「ご多忙のところ」の正しい使い方を知ろう!ご多忙中を避けるのはなぜ?

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みなさんはビジネスメールを送るとき、相手のことを考えて文章を作成しますよね。出張中であれば、参考になる資料も添付しようかとか、緊急性のあるメールなら要件をまず明確にして書こうとか、相手がどんな時に自分が送ったメールを読むかを考えると思います。

簡潔に、重点をまとめて、伝わりやすく作成すること。これがビジネス文書には欠かせないポイントです。相手との関係によっては、人間味の伝わってこないようなものも味気ないかもしれません。相手を思いやる気持ちが大切です。

このように、相手を思いやるフレーズ、最後の締めくくりに「ご多忙中のところ誠に申し訳ございませんが」とつけることがあります。しかし、この「ご多忙のところ」は、一部の間では使わないほうがいいフレーズと言われてるのをご存知でしょうか?

今日は「ご多忙のところ」についてお話していきます。

「ご多忙中」を避ける理由

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メールのテンプレートに「ご多忙中」と入れてある人は今すぐ書き換えた方がいいかもしれません・・・でも「ご多忙中」の何がいけないんでしょうか。

「忙」の字に隠れた意味とは

ご多忙という言葉の中の「忙」という字があまり良い意味をもたないからという理由です。

立心編(りっしんべん)に心で、「忙」という文字が出来上がります。右側の「亡」は亡くなる、というイメージで知られる文字ですね。

亡くなる、だけではありません。「亡」という文字を使った言葉を書き出してみましょう。

衰亡・滅亡・未亡人・亡霊・亡者・亡命・逃亡・・・・存在していたものがなくなるとか、死ぬこと、逃げること。そんな時に使われる文字です。そして「亡」の左側の立心編は「心」です。つまり「忙」は「心を亡くす」という文字なのです。

全くポジティブな要素のない字ですから、会社の存続のために仕事をしている人からすると、忌み言葉に似たものかもしれません。

「ご多忙中」以外でOKなものは?

忙しい中何かをお願いするわけですから「お時間を頂いて恐縮です」と付けないわけにはいきません。「お手数をおかけしますが」なども、お願いするときに付けますよね。

しかもその人は忙しい立場の人ですから、そのことを承知の上でお手数をお願いするのです。そんな時「忙」を使わずに付けたいフレーズは「ご多用中」です。

《例文》

  • ご多用中とは存じますが、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
  • ご多用中のところまことに恐縮ではございますが、何卒宜しくお願い申し上げます。

といったように、「ご多忙中」を「ご多用中」に置き換えればいいのです。

社会人の暗黙のルール的な「ご多用中」

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「忙」の字については「考えすぎだ」という声もありそうですが、ビジネスはある意味「ゲン担ぎ」のようなところもあります。

「不吉な文字を使わないで欲しい」といわれたらやはり避けざるをえません。社会にはいろいろな価値観を持った人でいっぱいです。

「禁止」ではなく「あえて使わない」

漢字の話からずれますが、回覧物を読んだときに「読みました」ということで印鑑を押しますよね。回覧物だけではありません、報告書や稟議書、企画書といった社内を回る書類にも同様に印鑑を押します。

この時、印鑑をまっすぐ垂直に押さず、上司の印鑑に向けて傾けて押すのがマナーとの説があります。印影が少し傾いていることで「上司に頭を下げている姿勢」を表すのだそうです。印鑑に彫られた名前は、自分そのものとして捉えられているのですね。

「わかっている人」であることが大事

このように、例え「忙」という字を使っても言葉自体は間違っていないですし、印鑑もまっすぐ押していてもマナー違反に直結はしません。

これらは、「やってはいけない」という禁止事項なのではなく、「あえて使わない」「あえて押さない」ことで「この人わかってるな」と、社会人としての好印象に繋がる「ノウハウ」とお考え下さい。

履歴書を送るときにも効果的です

就活中、履歴書を送りますよね。その時に履歴書だけを封筒に入れず一筆書いて同封します。その時にもこの「ご多用中」を使いましょう。

特に転職する時は「これまでに培った社会人経験」を必要とされるのですから、このような「わかっている」こともPRするべきだと思います。

一からビジネスマナーを教えなくていいのが中途採用のメリットです。面接担当者もこういう細かなところもチェックしています。

「ご多用中」はどこに書く?

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書き方としては、「用件の最後」につけます。意味合いとしては、「今回お願いしたことの他にも、しなければならないことがおありでしょうが、よろしくお願いしたいのです」となりますので、用件の後につけるのが自然で、なによりも締めくくりやすいでしょう。

「お忙しいところ、失礼いたします」はOK?

これを挨拶代わりに、書き出しに使用しているパターンもよくあります。不自然ではありませんが、これは「会話」で使われる言葉です。初めて同士の関係のメールには適していません。

電話をかける時によく使われていますね。また、何か作業をしている人に「話しかける」時に「お忙しいところ・・・」と切り出すときに使われています。メールの書き出しがこのフレーズだと、親しみはあるかもしれませんが、ちょっと「カジュアル」にも感じられます。

今回はビジネスメールのお話ですから、この言葉は、「書き出しには相応しくない」となります。 

「クッション言葉」をご存知ですか?

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例えば、なにかをお願いしなければならない、お断りをしなければならない。つまり「言いづらい話をしなければならない」時に直接的表現を和らげるために「挟む」言葉が「クッション言葉」です。

「ご多用中」はクッション言葉

このように、直接的表現の言葉遣いを和らげる機能を「ご多用中」は持っています。

お願いする相手が忙しくない場合でも「クッション言葉」として活用しましょう。

ただ、あまりにクッションだらけになってしまっては、回りくどくなりますし、わざとらしいとか「慇懃無礼」だと思われてしまってはもったいないので、適度に使いましょう。

他にもあります、クッション言葉

直接的に「どちらさまですか?」「送っていただけますか?」「訂正していただけますか」など、これでは、相手の気分を損ねてしまいますので注意が必要です。

  • 「失礼ですが、どちらさまでしょうか?」
  • 「お手数ですが、送っていただけますでしょうか?」
  • 「恐れ入りますが、訂正していただけますでしょうか?」

失礼ですが、お手数ですが、恐れ入りますが、をつけることで雰囲気が変わりましたよね。ずっと感じがよくなりました。

これはメールだけでなく、実際に対面した場合や電話でも同じなのでポイントを押さえておきましょう。

「ご多用中」の実際の使い方

タイプ

「ご多用中」は、言い回しもバリエーションが豊富ですので、前に書いた文章の長さなどバランスをとったり、シチュエーションに合わせて使うことが出来る、「便利な“締めの”クッション言葉」です。

「ご多用中」を使った例文

《例文》

・○月○日、XXに関するセミナーを弊社2階の会議室にて開催致します。社外からのご参加も受け付けております。ご多用中とは存じますが、ぜひご参加くださいませ。

・こちらで注文した商品と実際に到着した商品が違います。ご多用のところ恐縮ですが、ご確認の程宜しくお願いいたします。

・○○の件につきまして、お返事いただけますことお待ちいたしております。ご多用のことと存じますが、宜しくお願いいたします。

このように、参加を促す・確認を依頼する・質問した返事を催促するなど様々なシーンで使えます。

「ご多用中」を使うなら・・・メールの本質を見極めを!

足も運ばす、資料を送らず・情報を送りつけるのは、ビジネスメールではなくダイレクトメールです。郵便物のダイレクトメールならまだしも、メールは送料無料です。

本文に長々と商品のPRや価格・商品の画像を貼り付けて送るのは、手間とお金をかけずに宣伝しようという、都合を押しつけるメールと受け取られてしまいます。細かなニュアンスを伝えたい、そのためにアポイントをとる・資料を送るのですから、メールで詳細を伝えてしまうのは、正しいビジネスメールとは言えないでしょう。

そもそも、「ご多用中・・・」と最後につけるのですから、相手が忙しいことを知っているのに、「読むのに時間をとらせる」のでは本末転倒です。 

簡潔にしたら「ご多用」締めで和らげる

本文で「豊かな表現」をすることは、かえって相手の読む気を損なわせる可能性があります。

二重敬語も繰り返せば読む気が失せてきますよね。「一体なにが言いたいのかわからない」「読むのもイヤになる」そんな文章になってしまっては、意味がありません。

用件を簡潔に整理して、最後の締めのクッションで雰囲気を和らげる。そのための「ご多用中」と覚えておいてくださいね。

まとめ

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ビジネスでのマナーは、売上げにこそ直結はしませんが、会社の信頼に直結します。

取引先から来るメールに書かれているのが「ご多忙中」であったとしても、直接取引には影響しないかもしれません。

でも、後日来たメールを見た時「ご多用中」に変わっていたら、いかがでしょうか。「会社で通達でもあったか、自ら知ってて訂正したのか」を想像しますよね。いずれにせよ、「分かってる人・分かってる会社」、ひいては「きちんとした人・きちんとした会社」と、イメージアップしますよね。

一つ一つの行動の積み重ねが信用と実績を創ります。小さなことでも実行することで損することは、なに一つないのではないでしょうか。

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