社会人になると、人前で「挨拶」をする機会があります。まず最初にやってくる機会は「入社の挨拶」ではないでしょうか。
社会人1年生の場合、人生初めての上司や先輩方の視線を一斉に浴びながら行う挨拶は「社会人としての課題」のようなものです。多少のたどたどしさも新人らしくて微笑ましいものなので、難しく考える必要はありません。
しかし転職者の場合は、新卒者と全く同じ挨拶をするわけにはいきません。職歴があるということは「社会人マナーが身についている」ということですから、「きちんとした挨拶が出来て当たり前」と見なされます。今回は「入社の挨拶」についてお話します。
抑えておこう!「入社の挨拶」基本ルール
「今日から我々と一緒に仕事をする、新入社員の○○さんです。○○さんからひと言挨拶をお願いします!」えっ?何にも考えてないよ~・・・なんてことにならないよう、事前に挨拶の内容を考えておきましょう!
まずは、自己紹介
自己紹介は、まずなによりも「名前」を名乗ることから始まります。いきなり「山田太郎です」と名前だけ言う人はいませんよね。
まずは朝の挨拶から始めましょう。「おはようございます!」と言うと、聞いている人たちも「おはようございます」と返してくれますので、タイミングを読んで名前を言いましょう。
自分の名前
- 「おはようございます。今日から皆様と一緒に働かせていただくことになりました、新入社員の山田太郎と申します」
- 「おはようございます。この度、○○課に配属になりました、山田太郎と申します。」
自分がこの会社にとって”どんな位置づけなのか”を加えるとバランスが良くなります。異動の場合は「○月○日付けで、○○課に配属になりました、山田太郎です。」となります。
自分自身に関して
- 「○○大学○○学部出身で、学生時代は剣道部に所属しておりました。」
- 「東京都出身で、○○大学で経済学を専攻しておりました。」
顔を名前だけの情報では、相手はなかなか覚えられません。「これが私です」といったキーワードになるものを加えましょう。
最も差し障りがなく、誰にでも受け入れやすいのは「出身地」「出身校」「クラブ活動」、その他では「得意なスポーツ」「趣味」です。極端に強い個性の趣味の話や、政治・宗教など一般的でない内容は控えましょう。
つぎに、今後の抱負を述べましょう
- 「皆様に色々とご迷惑をおかけすると思いますが、精一杯頑張っていく所存です。」
- 「1日でも早く仕事を覚えて、皆様のお役に立てるよう頑張ります。」
ただ「頑張る」というのではなく、「これからどのように頑張るのか」を具体的に述べましょう。また、新人のうちは分からないことだらけですので「迷惑をおかけしますが・・・」と最初に述べておくのも、悪いことではありません。
最後に、「今後の指導をお願いする」言葉
- 「どうぞ宜しくご指導ご鞭撻のほどをお願いいたします。」
- 「どうかご指導のほどよろしくお願いいたします。」
たまに「ご指導の方(ほう)、よろしく・・・」と言っている新入社員がいますが、これは間違いです。「ご指導のほど」が正しい言い回しです。
初出勤日に遅刻は絶対厳禁ですので、早めに出勤すると思います。職場に到着すると、当然初めて会う人たちばかりです。「どうせ、あとで全員の前で挨拶するから・・・」と適当な挨拶にしないで、チャンスとばかりに出勤してくる社員一人ひとりに挨拶周りをしておきましょう。この行動が、後の「全体への挨拶」のときの大きな助けになります。
挨拶に欠かせない重要ポイント!
どれだけ完璧な言葉遣いを心がけても、伝えきれないものがあります。
それは「感情」です。新たな職場で、新たな人たちと出会えたことを喜ぶ気持ちを伝えるもの、それは「笑顔」です。
なによりも「笑顔」が大切!
「笑顔で挨拶」はマナーの基本です。しかし、ヘラヘラとした緊張感のない笑顔では逆効果です。明るく爽やかな笑顔を心がけましょう。緊張すると、どうしても床ばかり見てしまいがちになりますが、全体を見渡し、一人ひとりに話しかけるように、顔を上げて挨拶をしましょう。
一人ひとりの顔を見て話していると、人それぞれ表情が違うことに気付きます。ウンウンと頷いて笑顔で挨拶を聞いてくれている人を見つけることが出来れば、緊張も和らぎます。和らいだ表情は、相手に安心感を与えます。人の顔を見て話すことの大切さは「心の会話のキャッチボール」にあるのです。
声は大きく、話し方は「ハキハキ」と!
大きな声は「元気」や「活発」のイメージを相手に与えます。ボソボソとした聞き取りにくい声では、印象に残りづらいだけではなく「消極的」や「活気がない」といったマイナスのイメージを与えます。
声がもたらす影響は想像以上に大きく、仮に第一印象が「暗そうな人」であっても、挨拶の声が大きいだけで「意外と元気が良い!」とその印象を一気に覆します。声のもつパワーを利用しない手はありません。
普段から声があまり大きくない人も、挨拶の時だけは、大きな声を出しましょう。
挨拶の時間は1分以内!
挨拶は、長くなればなるほど印象が悪くなります。最初の爽やかな印象から、だんだんと「自己主張の強い人物」へと印象が変わります。
結婚式で長いスピーチをすると「自分が主役だと間違えているんじゃないの?」と悪口を言われてしまいます。長くても1分程度に留めましょう。
印象に残る挨拶をしよう!
新入社員を多く迎えると、上司や先輩方はその顔と名前を覚えるだけでも一苦労です。自分の部署に来た新人以外は名前も知らないのが現実です。
しかし、中には「ああ!あいつか!」と記憶に残っているがいます。
印象に残る人・残らない人
記憶に残る人と残らない人、それは「入社初日の挨拶」に違いがあります。インパクトのある名前だったり、得意なスポーツやユニークな趣味などを挨拶に交えた人ほど、先輩や上司の記憶に残っているのです。
特に「出身地」は興味をもたれやすいです。会話中に方言が飛び出したときは「実家、どこ?」なんて聞いてしまいますよね。会社からとても遠い地域の出身であったり、ユニークな風習を持つ地域の話は誰しもが興味を示します。
挨拶のときに自分の出身地を交えることは、非常に大きな効果があります。野球の球団を持つ地域の場合もネタに出来ます。例えば「兵庫県出身にも関わらず、熱烈なカープファンです!」このひと言だけでも、強い印象を与えることができます。
着席前に、もう一度挨拶を!
会話には「とっかかり」が必要です。話すネタがある相手とは、自然に会話が始まります。印象付けられるような挨拶が出来なければ、「話しかけやすい人」になりましょう。
自分の席に着くときに、改めて同じチームの人たちに挨拶をしましょう。「改めまして、山田です。いろいろお訊ねすると思いますがよろしくお願いいたします」など、もう一度声をかけましょう。
新人を迎えたチームの人は、黙っていてもそれなりに気を遣っています。入社日の前からデスクの配置や、文房具の準備などの環境を整えてくれた人もいるはずです。黙って席に着くのではなく、ひと言添えてから席に着きましょう。
「中途入社」と「新卒入社」挨拶の違い
「新入社員」と言っても、転職者と新卒者では扱いは違います。
一定のキャリアが認められて採用されているのですから、新しい職場の人からはシビアな目が向けられます
中途入社は「孤独」から始まる!
新卒で入社する場合、失敗してもお互いにフォローし合える「同期の仲間」がいるので心強いです。その点で中途採用の場合は、自分1人で行動しなければなりません。仲間がいないとなると、目の前にいる「初対面の先輩方」を味方にするしか方法がありません。先輩方を立てるような挨拶を心がけましょう。
「おはようございます。本日より御社にお世話になることになりました、山田太郎です。これまで、株式会社〇〇で〇〇の仕事をしておりましたが、縁あって今日から御社で働くことになりました。1日もはやく、皆様のお役に立てるよう努力してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。」
この例文は最も無難なものですが、一旦はこれくらいで抑えておくのが良いと思います。筆者の経験ですが、最初に大きなことを言ってのけた人ほど、後が続きませんでした。
なによりも「謙虚さ」が大切!
中途入社の場合、経験豊富な「業界のベテラン」や「業界経験者」として迎え入れられることもあります。業界ではベテランであっても、転職先企業では新入社員です。既存社員を見下すような挨拶は控えましょう。
「皆さん、いっしょに頑張りましょう!」とか「何でも気軽に聞いてください」などは完全に上から目線の言葉です。「この会社を変えてやる!」という宣戦布告をしたいのなら話は別ですが、目下の社員ばかりであっても「教えを乞う」姿勢をしばらく保ちましょう。
敵ばかりの職場にしてしまっては、転職活動の苦労が水の泡になります。
挨拶に「笑い」は入れないほうが無難!
即戦力として採用された場合は、挨拶もそこそこに引き継ぎが始まったり、初日から仕事を回されることがほとんどです。ユーモアを挨拶の時点でPRしなくても、その日の仕事を必死に覚えようとする方が、早く親しんでもらえます。
人間関係も出来ていないのに、いきなり笑いに持っていくのは中途採用の場合は失敗する可能性が高いです。前職の経験がある分、シビアな目で観察されていることを忘れないようにしましょう。
「愛想のよさ」は大切!
愛想が悪い挨拶をすると当然、印象も悪くなります。初出勤の日の挨拶は、とにかく「愛想の良さ」を意識しましょう。話しかけにくい人に、進んで何かを教えようとする人はいませんよね。
自己主張の激しい挨拶や、いきなり大きな目標を掲げるのは避け「まずは世間話でもしようかな?」と思わせるくらいの「人の良さ」を前面に出しましょう。転職先の人たちは「一体どんな人が入社したのか」と最初は遠巻きに観察します。
「話しかけてください」という雰囲気を出しているくらいで調度よいのです。
服装も「こなれすぎ」は禁物!
制服を着用する事務員と違い、営業マンの服装は「自前」です。スーツの着こなしに自信があるからと言って、最初から「こなれすぎ」の服装は考え物です。スーツの下に着用するワイシャツも、企業によっては「色シャツ」や「デザインシャツ」を避けるところがあります。
「キャリア感」を演出するための「色シャツ」や「ベスト」そして「カフスボタン」「個性的なネクタイ」などを着用するのは、職場に馴染んでからにしましょう。スーツでも様々な種類がありますので、判断に困った場合は面接担当者の服装を思い出してみましょう。
挨拶は「入社日」だけではありません
「○○君、新入社員からひと言お願いします!」と挨拶を求められるのは、入社の挨拶だけではありません。企業にとっての新入社員は、まさに「今注目の人」です。
事あるごとに爽やかな挨拶が求められます。事前準備をしておきましょう。
歓迎会
歓迎会を開いてくださったことへ感謝の気持ちを延べましょう。歓迎会が開かれる時期は、まだ一緒に仕事をしていない相手も多いので、改めて自己紹介をしましょう。入社日と同じ内容に加え、自分の趣味や自分の性格などを交えて話すと、すでに知っている人にも新たな一面を見せることができます。
- 「趣味はサッカーとカラオケです。最近テニスも始めました。まだまだ初心者ですが、もし、テニスをされているがいらっしゃいましたら、是非ご一緒させて下さい。」
- 「私は”ちょっとノンビリしているね”と周りから言われます。皆さんでどんどんお尻を叩いてくだされば、と思っております。」
忘年会
入社してから9ヶ月が経ち、職場にも馴染んだ頃です。上司や先輩方に「これまでの感謝の気持ち」を交えた挨拶をしましょう。まだよく知らない人とも一気に打ち解けるチャンスです。ここでワンステップ進んでおくと、来年からの仕事はもっと楽しいものになります。
- 「入社してから今日までを振り返ると、この9ケ月間は本当にあっという間でした。すべてが初めてで、最初は不安ばかりでしたが皆様の温かいご指導のおかげで、何とか無事に年末を迎えられたと嬉しく思っております。本当にありがとうございました。」
- 「今年度入社しました山田太郎です。入社した4月から今日まで、たくさんの先輩方からご指導いただき本当にありがとうございます。ここまで来ることができたのは、皆様のお蔭と感謝しております。忘年会に参加させていただくのは初めてです。みなさんのことをもっと知りたいと思いますので、後ほどお席に伺わせていただきたいと思います。仕事も、早く1人立ちできるよう精進して参りますので、どうぞこれからもよろしくお願いします。」
忘年会の幹事や司会などを任命された場合は、大いに張り切りましょう!これは、先輩方も通ってきた道です。仕事に直結しませんが、企業人として大きく成長するチャンスです。
「こういうのは苦手・・・」と言わず「ここ一番の笑いをとってやる!」くらいの意気込みで取り組みましょう。採用してくれた社長、温かく見守ってくれた上司や先輩に対する「感謝の気持ち」を忘れなければ、必ず成功します。
まとめ
筆者の経験です。転職し入社の挨拶をする直前に、以前から闘病中だったOBの「突然の訃報」が発表されました。
ショックを受け、ハンカチで目を押さえる人がいる中で、自分は挨拶をどのようにしたらいいのか正直悩みました。大きな声でハキハキと・・・は控え、簡単な自己紹介と今後の抱負を述べる程度に留めました。あの時は、とてもユーモアをPRするわけにはいかない雰囲気でした。
このように、中途入社の場合は新入社員のような「挨拶の場」を設けられることはなく、朝礼など業務の合間に、普段の生活の中に割り入って挨拶をすることがほとんどです。場を設けられた新入社員の方には、ぜひとも「新たな人生の幕開け」をかみ締めるような、期待に溢れた挨拶をしていただきたいと思います。
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