就職活動で必ず求められる「自己PR」や「志望動機」。自分にはどんな長所があるのか、企業側に正しく伝えなければ意味がありません。自分のこれまでの人生を振り返り、それを素にどのようにこれから歩んでいきたいのかを伝える重要なタイミングです。
「自己PR」を正しく理解し、作り上げていくためには「自己分析」が不可欠です。自分で自分の事を理解していなければ、自信を持って話すことは出来ませんよね。「自己PR不足=準備不足」だと企業側に即判断されてしまいます。
面接で一貫性のある堂々とした態度が取れる人は「自己分析」がきちんと出来ている人たちです。「自己分析」が弱い人は、面接官の急なツッコミにはオドオドした態度になってしまいます。同じ「分かりません」という答えでも、堂々と出来るか出来ないかで結果は変わります。「張り子の虎」にならないためには、まずは正しく「自己分析」を行いましょう。
「自己分析」はどうして必要なのでしょう?
世界情勢に関する質問には答えられないけど、自分に対する質問ならカンタンに答えられる!・・・あなたは「自分」をどれだけ理解していますか?
「自己分析」にはどんな目的があるの?
自己分析をする目的、それは「正しく自分を知る」ことです。女性なら聞いたことがあるフレーズかもしれませんが、化粧品や服を選ぶとき、色違いがあれば迷ってしまいますよね。このような場合に使われるフレーズに「自分が好きな色と、似合う色は違う」というものがあります。
第三者から自分の姿を見てもらえば「どの色が自分に似合うか」教えてもらえますが、自分一人で選ばなければならないとしたら、あなたはどのような視点で色を選ぶでしょうか。髪や肌の色、すでに持っているワードローブとのバランスなどを考えますよね。「髪や肌の色」「ワードローブ」という「自分が持っている要素」を集めて自己分析を何気なく行っているはずです。
自分に合うものを知るために「自己分析」は必要不可欠です。
このように、就職活動でも同じような「自己分析」が必要です。自分に合わない業界というものが必ずありますし、反対に「天職」ともいえる業界も必ず存在するはずです。服の例えを用いると「自分は背が高く色白で黒髪。背の低い人には着こなせないロングスカートが似合う。色は黒髪のもつ”暗い”イメージを軽くするために明るいピンクを選びます。」これでこの女性は自分に似合うと確信した服を買うことが出来ました。
就職活動に成功する方法・・・それは「採用された時」ではありません。就職して良かったと思えたら就職活動に成功したと初めて言えるのです。少しの妥協は必要ですが、「良かった」といえるようにするための「自己分析」を進めていきましょう。
自分の長所・短所を発見する
自己分析を行うと、自分で認識していなかった長所・短所を新しく発見することができます。特に長所(強み)を知ることは、「どこで、この長所が活かせるか」という次のステップに思考が向けられるようになります。
ひいては、「どのような業界なら自分の長所を活かせるか」という企業のターゲットを絞ることが出来ます。企業が求めている人物像と照らし合わせ、その仕事が“本当に自分の本質に合う仕事”なのかを判断する”応募する企業の見極め方“にもなるのです。
自分の「適性」を知る
自分の長所・短所を知ることと同じくらい重要な目的、それは自分の「適正」を知ることです。「自分自身のことは自分がよく分かっている」と甘く考えては必ず失敗します。「自分に適性がある」と考えているもの、その根拠が「好き・嫌い」といった感情が含まれていることが多いからです。
自己分析を進めていくうちに、これまで候補に挙げていなかった業界の仕事に適性を見出す可能性があります。「気づかない発見」が出来れば志望する業界が拡がります。自分の適性を拡げるということは、「自分の世界や可能性を拡げる」ということでもあるのです。
「なりたい未来の姿」その理由を知る
最初から「自分が目指す人物像・自分が就きたい職業」といった広すぎる視野で考えると、必然的に「ブレ」が生じます。ゴールがあまりに遠く、ボヤけているからです。ボヤけた回答は、エントリーシートや面接との「一貫性がない」印象を与えてしまいます。
「自分は何が出来て、将来何がやりたいのか」を明確にしなければ、「これからどう進むか」という「自分の将来の姿」を描くことができません。面接官を納得させるような答えを導き出すには、まず「自分が納得すること」です。
自己分析で得た「自分の長所・短所」や「自分の適性」をベースにして、きちんと理由付けられた「未来の姿」を持ちましょう。
「自己分析」はこのように進めます
自己分析って誰がするの?まぎれもない「あなた」です。
周りの人に「ねえ、私ってどんな人?」と聞いてみるのもいいですが、まずはあなた自身の自己分析をしてみましょう。
「自己分析」には時間をたっぷりかけましょう!
自己分析は短時間で作成できるものではありません。決められた項目にYES・NOで答えてコンピュータがあなたを「分析・解析」してくれるわけではありません。
初めに過去の自分を思い返し、どんな学生時代を、どんな風に過ごしたのかなど「自分史」を作成することから自己分析は始まります。また、「自己分析」にゴールはありません。どこかで「ここまでがゴール」と自分で決めておく必要があります。
終着点(ゴール)を設定する
「自己分析の目的」でお話したとおり、自己分析をするその目的は「自分の長所・短所」と「自分の適性」「自分が目指す将来像」を追究することでした。
これらはすべて、自分のその時の感情や、価値観に左右されかねない要素です。「自分で自分を分析する」のですから、終着点を決めておかなければ「やっぱり違う」「本当の自分はこうじゃない」など延々と続け、そのうち「何をやっているかがわからない」状況に陥ります。このようなことにならないためには「終着点を決める」ことは不可欠なステップとなります。
「自分史年表」の材料を集める
生まれた場所から書き出していってもいいでしょう。もしかすると、その生まれた土地に関連する企業に応募する動機の材料となる可能性もありますよね。
幼稚園や小学校など、現在の自分の基礎となるようなエピソードや経験があればそちらも「材料」に含んでしまってもいいと思います。幼少期の経験であっても、人格形成の素となっている場合も大いにあります。
集めたい年表の材料
小学校・中学校・高校・大学と分けて時系列で整理してみましょう。
- 得意科目と不得意科目
- 習い事
- 取得した資格
- 当時熱中していた物
- 印象に残っているもの
- 努力していたこと
- 疑問に感じていたこと
- 所属していた部活など
- アルバイト
- サークル活動
- 過去に描いていた「将来の夢」
- 今描いている「将来の夢」
ポイントはこれらの項目に「箇条書き」で書き出すだけでなく、「当時考えていたこと」を思い出して集めることにあります。今の自分を作ったのは、他ならぬ「当時(過去)の自分」であり、その1つ1つが大きな意味を持っていることが見え始めます。
集まった「材料」を「強み」に置き換えよう
得意科目がずっと数学だったり、中学生時代に描いた夢を大学生時代に叶えていたり。所属していた部活動でキャプテンを務めたとか、大学時代ずっと同じアルバイトをしていたなど、強み」に仕立てることが出来そうな材料が発見できたことでしょう。
- 得意科目が変わることなく数学であれば →「理系に強い」
- 中学生時代に描いた夢を大学生時代に叶えたなら →「1つの目標に対して努力する」
- 部活動でキャプテンを務めた経験では →「人を引っ張る力がある」
- 大学時代にずっと同じアルバイトをしていたなら →「粘り強さがある」
このように、「自己分析の結果」と「その根拠」を同期させることはやがてES対策にも役立ちます。そして、過去の自分に感謝することもできます。過去の自分を認められることは「自分の選択に間違いはなかった」というかけがえの無い宝物を見つけるようなものなのです。
「自分が目指す将来像」を組み立てる
材料を整理し、自分の強みが明確になったら次は将来の展望について考えていきます。将来像を持つことで志望業界・志望企業・志望職種を見出すことができます。例えば、研究職に就きたいとざっくりと考えている場合「どうして研究職に就きたいと思うようになったのか」に焦点を当て、「きっかけ」は何だったのかを明確にしていきましょう。
「研究職に就きたい」と思ったきっかけが、例えば中学生時代に感じていた疑問が「どうして研究に長い時間がかかるのか?」ということだったとします。さまざまな研究結果は、多くのメリットを人に与えてくれます。そのためには研究者の数を増やす必要があり、研究職は自分の「粘り強さ」と「理系の強さ」を生かせる、と組み立てることができます。
自己分析をした上で得られる「将来像」は、自己分析をしなかった場合と逆の組み立て方になります。ざっくばらんに最初の段階で「この業界で仕事がしたい」と思い、「志望業界決定」から入ると「その業界で活かせる自分の強み」→「その仕事に就きたい動機」・「その仕事でなれる将来像」とやや“こじつけ的”に進みがちです。自分が納得していない言葉は、採用担当者の方にはすぐに見抜かれてしまいます。
「将来像」は10年後まで想定する
内定をもらってその職場に10年勤務し、自分がどれだけ成長できるかを具体的に考えてみましょう。目的は「その会社で必ず自分は成長できると確信する」ことにあります。
就職活動では「何が何でも選考に通過し、そして採用されなければならない」という気持ちが先走り、企業と自分の間に価値観のズレがあっても「企業に迎合した内容」で自己PRをしてしまいます。「企業選び」と言われるように、こちら側にも企業を選ぶ権利があるということを忘れないでください。
10年働いて成長できると確信できる企業イメージを持ちましょう。
- 10年間在籍できる・多くのことを学べる環境がある →大規模企業
- 研究活動で多くの実績を上げている →化学・食品・医療薬品
- 広い視野を持つ・情報が多い →日本企業<外資系企業?
とてもざっくりとしたイメージになりますが、このプロセスによって「志望企業」がかなり絞られてきました。そして、自分が求める姿に合わない企業イメージの姿も見えてきます。
多くのことを学びたい、企業でじっくり腰を据えて成長したいと考えているのに、いきなりベンチャー企業に就職してしまっては自分のビジョンを叶えることは難しいでしょう。なにより「一から育ててもらおうって考えているのに、どうしてベンチャーを選んだの?」と面接官から集中攻撃を受けることにもなりかねません。
「自己分析シート」はいつも”最新版”にしましょう!
自己分析の結果、自分の志望業界・志望企業が絞られたのでこれでOK!と思うのはちょっと早いです。今の時点で出来上がっている「自己分析シート」は、まだまだ未完成です。
常にリニューアルを繰り返し、「最新版」にしておきましょう。
最初に作った「自己分析シート」は発展途上です。
先で挙げた「リスト」の項目をもっと増やし、すでに埋めた項目に言葉を書き加えていきましょう。内容を常に新しく、深いものに近づけていくことは必然的に「自問自答」を繰りかえすことになります。
この「自問自答」の大切さに気づくのは「面接を受けたとき」に分かります。自己PRや志望動機を話すとき、「真実味のある言葉」がどれだけ出てくるか、にかかっているのです。
面接を受ける度に、反省をしましょう!
「こんな質問がくるとは思わなかった」とか「質問に答えられなかった」など、面接を受ける度に反省点が出てきます。その反省点をムダにしてはいけません。たとえまだ採用の結果が届いていなくても、反省をしましょう。想定質問以外の質問が出されたら、それを書き留めて自己分析の項目を増やすのです。
「面接対策が十分でなかった」という大まかな反省点では今後に活かされません。今回受けた面接で、新しく発見した自分の価値観などを、就職活動日記のように記録しておきましょう。
「自己分析」が出来たら、次は「業界研究」です!
この後業界研究や企業研究をする段階に入っていきます。
自分が確固たる確信を持って選んだ企業ですから、中途半端な研究やムダな研究時間を設けなくて済むはずです。
「自己分析」をムダにしないために参考にしたい本
「会社四季報」という本を就職活動の参考する人は多いですが、就職活動中の学生の人には「就職四季報」もおすすめします。この「就職四季報」には、会社説明会で質問しにくいようなリアルな内容が掲載されています。
離職率や有給取得状況、待遇などといった質問はなかなか出来ませんよね。会社のPR活動・採用活動のために発行されている(企業からお金をもらって作成した)本ではありませんので「出版社が企業に遠慮することなく集めた赤裸々な記事」がたくさん公開されています。ブラック企業を選ばないためにも参考にしてみてはいかがでしょうか。
自己分析を基にしてターゲットを定めた業界や企業の研究を重ねても、企業が隠せば見えないものは見えません。筆者としても、若い人がせっかく作成した「自己分析シート」をムダにしてほしくありませんので、ぜひこのような本をお読みいただきたいと思います。
まとめ
大学受験で、人生で使うパワーのほとんどを使い果たした・・・という若い人の声を聞いたことがあります。長い人では小学生の時から「良い大学に入るための努力」をしている場合があるので、このような声が上がるのは不思議なことではありません。
就職活動では驚くほどの数の面接を受けている学生さんもいます。大学を卒業したら、今度は就職活動という荒波を乗り越えなければなりません。オトナへの階段はいったいどれだけあるのでしょう。
社会人になれば定年退職をするまでの約40年間、ずっと社会人生活が続きます。大学受験や就職活動を乗り越えた人にとっては「安住の地」かもしれません。でも本当にその職場が「安住の地」になるかは、「企業選び」にかかります。
給与はよくても、働く意味が感じられない。人気企業に就職したけど、経営のやり方にどうしても賛同できないなど働くためには「モチベーション」が不可欠です。「モチベーション」が欠けるのは「就職先と自分がマッチしていない」ことに原因があります。マッチングに成功するためには「自己分析」は欠かせないプロセスなのです。
関連記事として
・面接の自己紹介で人の心を掴む方法って?自己PRはどうする?
・履歴書の「本人希望欄」には何を書く?書き方の注意点も紹介!
これらの記事も読んでおきましょう。