「ご一読ください」の正しい意味と類義語、応用テクニックまで紹介!

疑問と回答

ビジネス上の文章の中には、似たような言葉でも意味や使い方が異なるものが多く存在します。なにげなく使われている単語でも実は意味が誤っているなんてことも少なくありません。

家族や友人との会話であれば「とりあえず伝わればいい」ということであっても、社会人のマナーであればそうはいきません。正しい日本語を知り、普段から使えるようにしておくことが大切です。

ここでは、「ご一読ください」という言葉を中心に、「お目通しください」「ご確認ください」「ご査収ください」「ご高覧ください」といった類義語についても解説していきます。正しい言葉を使える社会人になれるよう、しっかりと敬語を覚えておきましょう!

「ご一読ください」の使い方を覚える

文書にサイン

まずは、今回の中心となる言葉「ご一読ください」について説明します。口頭でもメールでも必ず使う場面が出てくる言葉ですので、しっかり押さえておきましょう。

もちろん、すでに普段から使われている人もいると思いますが、例えば後輩にこの「ご一読」の意味の説明を求められた際、正確に解説できる人はどのくらいいるのでしょうか。

「なんとなく使っている」のではなく「意味を理解して使いこなしている」という立派な先輩として振る舞うためにも、ぜひ覚えておいてください。

「一読」とは

「一読」とは、端的に言うと「ざっと、一通り読むこと」です。こちらに接頭辞をつけたものが「ご一読」となります。

「ご一読ください」とは

「一読」を基に「ご一読ください」の意味を考えると、「一通り、ざっとお読みください」ということになります。実際に使うことが想定される場面として、やや長文のメールの冒頭にてあらかじめ添えておく、資料を配布した際に一言添える、といった具合です。

「ください」の部分については、表現のバリエーションによってニュアンスを変えることができます。より謙るならば「ご一読いただけますでしょうか」というふうにすることで相手の意思を尊重できますし、「ご一読願います」というふうにすることで「お願いしたい」という気持ちを強めることができます。自分と相手の立場関係やその時の状況、文脈に合わせて使い分けることで、伝わりやすくなったり抑揚が出るようになります。

「お目通しください」でも良いのか

チェック

「ご一読ください」との違いが分かりづらい言葉の一つに、「お目通し」という言葉があります。どちらも似たような表現であることから一見は問題なさそうですが、この「お目通し」については注意点がいくつかあります。

「目を通してください」はNG!

「お目通しください」の元は「目を通してください」という言葉になりますが、これをそのままでは敬語として不適切であると捉えておいてください。その響きからも分かると思いますが、上司やお客様に使う表現としては軽すぎるため、不向きであると言えるでしょう。

それどころか、相手によっては「無礼」だと受け取られてしまう可能性があります。日本語として誤っているわけではないものの、敬語としてはふさわしくないということを覚えておいてください。

「お目通し」の正しい使い方

それでは、「目を通してください」を敬語として成り立たせるためにはどうすれば良いのでしょうか。結論としては「お目通しいただくよう、お願い申し上げます」といった言葉になります。

相手が目上の立場だとしても比較的近しい立場関係にあるならば「お目通しください」でも構いませんが、より上の立場だったりお客様である場合は、「いただく」という言葉を付けることで尊敬語として完成します。ここまでくれば、先に紹介した「ご一読」と実質的に同じ使い方ができます。

「ご一読ください」の類義語・同義語

PC男

ここまでの解説で、「ご一読ください」の意味と使い方、同義語の「お目通しいただく」について理解することができたと思います。

しかし日本語は複雑なもので、まだまだ他にも似たような言葉が複数存在します。目にしやすい表現を紹介していきますので、ぜひご一読ください!

最も頻度が高い「ご確認」

ビジネスの場面のみならず、生活を送る上でしょっちゅう目にする表現として「ご確認ください」という言葉があります。直属の上司や同僚が相手であれば、この表現の方が固すぎず緩すぎずで使いやすいかもしれません。「ご確認ください」だと少し語気が強いと感じるようであれば、「ご確認いただけますでしょうか」「ご確認いただければ幸いです」といった言葉尻に変えることで、メジャーな単語はそのままに謙譲のニュアンスを出すことができます。

なお、ご確認「してください」「なさってください」という表現は、似て非なる誤った使い方と云われています。この言い回しだと一見は丁寧なようでも意味合い的には相手に謙譲語を使っている(相手の動作に用いている)ニュアンスとなってしまいます。ありがちな敬語の誤りである「伺ってください」と似た例ですね。注意しておきましょう。

対面向き?の「ご覧」

街中や、取引先への訪問時など、対面で何かを紹介された時に「ご覧ください」という言葉を耳にしたことがあると思います。意味としては「ご一読ください」も包括した汎用性の高い表現となっており、わりと使いやすいものとなっています。

ただし、メールに添付した資料に目を通してほしい時などに、本文に「ご覧ください」と添えるような使い方は比較的少ないかもしれません。どちらかと言うと上述の通り、例えば店頭の商品を紹介する時、不動産業者が物件の内見をアテンドする時、プレゼンの場においてプロジェクターで映した画面を紹介する際など、「対面時において、ある方向に目を向かせたい」という場面で使うこと(※英語で言うところの「Look at」)の方が一般的でしょう。

「ご覧」をさらに丁寧にした「ご高覧」

意味自体は「ご覧」くださいと同じですが、それをさらに丁寧にした表現となっているため、伝える相手が特に敬意を払うべき人物である場合に使う言葉です。

逆に、近しい上司や同僚相手に使うと「やたら固い」と思われてしまう可能性が高いので、使うべき場面や状況に合わせることを意識しておきましょう。

資料のレビュー時などは「ご査収」

これもビジネスメールで頻繁に見かける表現の一つです。意味としては「ご一読」も包括していますが、そこにさらに「チェック」を依頼するニュアンスが含まれているのが特徴です。よって、「ご一読ください」や「ご覧ください」よりもよく読み込んでほしいという意味合いが強くなっています。

使う場面としては、例えば取引先に提出する資料をあらかじめ上司にチェックしてほしい時などですね。「資料を作成いたしましたので、ご査収いただけますでしょうか」といった言い回しになります。他、正式な報告書や納品書を取引先やお客様にお渡しする際などにも使われることが多いでしょう。

語気を柔らかくするテクニック

キャリアウーマン

相手に何かを読んでほしい、見てほしい時の敬語と意味、使い方について紹介してきました。しかし、ここまで説明してきたのはあくまでも「基本体」です。実際に口頭やメールで使う際は、その時の状況や文脈に合わせて応用を利かせて表現することで、「一つ上の社会人」となることができます。

それでは最後に、これまで解説してきた言葉を基にした実用的な表現を紹介していきましょう!

命令形から疑問形に!

「ご一読ください」や「ご査収ください」といった言葉がいくら丁寧なものとはいえ、「ください」自体のニュアンスは命令形に近いものです。実際にこれらの言葉を読んで「命令されている」と受け取る人は少ないと思いますが、より柔らかくするために「疑問形」にするというテクニックはよく使われます。

「ご一読ください」の項でも少し紹介しましたが、「ご一読いただけますでしょうか」「ご確認いただけますでしょうか」「ご覧いただけますでしょうか」「ご査収いただけますでしょうか」といった表現がそれです。このように疑問形にすることで「実際にどうするかはあくまでもあなたの意思に委ねる」といった尊重の意を込めることができ、それでいて実質的には「そうしてほしい」という依頼のニュアンスが含まれるという便利な表現となります。

もちろん、一つの文書の中に何度も疑問形が出てくると逆に「疑問をいくつも浴びせられている」といった印象を与えてしまいかねないので、抑揚が出るように、ある箇所では「ご確認ください」、別の箇所では「ご査収いただけますでしょうか」といった具合に、上手く使い分けることを心がけましょう。

「~ませ」をつける

「いらっしゃいませ」に代表されるように、飲食店に行った時などに「お待ちくださいませ」といった具合に店員が言葉の語尾に「~ませ」とつけているのを耳にしたことは誰でもあると思います。このように「ませ」をつけることで語気を和らげ、強制的なニュアンスを打ち消すことができます。

こちらもあまり多用するとしつこく感じてしまうため、文章の後半にて何かお願いする言葉を使う際に「ご確認くださいませ」と添えるなど、その効果が活きるように意識してみましょう。

「幸いです」をつける

ビジネスメールでよく使われる表現として、「~いただけますと幸いです」といったように「幸い」という言葉でその部分を締めくくるテクニックがあります。例としては、「大変恐縮ではございますが、本件につきましてご確認いただけますと幸いです。何卒よろしくお願いいたします。」などです。このように語尾に「幸いです」と付けるだけで、疑問形にするよりもさらに相手を尊重・敬っているニュアンスを出すことができます。

もちろん、この表現にすることで相手が字面そのままに受け取って「あなたは幸いかもしれないけど、こっちとしては面倒だからやらないよ」とはなりませんので安心してくださいね!

まとめ

様々な言葉のバリエーションとテクニックを紹介してきましたが、ポイントは「相手がどのような立場であるか」「言葉を使うのがどのような場面であるか」というTPOをわきまえることです。お客様や遠い立場にある上層部の人に対しては軽い表現ではいけませんし、近しい人に対して最上級の言い回しをしてしまうと皮肉っぽさや不自然な距離感を感じさせてしまうことになります。

一人でも多くの方々が正しい日本語を正しい場面で使える立派な社会人になれるよう、ここで紹介させていただいた知識が役立てば幸いです。

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