「寸志」という言葉を聞いたことはありますか?
「寸志」は「すんし」と読み、“少しの気持ち”や“心ばかりの贈り物”という意味です。歓送迎会などで渡すものであったり、葬儀でお手伝いをしていただいた方へお礼として渡すものなど様々となり、これらには当然ながら礼儀が必要です。
正しい作法を知って対応するために、ここではその「寸志」の意味や基本的なマナーについてご紹介しましょう!
「寸志」とは
「寸志」は、“ほんの気持ちですが”という一言と共に添えて渡す、少しのお金(または品物)という意味です。お世話になった人に対してお礼(ご厚志)の気持ちを渡す際に用いられ、具体的には「仕事関係の方へ贈る寸志」「葬儀などのお手伝いをしていただいた方へ渡す寸志」などがあります。
飲み会やなどビジネスシーンで多く訪れる機会でも、ほとんどの場合で、主賓はビジネスマナーとして寸志を準備するということをご存知でしたか?
目上の人が目下の人に渡すもの
寸志は基本的に目上の人が目下の人に渡すのが常識であり、慣習です。よって、歓送迎会などの場であっても、主賓は目上の者に寸志を渡す必要はありません。
逆に、自分が上司や先輩から寸志をいただいた場合は、素直に受け取るようにしましょう。その上で「寸志をいただいた」ということを周りに紹介するのが正しい流れです。
(※具体的な作法については後述)
慣れないうちは、対応に困ってしまうこともあるでしょう。しかし、意味をきちんと理解しておくことで、スムーズに対応することができるようになるのです。
相場は「1,000~5,000円」前後が一般的
地域や関係性などにもよりますが、歓送迎会など飲み会の寸志の相場は概ね1,000~5,000円ほどとなっていることが多いようです。この額からも、あくまでも「気持ち」という意味が分かるでしょう。
また、車両の運転手や火葬場の係員、受付など、何かと負担の多い仕事の方々には他の方より多めに包むこともあります。
聞き慣れない言葉のため仰々しいイメージもありますが、実際にはビジネスマナーとして日常的に幅広く使われているものなのです。なお、葬祭業者の場合は「すべて料金に含んでいる」とし、寸志を求めないというケースも増えてきているようです。
事前に覚え、正しい対応をしよう!
ビジネスシーンにおいて、寸志をいただくというケースは意外と多いものです。その場合は、しっかりとお礼の言葉を述べた上で、紹介と共に、寸志をありがたく使わせていただくというのが礼儀です。
こういったことから、意味だけではなく正しい対応方法もあらかじめしっかりと身につけておくことが大切です。特に、飲み会の幹事を任された場合は身につけておく必要があるので、覚えておきましょう!
寸志をいただいた時の対応方法
「寸志」というものについてはご理解いただけたと思います。次に、正しい対応方法について解説していきましょう。
歓送迎会などで幹事となり寸志をいただいた際は、上手な対応が求められます。寸志は目上の者からいただくものですので、正しい対応ができないと恥をかいてしまうことになります。
単に意味を知っているだけでは、実際に寸志をいただいた際の立ち回り方が分からなくなってしまうこともあると思います。実際に幹事となった時に恥をかいてしまうことのないよう、しっかりと事前に学んでおきましょう!
お礼は「御志をいただきまして、ありがとうございます」
寸志を受け取った際は、当然ながらまずお礼の言葉を伝えましょう。その時の正しいお礼の言葉は「御志(おこころざし)をいただきまして、誠にありがとうございます」といった言葉になります。
「寸志」という言葉そのものは、公では使わないというのが暗黙のマナーです。目上の方を立てる意味でも、「寸志」という言葉は使わずに「御志」という表現でお礼を伝えてください。
寸志をいただいた旨の報告をする
寸志をいただいたら、その会の中で主賓の紹介をすると共に、寸志をいただいた旨をきちんと報告するのも大切なマナーとなっています。
例として、「主賓の○○さんよりご厚志を賜りましたので、この場をお借りして報告させていただきます」と紹介してください。
この時ももちろん、「寸志」という言葉は使わないように注意しましょう。「ご厚志」や「ご芳志」といった言葉が正しい表現となりますので、きちんと覚えておいてください。
寸志のお返し
寸志をいたいても、本来は何も返さなくても良いものではあります。とはいえ、実際にはお礼の一つの形として、感謝の気持ちを少しお返しする方が望ましいでしょう。
お菓子を贈ったり、次の飲み会の費用に足すなど、職場やその人によって対応は様々となるようですが、何か前例がある場合には、その会社の方針に従うのが無難です。
このように、寸志のお返しまでしっかりと対応できてこそ、社会人としてのマナーが守られている人という印象に繋げていくことができるのです。
主賓との次の飲み会で、会計の足しにする
飲み会の寸志に対しては、次回の主賓との飲み会で会計に回すのが一番無難なお返しだと言えます。
寸志を渡す側は、渡した寸志がそのまま戻ってくることを望んでいるわけではありません。また、何かお返しをもらおうという気持ちでいるわけでもありません。大抵の人は「次の機会にでも何らかの形で気持ちを返してくれれば嬉しい」といった心持ちですので、それを最大限に汲み取ったお返しこそ、「次回の飲み会の会計で足しにする」ということなのです。
一般的には「菓子折り」や「お礼状」
前述したように、主賓はお礼(ご厚志)のお返しに期待して寸志を渡しているわけではありません。そういう意味では、本来は何も返さなくても良いものです。ただ、その回の飲み会で寸志を使い切ったのであれば、やはりお礼として感謝の気持ちを少しお返しするのがビジネスマナーと言えるでしょう。
何で返すかは色々とありますが、菓子折りやお礼状などが一般的となっています。
寸志の渡し方
ここまでは、寸志を「いただいた側」のマナーを中心に解説してきました。
しかし、自分が目上の立場になったり、葬儀などを行えば、誰かに「寸志を渡す」場面も出てきます。
どのような時に渡せば良いのか、場面や包み方などについても押さえておきましょう。
渡す相手
- 火葬場の係員
- 霊柩車の運転手
- 配膳や受付のお手伝いをいただいた方
このような方々には、寸志としてお金を包んでお礼をするという習慣があります。
また、歓送迎会などで自分が主賓の立場になれば、幹事に渡すという場面も出てくるでしょう。
金額
先述した通り、寸志の相場は概ね1,000~5,000円ほどとなっています。
ただし、会社の歓送迎会という場においてあなたが管理職やそれなりの立場であるならば、1,000円では少なすぎるため、会費以上を包むのが良いでしょう。また、寸志はキリ良く5,000円や10,000円を包むことも多いようです。会費と自分の立場を考えた上で、額を決めるようにしましょう。あなた以外に主賓がいる場合には、その人と相談して寸志の額を決めてください。
包み方
お礼を包む際、葬儀の場面であれば不祝儀ののし袋か白封筒など控えめなものにし、「寸志」と表書きをしてください。渡すのは基本的に式の終わった後と言われていますが、葬祭業者がまとめて預かったりしてくれることもあるようです。
歓送迎会などで自分が主賓の立場になり、幹事に寸志を渡す場合は、水引が付いていない赤棒ののし袋が良いでしょう。文具店などには、あらかじめ「寸志」と書かれたのし袋が売られています。このようなのし袋における書き方としては、封筒に印字された「寸志」の下に名前を記入するだけです。
なお、「寸志」を自筆で書く際は、一般のご祝儀袋と同じく濃墨の筆か筆ペンで書くようにしてください。
また、表書きは「松の葉に包むほど僅かなもの」という意味を込めて「松の葉」と書く場合もありますので、その時の場面に応じて検討してみましょう。ただし、平仮名で「まつのは」と書くと、目下の者に対してとなってしまいます。注意しておきましょう。
その他の「寸志」の意味
ところで、会社に入社したばかりの人が「会社から寸志が出た」といった表現をしていることを見聞きしたことはありませんか?
もしかしたら、「寸志」の意味はこちらだと思われていた人もいるかもしれませんね。実は、こちらも一つの立派な「寸志」なのです。
企業が「賞与」とまではいかないまでも、給与とは別に少しばかりボーナスのようなお金を支給する際に「寸志」として出すケースも多くなっているようです。
給与とは別に会社が出すという意味では、「賞与」も「寸志」もまったく同じです。しかし、賞与は“給与の数か月分”というイメージや実態であることに対し、寸志はその表現のごとく“少しばかり”というものになっています。
入社したばかりの方は最初の賞与支給月の段階では賞与をもらう条件を満たしていませんが、気持ちとして寸志が支給されることがあるのです。額は少なくても、感謝していただきましょう。
まとめ
今回は寸志のビジネスマナーをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
寸志は目上の者から渡されるものなので、「ありがたく受け取る」というのは最低限のマナーとなっています。その上で、お礼をどうするのかということをきちんと考えていく必要があります。
歓送迎会などで寸志をいただいた際は、「ご厚志」として言葉にはきちんと気を遣い、周りの皆さんに必ず紹介することを忘れないようにしてください。また、お礼に関してもビジネスマンとして実践すべきマナーであると言えるので、しっかりと心がけておきましょう。
こういったビジネスマナーを持って対応していくことで、渡した側にも気持ちよく会に参加いただけます。幹事の方はしっかりと覚えておき、素晴らしい場を作り上げていってくださいね!