風流な場合は時節のご挨拶からはじまり、女性であれば「かしこ」、などで締める手紙。
最近は手紙よりもメールでやりとりすることが格段に多くなりました。
なにかとメールでテンプレートのように使われる「ご確認ください」。これは正しい言葉なのでしょうか。字面がスッキリとしているため「本当にこれでいいのかな?」と考える人も多いです。正しいのは「ご確認ください?」とそれとも「ご確認してください?」
今回は「ご確認ください」についてお話していきます。
「ご確認ください」は間違い?正しい?
日本語は漢字とカタカナ、ひらがなで構成されます。
送り仮名の間違いもさることながら、この言葉のときはどう言うのが正しいのか、考えれば考えるほど分からなくなってきますよね。
よくある間違い「二重敬語」
「ご確認してください」これは間違いです。「ご確認ください」これが正解なのです。
ご確認は謙譲語で、してくださいは尊敬語になりますから敬語がダブっています。これがいわゆる「二重敬語」というものです。「ご」を先につけているので、すでに尊敬の意味をもたせています。この二重敬語、ビジネスシーンで結構な頻度で間違って使われています。
よくある「二重敬語」の例をここでまとめておきます。
これらもテンプレのように使われていることが多いです。メールだけでなく口頭でもよく使われています。
- ×伺わせていただきます → ○伺います
- ×おっしゃられる → ○おっしゃる
- ×お越しになられる → ○お越しになる
- ×ご覧になられる → ○ご覧になる
特に、口頭でよく使われがちですが、これらはやりすぎの二重敬語です。ポイントは「ご」や「お」が頭についている場合、すでに「敬語」であるということです。
「ご」をつけないとどうなるの?
「ご」を付けないと、「確認してください」になりますが、これにはどこにも尊敬語が含まれていません。ください、は敬語ではなく丁寧語です。
学校で、先生が生徒に「試験に出るから、このページを“確認してください”」という時につかわれますね。このように”目下の人”に使う”指示”やの場合は、違和感がありません。つまり、やや命令のような意味を含んだニュアンスです。お客様はもちろん、目上の方へ使うには相応しくない言い方・書き方です。
「ご」を付けないのであれば「ください」を変える必要があります。
「ご」・「お」+「ください」なら正解!
ビジネスネメールでは、相手との関係や、今あるシチュエーションに合わせて、様々な「敬語」・「尊敬語」・「謙譲語」を使いこなさなければいけません。これまで挙げたように、先頭に「ご」や「お」をつけて相手お願いをする、「ご~する」・「お~する」の正しい形をしっかり身に付けておきましょう。
この形式で別の言葉で表してみます。
- 先日お送りした資料を・・・ ご持参・ください
- 本メールの添付資料を・・・ ご覧・ください
- 以下の質問に・・・ お答え・ください
- 番号をお確かめの上もう一度・・・ お掛け直し・ください
これは「ご確認ください」の仲間たちです。どれにも「して」は付いていませんよね。特に「番号をお確かめの上(お確かめになって)もう一度お掛け直しください」、これは公共の電話のアナウンスで使われているものです。
迷った時は、この「電話アナウンス」のフレーズを思い出してみてはいかがでしょうか。
「ご確認」は謙譲語です
この謙譲語もなかなかの曲者で、よく「これでいいのかな?」と思うことがあります。
「ご~する」や「お~する」というのは、相手の立場をを高くするために使う「謙譲語」です。自分がする場合だけでなく、相手に行動をお願いする場合にもいます。
謙譲語について
「ご説明」「ご提出」「ご同行」これらが謙譲語です。これに続く言葉を考えてみてください。
- 「ご説明」・・・(自分)する (相手)ください
- 「ご提出」・・・(自分)する (相手)ください
- 「ご同行」・・・(自分)する (相手)ください
これらが正しい表現です。見抜き方のポイントは、漢字二文字、です。漢字二文字に、「ご」や「お」をつける場合は「して」はつけないのが正解です。
「謙」という字は、ケンという音読みですが、訓読みでは「謙る:へりくだる」です。謙譲語は、自分がへりくだることで相手を立てるのですね。
「ご確認」にまつわる様々な言い方
同じ謙譲語の「ご確認」ですが、続く言葉でニュアンスが変わります。ここではいろんな言い方を挙げてみます。
・ご確認願います
願います、とお願いしているわりに「お願いする」気持ちがなかなか伝わってきませんよね。なぜなら「願います」は「ます」がついているだけの「丁寧語」であって、「お~する」になっていないからです。一歩進めるとしたら「ご確認お願いします」となります。
・ご確認お願いします
前項であげたように、これも正しいです。ただ、最小限の言い回しなので「お願い」するのなら、もう少ししっかりと「お願い」したほうがいいでしょう。お願いする、ということは相手にそれなりの行動をさせてしまうことです。「ご確認お願いします」は、社内メールで同僚から目下に使うくらいが範囲の限度ではないでしょうか。
・ご確認の程よろしくお願い申し上げます
特に、お客様や目上の人に対して「お願い」する場合、ここまで書いてしまいましょう。それなりの行動を「お願い」するのですから、これくらいでちょうど良いと言えます。
送る相手によっては、この丁寧さが逆効果になってしまうこともあります。また送る内容によっても「堅苦しさ」を与えかねません。相手に合わせて書き換えることも必要です。
請求書や契約書など必ず目を通してほしいものの場合は特にこちらを使いましょう。
送る相手によって”使い分け”ましょう
「ご確認」でもいろいろあることが分かりました。確認を指示するのか、確認をお願いするのかニュアンスの違いはもちろん、お互いの立ち位置をあらわすことも出来るのです。
相手に合わせた「ご確認」(例文1)
例えば、暑い日が続くので社内で納涼会を開くことにしました。開催される場所が決まり、お店の場所や地図を書いて、詳細をメールで送信することにしました。
「(件名)納涼会のお知らせ (略)場所はA町のビアガーデンABCです。(略)”ご確認お願いします。”」と社員全員に送りました。
次の日、納涼会のことを聞きつけた同じ会社の重役が数名、「私たちも行きたい」と参加を希望しました。場所などを教えて欲しい、とのことでしたのであなたは重役に対して、昨日送ったものと同じ案内メールを送信することにしました・・・
あなたはそのまま送信しますか?
「ご確認の程よろしくお願い申し上げます」に書き換えたほうが無難ですよね。余裕があるなら「○○常務がご参加くださるとのことで、社員一同大変ありがたく思っております」など付け加えてもいいかもしれません。
相手に合わせた「ご確認」(例文2)
ではこの場合はどうでしょうか。
納涼会ではビンゴゲームをしよう、とあなたは考えました。そこにあなたの部下たちが「ビンゴゲームの準備をお手伝いします」と言ってきてくれました。景品の買出しや予算、ゲームの司会、景品を渡す係などをあなたが割り振って、部下たちにメールで指示を入れることにしました。しっかり確認して動いてくれよ、重役たちもくるんだからな、これは仕事だぞ!という気持ちのあなたです。
部下に送るメールを書きましょう。「(件名)ビンゴゲームについて (略)開始時間30分前に現地集合して下さい。(略)その他詳細については各自で・・・」
各自で確認して動いてほしいのです。さてあなたは何と続けますか?
「確認願います」がしっくりきますよね。
ここで「ご確認の程よろしくお願い申し上げます」と書いてしまっても間違いではありませんが、この例文ではなんだかあなたが部下に「お願いです、ビンゴゲームの手伝いをしてもらえませんか?」とお願いしているような意味合いになってしまっています。
このように、「正しい言葉でも、相手や場面別で言い方を変えなければニュアンスが変わって伝わる可能性がある」のです。
その他・よく使われる間違い表現集
ビジネスメールの場合は特に、簡潔に・正しく情報を伝えなければなりません。長々と余分な言葉があると、丁寧に伝えたい気持ちは伝わりますが、あまり良い印象は持たれません。ひどい場合は「読んでて疲れる」なんて思われてしまいます。
間違いとは知らず、使っている人多数!
- もう、ご覧になられましたか → ご覧になりましたか
- 後ほどメールで送らさせていただきます → 送らせていただきます
- あとでお伺いいたします → 伺います
- 後ほどご説明させていただきます → ご説明いたします
これは、馴染みすぎて間違いであることに気がついていない人が多いです。
物議を醸しました!
・宜しかったでしょうか → お間違いないでしょうか(など)
これは「バイト言葉」と言われています。アルバイト先であっても日本語としては間違っています。
上から目線のねぎらい言葉?!
- とんでもございません → とんでもないことです
- ご苦労様です →お疲れ様です (ご苦労様は目下に対して使います)
会社に来る、明らかに年上の業者さんに「ご苦労様です」と言っている人多いですよね。
ドラマで時々聞くセリフ・・・です
- どういたしますか? → いかがなされますか?
- 私的には → 私といたしましては
- やらせてください! → ぜひ○○させてください
熱血サラリーマンが「その企画、僕にやらせてください!!」と言ってるシーンとか、よくありますが、はい、間違いです。
まとめ
「謙譲語」のようなへりくだって相手を高くする表現、実は日本だけのものではありません。日本語ほどハッキリとは分けられていませんが、英語にも「へりくだって言う表現」はあります。
もちろん丁寧語を使う国もあります(韓国語が一番分かりやすいですね)。
日本語は世界一難解な言語と言われていますが、どこの国も「相手に敬意を表する」気持ちは変わらないのです。
せっかく日本人として生まれ育ったのですから、もう一度見直し、正しく言葉を使っていきたいですね。
関連記事として、
・頑張ってくださいって敬語なの?目上の人に使う正しい言葉を知ろう!
・ご尽力とは?意味や、目上の人に使うときの例や使用方法を紹介!
・承知いたしましたは目上に使っていい?意味や了解との違いを紹介!
これらの記事も読んでおきましょう。