あなたは「休日出勤」をしたことがありますか?
休みを返上して仕事をした場合は「休日出勤手当」というものが支払われることとなっています。また、休日出勤自体は“イレギュラー”であり、何かトラブルなどや一時的なやむを得ない事情があった時に発生するものです。
しかし、中には休日出勤が常態化している企業があったり、手当がきちんと支払われないようなブラック企業も存在します。
毎回のように休日出勤が発生すると、当然ながら実質的に休みがなくなり働き通しとなるため、過労による体調不良や、最悪の場合は死に至るケースもあります。
こういったことは企業に過失があるのは当然なのですが、働く側が労働基準法による休日や休日出勤の知識がないために、企業の言われるがままに従ってしまっているということも見過ごせないポイントとなっています。
ここでは、休日出勤に関する正しい知識を学びながら従業員がしっかりと対応していけるように、法律や対処法を説明していきます。
労働基準法から見る休日出勤
まずは、法律による休日出勤について確認していきましょう。
これを知っておくことで、企業に対応する際に説得力も出ますし、何より毅然とした対応ができます。
「休日」の考え方
一言で「休日」と言っても、どこが休日にあたるかは企業によって異なります。土日休み、平日休み、週休1日、年末年始のみ休み、365日稼働など、様々な企業があるのはお分かりになるかと思います。
すべての企業がまったく同じ休みとなってしまえば、休日にどこかに出かけてもお店も交通機関も何も機能していないという極めて寂しい光景になってしまいますよね。当然、レジャー施設などに遊びに行くこともできなくなってしまいます。
よって、企業により多種多様な休日制があるわけですが、いずれの場合であっても各企業の就業規定には必ず「休日」についての記載があります。基本的な休日はもちろん、祝日や夏季休暇、年末年始などが明記されています。
法定労働時間と法定休日
前述したように、企業によって様々な休日制がありますが、だからと言って自由に決められるわけではありません。完全に企業任せとしてしまったら、月に1回や2回だけを休日とすることもできてしまい、就業規定を理由にいくらでも従業員を働かせることができるということになってしまいます。そんな状態では、実質的に過労を容認することと同義です。
それでは、どのような縛りがあるかと言うと「法定労働時間」と「法定休日」というものです。
◆法定労働時間:1日8時間以内、かつ、1週40時間以内
◆法定休日:週に1日以上
これは国で定められた基準となっているため、各企業はこの基準に則った上で就業規定を作ることになります。
ただし、実際には週に40時間を超えた労働が発生してしまうことは、どこの企業でも当たり前のようにあります。これは、「労使協定書」(通称「36協定」)と呼ばれるものにより協定を締結することで、時間外手当を支払うことにより「残業」や「休日出勤」を可とすることができます。
なお、手当は「割増賃金」として、時間外労働125%、休日労働135%以上となっています。
休日出勤とは
法定労働時間と法定休日を基に各企業が定めた「休日」により、従業員の休日が決まるということになります。よって、就業規定として明記されている休日に出勤することになった場合が、いわゆる「休日出勤」という扱いに基本的になるのです。
この場合は前述の通り、割増賃金(休日出勤手当)として135%以上が支払われるということです。
「休暇」との違い
休日とは別に、通常の労働日に有給休暇や特別休暇(夏季、介護、育児、生理など)を申請して企業から承認を得ることで取得する休みのことを「休暇」と言います。
よって、従業員が意図して休みを取得しているわけですので、その日に出勤をさせるということは原則として不可となっています。
振替休日≠代替休日
あらかじめ調整をして出勤日と休日を入れ替えた時の休日を「振替休日」、休日に出勤をした代わりに後から取得した休日ことを「代替休日」(代休)と言います。
事前の調整による振替休日には休日出勤手当による割増賃金は出ませんが、代休の場合は休日労働をしたこと自体を帳消しにできるわけではないので、あくまでも休日出勤によるものとして割増賃金が出るということになります。
休日出勤手当について
前項でも少し触れていますが、「休日出勤」をした場合には所定の割増賃金が発生します。この手当が支払われることによって違法性はなくなり、規則通りの労働という扱いになります。
つまり、「休日出勤をさせる」ことは直接的に違法ではなく、その出勤に対してきちんと手当を出すなり代休を取らせたかどうかが、法的な分かれ道となるのです。
それでは、休日出勤手当について詳しく見ていきましょう。
割増賃金
先述した通り、休日出勤における割増賃金は135%となっています。つまり、本来の給料1日分に35%上乗せということです。
なお、代休を取得できたとしても、割増分の35%は支払われることになります。
代替休日
休日出勤をした場合は、代替としての休日の取得を企業に提案することができます。
実際に提案するかしないかは従業員次第ですが、「提案する権利」があることは覚えておきましょう。
違法か合法か
端的な表現をすれば、割増賃金や代休の取得など、休日出勤をしたことによる対価があれば違法ではないということになります。
これは労働基準法の第37条にて定められており、以下のように明記されています。
休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
よって、休日出勤をしたにも関わらず、法に則った対価がないまま労働を強いられている場合には「違法」ということになり、これが発覚して労働基準監督署などから何度忠告されても企業側が聞き入れないような悪質なケースにおいては、懲役や罰金などの刑事罰が下される可能性が高いのです。
しかし、中には「自覚のない休日出勤」となっている場合もあり、注意が必要なことがあります。
通常、「休日出勤」と聞くと、いわゆる「上長から依頼や指示をされて休日に出勤すること」を想像すると思いますが、それ以外にも休日出勤に該当する場合があります。いくつか、例を見ていきましょう。
研修やイベント参加
社内研修やイベントなどが、自分の休日に開催されることがあります。特にシフト制などで、企業としての正規の休日とは別に不定休労働となっている部署(顧客からの問合せ窓口やヘルプデスクなど)に所属している場合などは、よくあるパターンです。
こういった時に研修参加が実質的に強制的なものであり、振替休日を取得できないような場合は、休日出勤扱いとなります。
任意参加であれば法的には休日出勤とはなりませんが、企業によっては手当を出してくれるところもありますので、上長に確認してみましょう。
指示のない自主的な休日出勤
上長から出勤依頼や指示がなかったとしても、明らかに本来の出勤日だけでは終わらないボリュームの仕事を抱えているなどしてやむを得ず休日に出勤している場合、それを上長が認識しているならば休日出勤扱いとなります。
ただし、特にそういったやむを得ない事情もなく従業員が個人的に休日に出勤しているならば、休日出勤とはみなされません。それ以前に、休日に勝手に出勤していることによって、従業員が逆に注意や指導を受ける可能性があります。
会社外での休日業務
休日に「会社に出勤する」ことだけが休日出勤とは限りません。
実際に出勤はしていなくても、仕事が終わらないために家に持って帰って事実上の業務をおこなったような場合は、休日出勤となる可能性があります。特に、ノートパソコンや社用携帯電話などを貸与されている従業員などにはありがちなパターンとなります。
なお、休日出勤扱いとするには「どのくらいの時間、休日に業務をおこなったか」といったことを物理的に証明する必要がある場合もあります。上長と直接やり取りしている場合は実質的に口頭だけで済むこともありますが、あらかじめ確認しておきましょう。
休日出勤を増やさないために
冒頭でもお伝えしましたが、休日出勤はあくまでも“イレギュラー”であることを忘れないでください。
本来であれば正規の出勤日に自分の仕事を都度終わらせる、キリをつけることがあるべき姿ですので、休日に仕事を行うことが常態化するようであれば、そもそもの業務量や企業の運営に問題があるということになります。
また、「他の人には頼みづらいけど、この人は毎回引き受けてくれるから…」といった理由により、特定の人ばかりが休日出勤を任せられているのであれば、引き受けてしまう従業員側も考え方を見直したり対処をする必要があるでしょう。(金銭目的で好んで引き受けているならば話は別ですが…)
このように休日出勤をむやみに増やさないための方法を、最後に紹介しておきます。
しっかりと断る
これが一番分かりやすく、かつ一般的な方法と言えますが、正直に「断る」ことです。
ただ単に断るだけというのも気まずくなるかもしれませんので、理由を伝えた方が効果的でしょう。プライベートの用事でも良いですし、素直に「最近疲れが溜まっているため、ゆっくりと休みたいので」といった事情でも良いでしょう。体調管理は「仕事の一つ」でもありますので、「休日を休日としてしっかり休みたい」というのは正当な理由です。
代替休日の取得を相談する
先述したように、休日出勤をした場合は代わりの休みを提案する権利があります。
お金の問題ではなく純粋に「休日」を希望するならば、無理に堪えずにきちんと相談してみましょう。
違法な場合は休日手当の請求を!
そもそも、休日出勤への対価がないような違法なケースについては、まずは法的な話を基に休日出勤手当を企業に請求することが重要です。
企業と対立して真っ向勝負になってしまうのは面倒であったり、その後のことを考えると気が引けるかもしれませんが、違法を見過ごしていては自分もその違法に加担していることになってしまいます。
場合によっては弁護士などの専門家に相談する必要も出てくるかもしれませんが、甘んじて不当な休日出勤を受け入れ続けてしまうことのないよう気をつけましょう。
まとめ
以上が、休日出勤の基礎知識と、対処法となります。いかがでしたでしょうか。
休日は本来「休む日」ですので、それを返上して働くというのは心身共に疲労を蓄積させることになります。また、普段から残業もかさんでいるようであれば、過労による病気の発症も招きかねません。
「休日出勤をした場合の対価を知る」ということだけではなく、それ以前に「休日にむやみに出勤すること自体を回避する」ということを大前提として考え、健全に働くことを心がけてくださいね!