職業として「安定」の二文字がイメージとして浮かびやすい公務員。昨今でも、一度は就職先として考えることがあるであろう公務員ですが、市役所などで公務員として働くためにはまず、公務員試験に合格しなければなりません。その第一関門は筆記試験となりますが、内定をもらうには面接試験も突破する必要があります。
どちらも大切なものですが、よくあるのが筆記試験がかろうじての合格だったにもかかわらず、面接試験で上位合格をするという逆転パターンです。逆に、筆記試験で高得点を獲得したのに、その後の面接試験で不合格となってしまう人も多々いるようです。
地方公務員の場合は面接重視なことが多いようで、自治体によっては「筆記試験合格後はその点数は加味せず、面接試験の点数のみで最終的に合否判定をする」というパターンもあります。
それほどに面接試験は重要であると言えるわけですが、そこで必須項目となるのが「志望理由」です。エントリーシートでも必ず問われる志望動機・理由ですが、この如何によって合否が大きく左右されますので、この書き方のコツとポイントについて解説していきましょう。
志望動機や理由を書く際のポイント
この記事を読まれているということは、あなたも公務員になることを考えている一人だと思います。
そこでまず確認したいのですが、あなたは役所などの公務員試験を目指すにあたり、公務員としての考え方や業務内容を把握されていますか?
そもそもの話になりますが、仕事内容を把握していない状態では、当然ながら志望動機を書くことはできません。役所に行ったことはあると思いますが、そこで抱いたイメージなどを基に曖昧な知識で志望の動機や理由を書いてしまうと、実態からずれた内容になってしまう可能性が大いにあります。
まずは、公務員や地方公務員を目指すのであれば、自分が公務員になって何をしていきたいのかということを明確化するために、その業務内容をしっかりと把握するようにしましょう。
なぜ公務員になりたいのか
最初のポイントとして、なぜ民間の企業ではなく公務員として働きたいのかということです。直接的にこのような表現で書く必要はないにせよ、面接の際には定番の質問として、このように訊かれることが多いのです。あらかじめ対策を打ってきていることを見抜いて質問してこない場合もあるようですが、いつ訊かれてもいいようにきちんとした答えを用意しておきましょう。
なお、ありがちな本音の志望理由は、大抵がNGとなります。その例と根拠を挙げていきます。
■安定している
最もイメージしやすいのが、この「安定している」という面です。実際のところ、多くの人たちの志望理由にこの「安定」が挙げられるのではないでしょうか。
しかし留意しておきたいのは、昔に比べるとその安定性は低下しつつあるということです。
最近は、地方公務員でも解雇されたという実例がありますし、国家公務員も地方公務員も給与が減少してきており、15年ほど前と比較すると平均年収が約200万円も低下した自治体もあるそうです。
■残業が少ないから
公務員に抱くイメージとしてもう一つ大きいのが「アフター5」ですね。いわゆる「17時退勤」です。
事実、民間企業に比べると残業が少なめの役所は多いようで、その分、プライベートの時間にゆとりを持てる人もいるでしょう。
ところが、中には終電の時間帯まで働くという過酷な労働環境下にいる人も大勢いるようです。しかも、終電間際に仕事が終わるというわけでもなく、仕事自体は終わっていないけれど、電車がなくなってしまうからやむを得ず帰るということも多々あるそうです。
また、公務員と聞くと土日休みを思い浮かべがちですが、役所などによっては土日出勤があったり、予算の兼ね合いで残業代が丸々は出ないケースもあります。
現在は色々と労働状況が厳しい世の中ですが、それは民間企業だけではなく公務員にも言えることなのです。当然ながら、配属先によって環境は異なりますが、少なくとも「公務員は楽」という従来のイメージからの先入観は捨てましょう。
なお、言わずもがな、面接時に「残業が少なそうだから」「労働時間が短そうだから」といった発言をしてしまわないよう気をつけてください。
公務員は利益を追求しない?
勘違いされている人も多いようですが、公務員だからといって利益を追求していないわけではありません。むしろ、利益を追求しているからこそ、税収を上げて経済の停滞を抑制し、行政サービスなどを行うことができているのです。
公務事業の財源が税金であることはご存知だと思いますが、当然ながら予算は限られています。この限られた予算内でできる限りのことを実施していかなければ国民は納得しません。つまり、公務員も利益を追求する事業を行わなければならないということなのです。
これらのことから、「公務員は民間企業のように利益を追求しないから」といった綺麗事のようなことを述べてしまうと、的外れな回答になってしまうことに繋がりますので注意しましょう。
公務員でなければできないことは何か
裁判所の職員のような専門職の場合は、それ自体が「公務員でなければ就けない仕事」のため、理由としてはとても明示しやすいものとなります。そのため、これら専門職・専門分野を扱う国家公務員を目指す場合は、そもそも志望理由を書く際に悩むということは割合的に少ないでしょう。
やはり、注意が必要となるのは地方公務員の場合です。
地方公務員の仕事の中には福祉関係や雇用政策といったものがありますが、これらは果たして民間企業や非営利団体では不可能な業務なのかどうかというところです。下手に述べてしまうと、公務員を目指す動機や理由としては弱くなってしまう恐れがあるので、気をつけましょう。
公務員として何をしたいのか
先に述べた福祉関連や雇用政策ですが、各自治体は民間企業や非営利団体の協力を得ながら行っているものです。つまり、これ自体は「公務員でなければできない仕事」というわけではありません。関連する民間企業に入社して尽力することで、目的に沿った業務を行える可能性があります。
よって、大事なポイントとなるのは「公務員として」何がしたいのかということになります。
実際のところ公務員として具体的に何ができて何をしているのかという部分は、民間企業と同様にその目で確かめてみなければ分からないことが多々あります。ただ、自治体のホームページなどを閲覧することで、公務として何が主体となっているのかなどをある程度は確認することが可能です。
また、自治体が行うインターンシップや業務説明会に参加し、現場の職員の声を直接聞くというのもとても有効的でしょう。やはり、実際に働いている人の話を自ら聞くのが一番だと言えます。
試験種別のポイントと具体例
ここまでは、志望動機や理由を書く・話すにあたっての留意点やポイントについて説明してきました。
次に、試験種別における志望理由の具体的なポイントや、理由を明確化しづらい地方公務員志望時の例を、いくつか紹介していきましょう。
やはり公務員の場合は、民間企業の志望動機や理由とは少し違った内容になってきます。そのため、一つの参考として見てみてください。
押さえておくべきポイント
大まかに、地方公務員、国家一般職、専門職ごとに押さえておきたい部分を紹介しておきます。
■地方公務員
「その自治体でなければならない」理由が必要となりますが、これが最も難しい部分と言えるでしょう。しっかりとした説明をするためにも、以下のポイントを盛り込んでおくようにしてください。
- 志望する自治体の仕事を知ったきっかけ
- 政策の面から、実際にしてみたい業務
- したい仕事において、自分がどのように貢献できると思うか
なお、都道府県と政令指定都市、市町村などではそれぞれ、管轄範囲や役割が異なります。どの政策を基にどの範囲で何をしたいのかによって、志望する自治体が変わってくるはずです。このあたりに留意して、どのような立場で仕事をしていきたいのか明確にしておきましょう。
■国家公務員・一般職
国家一般職の面接カードに沿い、志望官庁等の仕事の質に合わせた動機を書き、説明できるようにしておきましょう。
厚生労働省を志望するのであれば、「国民が安心して暮らせる社会作り」といった具合です。また、具体性を増すために志望動機を含めながら回答できるようにすると、より効果的となります。
■専門職
その分野に興味を持った動機、その仕事に就きたい理由、どのように貢献したいのかということを明確に伝えられるようにしておきましょう。
専門職と言うと特別感を出す必要があるように思う人もいるようですが、ごく一般的なことや常識的なことでも大丈夫です。大切なのは、どれだけ具体的で説得力があるかということになります。
役所勤めの地方公務員における志望理由例
役所の職員といった地方公務員を目指す際の志望動機や理由が最も悩むことになると思いますが、もちろん「安定」や「時間」といったことをエントリーシートに書いたり面接で回答したりしてはいけません。
説得力を持たせることはもちろん、公務員になれた後に自分のモチベーションを維持していくためにも、これまで説明してきた内容を基に考えられるよう、参考例を載せておきます。
■公務員の仕事に感銘を受けた
学生の頃から「人の役に立つ仕事に就きたい」と考えていました。
そのような中、大学生の時に熊本で大震災が発生し、ボランティアに行ったのですが、自分たちも被災しているにもかかわらず市役所職員の方々が水や食料を一生懸命に配給しているのを見て、感銘を受けました。私もそのような公務員になりたいと強く思い、志望いたしました。
■愛着のある地元で公務に携わりたい
あたたかい心を持った優しい地元の方々のため、この生まれ育った愛着のある区のために貢献し、これまでの業務経験を活かしていきたいと思っております。
まとめ
公務員に限った話ではありませんが、志望動機や理由を明確化させる目的は、何も「合格するため」だけではありません。志望理由がはっきりしていなければ、無事に合格したとしても結局モチベーションが保てずに退職してしまったり、有意義に仕事生活を送れないこともあるのです。こうなってしまっては、本人だけでなく、公務員という性質上「国」という大きな単位としてもマイナスとなってしまいます。
公務員を目指す際は、「なんとなく安定しているイメージがあるから」という不純とも言える動機ではなく、確かな誠意と熱意を持って、きちんと業務内容を理解した上で何をしたいのか明確にし、臨むようにしましょう!