出来ない「基礎知識」です。普段何気なく使っていますが、3つの違いの説明を求められた時、正しく答えることができるでしょうか。

「丁寧語」とは?

「丁寧語」は、文末を丁寧に表現したものです。「です」「ます」「ございます」がそれにあたります。

  • 食べ“ます”。
  • 買い“ます”。
  • 帰り“ます”。

「尊敬語」とは?

相手の動作を高くして、尊敬(敬意)を表す言葉です。

  • 言う・・・先生が、おっしゃった。
  • 見る・・・こちらを、“ご覧”ください。
  • 座る・・・どうぞ、“お掛けになって”ください。
  • 食べる・・・たくさん、“お召し上がり”下さい。

「謙譲語」とは?

自分の動作を低くして、相手を高くする表現です。

  • 受け取る・・・ありがたく、“頂戴”します
  • 会う・・・“お目にかかれて”嬉しいです。
  • 了解する・・・“かしこまりました。”

「尊敬語」も「謙譲語」もどちらも動詞の表現を変えて、相手を高い位置に上げているのが特徴です。

「行く」を使い分けしてみましょう

冒頭の例に挙げた例ですが、あなたを呼んだ人が同僚だった場合と、社長だった場合では、返事の仕方を変えた方がベターです。下の3つを参考にしてみてください。

同僚の場合は「今行きます」でOKですが、社長の場合は「ただいま参ります」が相応しい返事の仕方となります。

「行く」の丁寧語は「行きます」

これは、誰でも普段から使っている「丁寧語」です。「どこへ行くの?」と聞かれた場合に「資料室へ行きます」「書留を出しに郵便局へ行きます」など、一般的によく使われている言い回しです。

「謙譲語」でもお話しますが、「どこへ行くの?」と質問をしてきた相手によっては、別の言い方をすべき場合があります。もし、社長といった上役から「君、どこへ行くの?」と尋ねられた場合は、敬意表現の「はい、これから○社へ打ち合わせに”参ります”」と答えるのが正しい答え方です。

「行く」の尊敬語は「いらっしゃる」「お見えになる」「お越しになる」

尊敬語は、相手の位置を高くする言葉ですから、「行く」の場合は自分自身の行動ではなく、相手の行動を指すことになります。冒頭で書いた「今、行きます」は自分自身の行動ですから、自分の行動を下にする「謙譲語」を使うことになります。

「行く」の謙譲表現は「伺います」「参ります」

自分の位置(行動)を下にする(=へりくだる)のが謙譲語でした。「行く」という言葉をへりくだって言うと「伺います」や「参ります」になります。

このようにして考えると「明日は何時ごろ参られますか?」という言葉遣いが間違っていることは明らかですよね。

「伺う」と「参る」の使い分け

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「伺う」も「参る」も同じ「行く」の謙譲語です。しかし「同じ」と言っても全く同じではないのが、日本語の難しいところです。

社会人なら知っておこう!「伺う」と「参る」の違い

今から10年前の2007年、謙譲語は「謙譲語Ⅰ」と「謙譲語Ⅱ(丁重語)」に細分化されました。「謙譲語Ⅰ」は「向かう先(場所)」に対して使います。「謙譲語Ⅱ」は「聞き手(人物)に敬意を表す」場合に使います。これでは少し分かりづらいので、下の引用文をご覧下さい。

社会言語学の中の「伺う」と「参る」の違い

「参る」と違って、「伺う」は「行く」先に敬意を払うべき相手がいなければ用いることができません。言い換えると、「参る」は聞き手に対する配慮から自らの行為をへりくだるものであるのに対して、「伺う」は行為の相手に対する配慮から自らの行為をへりくだるものであるという違いがあります。

したがって、次の例に見られるように、「行く」先に相手がいても、その相手が身内など敬意を払うべき相手でなければ、「伺う」の使用が不自然なものとなります。

  • 日曜日、久しぶりに兄の家に伺いました。
  • 日曜日、久しぶりに兄の家に参りました。

敬意を払うべき行為の相手である聞き手に対する発話です。「参る」が間違いであるとはいえませんが、「伺う」を用いれば「行く」先に敬意を払うべき相手(すなわち聞き手)のあることが明示されることになります。

出典:ことばの使い方(社会言語学・敬語)

「兄の家」の例を読むと、簡単に理解できます。たしかに兄の家に敬意を払う必要はありませんので「参る」が正しいということになります。イレギュラーなケースですが、この「行った先」が「兄の家」ではなく、「先生の家」であった場合はどうでしょうか。

基本的には「先生」を立てる場合は「伺う」で、聞き手を立てる場合は「参る」になります。しかし、「先生」とはそもそも「尊敬する人間」ですから、先生にも聞き手にも敬意を表して「日曜日、久しぶりに先生のご自宅にお伺い致しました」と「2重敬語」になっても、この場合は間違いにはならないのです。

メールで「行く」は、どう書くの?

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現代ビジネス社会では、いきなり電話をかけるのはルール違反だと言われています。メールをメインの連絡方法にする場合は、一度で用件が伝わる「メール術」を知っておく必要があります。

「行く」の正しい敬語は・・・?

就活中、ある企業から会社説明会の案内がメールで届きました。開催場所や開催日時が書かれており、出席の意志を面接担当者へメールで返信しなければなりません。このような時、どのようにメール文を作成したら良いでしょうか?

正解は「○月○日 16時にお伺い致します」となります。間違いやすいのは「16時にお伺いさせていただきます」や「16時に伺わせていただきます」の2重敬語です。「伺う」という言葉は、すでに「謙譲語」として完成していますので、「お伺いさせていただく」や「伺わせていただく」は間違った敬語になります。

メール表現は、字数が少ないと「内容が薄いかな?」と心配になりますが、間違った敬語で文章が長くなる方がメール作法としては問題です。

「お伺い」は2重敬語ではなく「美化語」です。

「美化語」というものをご存知でしょうか?この「美化語」は「敬意」という要素は含まれておらず、ただ言葉を上品に変えた(=美化した)ものを言います。尊敬語や謙譲語にもこの「美化語」をつけることができます。

「伺い(謙譲語)」に「お」をつけると「お伺い」になります。「伺い致します」ではフレースとしてはなんだかバランスが良くないですよね。他では「祝儀袋」や「結婚おめでとうございます」も同じようにバランスが悪く聞こえます。

「お」や「ご」を付け足すだけではなく、言い換えて美化する「美化語」もあります。「腹」を「おなか」に、「便所」を「お手洗い」と言い換えると、耳障りも良くなります。このような理由から「お伺い」は間違った言葉ではなく、「行く」が「謙譲語+美化語」になったもの、となります。

敬語美人は「仕事美人」です!

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あなたの勤める企業には、「秘書課」はありますか?「秘書」の仕事に就いている人は、正しい敬語を使うことを、誰よりも強く求められます。

秘書は「敬語の達人」です!

上司のスケジュール管理も秘書の重要な役割です。上司のスケジュールに合わせて、効率のよいアポイント調整をしなければなりません。「アポイントをとる」「アポイントを断る」「アポイントの時間を変更する」「アポイントに行く担当者が変わった」など・・・面談のアポイント調整は多岐にわたります。

このような「アポイント」にまつわるシーンでは、これからご紹介する「行く」の敬語が数たくさん飛び交います。ただ使えばよいというのではなく、シチュエーションや人物の関係性によってその都度使い分けなければなりません。

アポイントを「断る」場合

アポイントを断る場合は「せっかく“お越し”いただいたのですが、あいにく○○は・・・」と丁重にお断りしなければ、相手は当然不服な気持ちを覚えます。その不服の気持ちに対して「お断りして、本当に申し訳ない」という気持ちを表す「クッション言葉」も添えられています。

アポイントの「変更をお願いする」場合

もし、兼ねてからのアポイントに対して、こちらの上司が訪問出来なくなってしまった場合には「今日は行けなくなりました。」ではなく「本日、○○は緊急の所要が発生したため、アポイントの時間に“伺う”ことが出来なくなりました」と言わなければなりません。

続いて「つきましては、○月○日のご都合はいかがでしょうか」と次のアポイントを取ります。

 人によって変化する「行く」の言い回し

秘書は、自分の上司に1人に対して「今日は、15時に○○社へ“行かれる”ご予定になっています」や、「○○様が“お見え”になりました」「社長が、今からこちらへ“お越し”になります。」など「行く」が指す対象者が変わるたび、きちんと使い分けをしなければなりません。

全てを「行く」や「来た」で表現した場合とでは、全く印象が違いますよね。このように、秘書の方の言葉遣いを参考にするのも、正しい敬語を身につけるレッスンになります

まとめ

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メールは「書き言葉」で作成します。この「書き言葉」は、主語を明確に書き、後に来る述語との繋げ方によって意味が変わるので、注意が必要です。例えば「美しい景色を眺める少女」という言葉ですが、「美しい」のは景色でしょうか、それとも少女でしょうか。美しいのが景色なら「少女が眺める美しい景色」であり、少女が美しいなら「景色を眺める美しい少女」になります。

この例文のように、文を書いた本人にしか本当の意味が分からない「相手を悩ませる文章」を送ると、相手の解釈とのズレが生まれます。敬語表現を正しく使うことも大切ですが「確実に1度で伝わるメール術」も大切なビジネススキルです。

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