”恐縮”という言葉、ビジネスシーンなどで聞く機会が多いと思いますが、どのような意味がご存知ですか?なんとなく使われている言葉でも、本当の意味と正しい使い方を誤ると恥ずかしい思いをしかねません。
そこで今回は”恐縮”という言葉の意味や使い方などをご紹介していきたいと思います
”恐縮”の意味とは?
きょう‐しゅく【恐縮】
1, おそれて身がすくむこと。
2, 相手に迷惑をかけたり、相手の厚意を受けたりして申し訳なく思うこと。おそれいること。また、そのさま。「―ですが窓を開けてくださいませんか」「お電話をいただき―しております」
(出典:デジタル大辞典)
というのが、恐縮という言葉の意味になります。恐れて縮こまるという漢字を見てもこのようなイメージが沸きますよね。
枕詞、クッション言葉として使える
その”恐縮”ですが、主に使われるのはビジネスシーンかと思います。
ビジネスシーンでは、言いにくいことを言わなくてはいけない場合多くの場合、直接言うのを避け、オブラートに包んで相手に伝える必要があります。”恐縮”という言葉はそういった場合の枕詞として最適で、角が立ってしまいそうな状況を上手く避けながら、伝えたいことをかんじ悪く思わせずに伝えることができます。まさにクッションのような役割を果たしてくれていますね。こういった言葉を遣うことによって、相手も自分も嫌な思いをせずに意思疎通を図ることができ、ビジネス上の人間関係を円滑にしてくれます。
”恐縮”は枕詞として様々な状況で使える万能の表現でもあるのです。それでは、どのようにして使えるか、使用例を見てみましょう。
込められている気持ち
本来の意味は上述の通りですが、実際のところは、相手から厚意を受けた際などに感謝の気持ちを表す場合や、迷惑をかけて申し訳ないと思う気持ちを分かりやすく表現する時に、この「恐縮」という言葉を使います。
また「お恥ずかしい」といった恥ずかしさや照れなどの意味も含まれており、陳謝や感謝どちらにおいても誠意を表す時によく使い、自分の過ちなどに対して気恥ずかしさを表現する際にも用いる言葉です。
なお、この恐縮の程度は様々となっており、本心から出る謝意や羞恥を表現する場合もあれば、社交辞令的な軽い意味で使われることも多々あります。
”恐縮です”の使用例
それでは、どのようにして使えるか、使用例を見てみましょう。
恐縮を使うのはどんなとき?
- メールで伝えるとき:「メールにて恐縮ですが~」
- 相手に追加で依頼するとき:「重ね重ね恐縮ですが~」
- 自身の私的な状況を話すとき:「私事で恐縮ですが~」
- 相手の提案を断りたいとき:「お誘いいただいておきながら大変恐縮ですが~」
- 相手が訪問してきたとき:「わざわざご足労いただきまして、たいへん恐縮です」
- 感謝の意を伝えたいとき:「お心遣い、恐縮に存じます」
”恐縮です”の類義語
たいへん便利な”恐縮”ですが、一度に何度も使うとボキャブラリーの少ない人と思われてしまう恐れがあるので、同じような表現もご紹介いたします。
- ・恐れ入ります
- ・お手数をおかけいたしますが
- ・たいへん畏れ多いことでございます
パターン別の活用方法
「恐縮」を使った挨拶やお礼は、社会人になると当たり前のように様々なシーンで使うことになります。社交辞令的にも使われることの多いこの言葉を、よくあるフレーズにしてまとめてみます。
このよくあるフレーズをどのように使っていけば口頭でもメールでも正しい使い方ができるのか、把握しておいてください。
■恐縮しております
今般は、並々ならぬご指導をいただきまして大変恐縮しております。
■大変申し訳なく恐縮しております
貴社のご要望にお応えすることができず、大変申し訳なく恐縮しております。
■恐縮至極に存じます
お心遣い、恐縮至極に存じます。
■ご多用中、はなはだ恐縮でございます
ご多用中、はなはだ恐縮でございますが、出席を賜りたくお願い申し上げます。
■ご多忙のところ大変恐縮でございます
ご多忙のところ大変恐縮ではございますが、打ち合わせの時間を取っていただきたくお願い申し上げます。
類後の例
「恐縮です」だけでなく「恐れ入ります」「お手数をおかけしますが」といった言葉も、類義語として使うことができます。
いずれも相手に謙遜な気持ちを表す言葉ですので、それぞれのシーンに応じて使っていきましょう。
■大変恐れ入りますが、納品先を下記に変更していただけますようお願い申し上げます。
■新入社員研修の参加人数が変更になりましたので、大変申し訳ございませんが客室および食事や備品の追加をお願いできますでしょうか。
■この度は弊社の製品をご注文いただき、誠にありがとうございます。大変申し訳ございませんが、お問い合わせの製品は、先月末日をもってご注文の受け付けを終了させていただきました。
■ご親切にお知らせいただき、本当に助かりました。このような不手際に気づかず、まったくお恥ずかしい限りでございます。
■ご丁寧なお祝いを頂戴し、誠にありがとうございます。門外漢の弊社があのような賞をいただくとは想定外の椿事で、まさに身の縮む思いでございます。
上位表現
■恐縮の至り/恐縮の極み/恐縮の限り
「恐縮」の程度が大きいことを表す言葉であり、いずれも「恐縮」の丁寧な表現です。
■恐縮しきり
こちらも「恐縮」の程度が大きいことを表す言葉です。
■恐縮至極
あまりに恐れ多くて身が縮こまってしまうかと思われるさまを表現する言葉です。似た表現に「恐悦至極」があります。例文でも挙げましたが、「お心遣い、恐縮至極に存じます」といった使い方をします。
ただし、上記のような表現はやや堅苦しい印象を与えるため、口語表現やビジネスメールではあまり用いられません。
英語の例文
そもそも英語の場合は日本語と違い、下手に前置きや断りを入れると、相手に自信のない印象を与えてしまいマイナス効果となることがあります。
とはいえ、ビジネスとして丁寧に申し訳ない気持ちを伝えることが大切であること自体は変わりません。
ただし、あからさまに「Sorry」という単語を使うと、やたらと自分の非を認めることになりあまり好ましくない状況にもなり得ますので、「afraid」を使うと良いでしょう。
I am afraid that ~
I am afraid to say that ~
このように使うことで、「丁寧に断る」ということが可能です。
◆例文:I am afraid that I am not able to take your offer.
⇒大変恐縮ですが、あなたのオファーを受けることはできません。
「お忙しいところ」とセットでの使用について
「恐縮」という言葉は、ビジネスメールで仕事や問い合わせに対しての返事をお願いする時など、取引先などの相手方に手数をかけることを依頼する場面で、「お忙しいところ」という慣用句とセットで使用することも多いです。
使い方や場面
例えば、こちらから送付した書類の確認をお願いする場合、「お忙しいところ誠に恐縮ではございますが、先日当方から送付いたしました書類はご確認いただけましたでしょうか」といった使い方になります。
「お忙しいところ」という慣用句をビジネスシーンで使う場面は多くの場合、こちらの事情により確認をしたり依頼をする時となります。このような場面ではいきなり用件を切り出すのではなく、まず最初に「お忙しいところ」とお断りをしてから用件を伝え、メールの文末で「よろしくお願いいたします」といった言葉で締めくくるようにしましょう。
セットでの例文(類義語含む)
■ご多忙中、お手数をおかけいたしますが ~
■ご多忙中のところ、誠に恐縮ではございますが ~
■ご多用中、大変恐縮でございますが ~
■ご多忙のところ、誠に恐縮ですが ~
■ご多忙の折、お手数をおかけして恐縮ではございますが ~
■ご多忙のところ、お手数をおかけいたしますが ~
■ご多忙中とは存じ上げますが ~
相手に指図をしないように!
慣用句とセットで伝える際、相手に指図をしないように気をつけましょう。
例えば「早めのお返事、お待ちしております」というような言い方は、忙しいと分かっていながらも相手に「早く返信してくれ」と指図していることになるため、マナーとしてもNGとなります。
逆に「このメールへの返信は必要ありません」といった書き方も相手の行動を制限していることになるため、同じくNGです。
他にもビジネスで使える表現
”恐縮”はとても便利な表現ですね。
こういった言葉は上手く活用できれば直接的な表現を避けて、丁寧で優しい印象を相手に与えることができます。異論を唱えたり、否定的な言葉を言う際にも、相手に失礼にならずに伝える事が出来るので知っておくと大変役に立ちます。
他にもこういったクッションのような役割をする表現がたくさんあるので、この際一緒に覚えてしまいましょう。
よく使われる表現
- 申し訳ございませんが
- 失礼ですが
- 早速ですが
- あいにくですが
- もしよろしければ
- 申し上げにくいのですが
- 今、よろしいですが?
- 差支えなければ
- できましたら
- お手数おかけしますが
異論を唱えたいときに使える表現
- お言葉を返すようですが
- 確かにその通りではございますが
- おっしゃることはわかりますが
断りをいれたいときに使える表現
- 申し訳ございませんが
- 身に余るお言葉ですが
- 残念ながら
- せっかくですが
- ありがたいお話ではありますが
- 失礼とは存じますが
- 大変残念ですが
- 申し上げにくいのですが
- 私どもの力不足で申し訳ございませんが
- ご期待に添えず大変申し訳ございませんが
その他の状況で使える表現
- あいにくですが
- おかげさまで
- 誠に勝手ながら
- 僭越ながら
- 浅学非才の身にございますが
ビジネスで知ってたらできる人と思われる表現
今日ご紹介したような表現をさらっと使えると、「できる人」という印象を与えることができます。言葉遣いひとつで、印象というものは大きく変わります。同じことを言っていても、言われた方の感じ方が大きく異なるので、相手がいるビジネスでは、こういった言葉遣いなどのささいなところが重要になってきます。
では、最後に知ってると好感度も上がる言葉づかいをいくつかご紹介したいと思います。
「お」や「ご」を名刺に付ける
名詞に「お」や「ご」をつけると、より丁寧な言い方になります。この「お」や「ご」は美化語といい、きれいな言い方をしたいときに使えます。
使用することによって、「言葉遣いがきれい」という印象を持たれますが、逆に、「左遷」や「離婚」など、悪い意味である言葉に仕様してしまうと逆にイメージを悪くしてしまうので注意が必要です。
申し訳ございません以外に使える言葉
自分がミスをしたりした場合、「申し訳ございません」が一番簡単で便利な言葉ですが、他にも使える表現や、場合によっては「申し訳ございません」よりも良い印象を与えることができる表現もあります。
- 「忘れていました」→「失念しておりました」
- 「つい、口が滑ってしまいました」→「思慮の足りないことを申しました」
- 「わかりません」→「すぐに調べて参ります」
などなど。わからないとき謝るだけでなく「調べてまいります」という言葉を入れればやる気や熱意を加えることができますよね。こういったひと工夫があるのとないのでは大きく印象が異なるのがわかります。
結論から話す
仕事で行う会話においては、まず「結論」を述べておいて、その後、質問や疑問を聞かれた際に、必要な説明を加えるのが良いでしょう。
ビジネスにおける会話では、まず先に「結論」を述べ、質問を受けた場合など必要に応じてその理由や詳細などを補足すると良いでしょう。
女性は特に論理的に話すのが苦手だと言われていますが、思い付いた順に話し続けたり、結論を後回しにして説明を交えながらの会話では、何を伝えようとしているのがわかいにくいのです。結論を先に述べておけば聞き手も話の内容が理解しやすくなるでしょう。
6W2Hを考えて話すとわかりやすい
6W2Hとは以下のこと。
- When いつ
- Where どこで
- Who 誰が
- What 何を
- Whom 誰に
- Why 何のなために
- How どのように
- How much いくら
会話をする際には、この「6W2H」を意識するだけで、相手に簡潔にわかりやすく伝えることができます。ただ結論だけの報告ですと、不十分な説明になってしまうので、6W2Hを使って話す練習をしてみましょう。
一方的に話さない
ビジネスにおいては、聞き手がこちらの話を積極的に聞き入れてくれるとは限りません。
こちら側の意見を一方的に話すのは避けましょう。話している時も相手の反応やリアクションを観察しながら会話を進める必要があります。
依頼する時は疑問形にする
ビジネスシーンでは、社内外の人に何かを依頼する場合が多くあります。普段であれば「書いてください」「待ってください」と表現するところですが、ビジネスにおいては、こういった命令形の言葉は、一方的で反発を抱かれやすいのも事実です。特に上司や得意先、お客様は、「君は私に命令しているのか」と不満を抱きかねません。
そこで、「ご記入いただけますか?」「少々お待ちいただけますか?」といった疑問形の敬語に変えてみると印象がかなり違います。
語尾が疑問形になることで、会話の相手の意見を伺おうとしているのがみえるので、相手は嫌な気持ちになりにくいのです。同じ内容を伝えるのでも、与える印象が格段に良くなりますので覚えておくととても便利です。
つい出てしまうその口癖も
- 「えーとですね」
- 「やっぱ」
- 「~じゃないですか?」
- 「○○的には」
- 「マジっすか?」
- 「~みたいな」
- 「~というか、~ってゆうか」
- 「~とか」
- 「~だったりして」
こういった口癖、仕事の際もつい使っていませんか?これらを使っても、良くない印象を与えるとまではいきませんが、「できる人」には見えないでしょう。もし使っている自分に気付いたら、意識して直していくと良いでしょう。
メールでのコミュニケーションではタイトルに気を付ける
メールで報告や連絡をする場合には、まずはタイトルに気を付けましょう。わかりにくいタイトルにしたり、CCに設定すると相手に開いてもらえないということもありえます。メールの場合は一目でわかるタイトルにすることが重要で、大切な案件は確認の返信をしてもらうようにするとメールでのコミュニケーションによる漏れを防ぐことができます。
メールでのコミュニケーションも発信するだけでなく、相手の反応を確認することによって一回りと考えます。「メールをお送りしたので伝わっているはず」というのは相手からしてみれば言い訳に聞こえますので、重要なことは確認を忘れないようにしましょう。
さらに、口頭でのやり取りを記録に残すために、メールを仕様する方法があります。込み入ったことや、伝えたいことを記録として残したい場合には「念のため、メールも送っておきます」と伝えれば失礼になりませんし、自分も安心です。言った言わないの問題の防止のためにも覚えておくと便利です。
気遣いの言葉をプラスする
「このように無事にこのプロジェクトを終了できたのも、○×さんおのご指導のおかげです」
「○○先輩のお力があったこその結果です」
など、気遣いの一言を最後に付け加えてみると良い印象を残せます。仕事ができる人という印象を持たれるだけでなく、より良い人間関係を構築することができます。
まとめ
いかがでしたか?「恐縮」はビジネスやきちんとした場においては、非常に便利な言葉ですよね。こういった表現を知っているだけで、「きちんとした人」という印象を残せるので、この際覚えてしまうと良いですね。
また、言葉遣いやちょっとした配慮に気を付ければ意外と簡単に「できる人」という印象を与えることができます。仕事における実力ももちろん大切ですが、こういったちょっとしたことに気を付けるだけで印象がアップするのであればやらない手はないですね!