感謝の気持ちを伝えてもらった後に何か一言添えたいけれど、その時に「どういたしまして」と答えることに少しの違和感がある人もいるでしょう。
どんな風に答えるのが正解なのか、そこには日本語ならではの奥ゆかしさが隠れていました。
目次
ありがとうへの返事は、どういたしまして?
日常会話の中でかなりの頻度で登場してくるのが「ありがとう」という言葉ですよね。それに更に返事するには何と答えたら良いでしょうか。定番は「どういたしまして」と答えるような気がしますが、会話の流れや文脈から考えると、どうしてもおかしいなと感じることもあるでしょう。
何かしてもらったり、贈り物をもらった時には自然と口から「ありがとう」という言葉が出ますが、ありがとうという言葉自体にお礼をしたい時には、「どういたしまして」が適しているのでしょうか。「ありがとう」というお礼の返事も大切なマナーなので、覚えておきましょう。
ありがとうへの返事は、素直に伝えよう
感謝の気持ちを伝えたら、感謝されたことに対して、更に感謝を積み重ねるのもなにかしっくりきませんよね。相手に何かをしてもらった時の返事として用いられる「どういたしまして」は、お礼に対してのお礼です。「どういたしまして」の本来の意味合いは、相手にしてもらった行為に対しての感謝や、お礼を伝える意味があります。
友達や職場の同僚などの立場が近い人なら、何も考えずに使いたくなります。でも相手が目上の方であったり、上司にあたる方なら気安く返事もしにくくなります。もしありがとうと言われたら何と返したら失礼にあたらないのか、返事に詰まってしまう場合も多いかもしれません。
考えすぎるとわからなくなる日本語は、深く考え過ぎないでおきましょう。
目上の方に言うことに抵抗を感じる
自分よりも明らかに目上の人や上司・先輩から感謝の気持ちとして、「ありがとう」と言われて、何も言わずに黙っているのは難しいですよね。だとしてもそのお礼の返事として「どういたしまして」という返し方は失礼に感じてしまいます。
それは上から目線に言っているように聞こえるからです。「どういたしまして」とお礼の返事をするのは、偉そうな印象を与えてしまい、他にふさわしい言葉を探してしまいます。
どういたしましての本来の意味
相手の感謝を丁寧に否定する言葉
そもそも、「どういたしまして」はどういった言葉なのでしょうか。
漢字では「如何致しまして」と書きます。相手の感謝や詫びの言葉に対して向ける言葉で、あなたが感謝をしたり、詫びるほどのことは何もしていませんよ、といった意味がこもっています。相手が感謝したことを丁寧に否定する言葉として使われます。
例えば「先日は失礼しました」という相手が詫びて、「どういたしまして」と返す場合はどんな意味合いになるのでしょうか。この場合は「私はあなたにどのようなことをしてさしあげたでしょうか」や、「たいしてことはしていません」といった意味の言葉になります。
でもちょっと違和感があるなと思うのであれば、「とんでもない」といった言葉を選ぶ人もいます。これは相手の感謝や詫びを否定する言葉で、より強い否定の意見を表します。
感謝の気持ちを表現する方はマナー的にはいいとされるものの、それをそのままにせず、大したことをしていないですよという配慮の気持ちまで伝える、この一連の流れもマナーになっています。うんざりするかもしれませんが、これが出来て社会人のマナーなので、省くことは出来ません。
目上の人への「どういたしまして」はNG
感謝の言葉に後に「どういたしまして」と伝えればいいかというと、必ずしもそうでない場合もあります。それは目上の人にいう場合です。なぜかというと、「どういたしまして」は「大したことはありません」と同義語だからです。
そのまま使ってしまうと、その言葉の中に「適当に対応したまでですから、お気になさらなくとも」という意味合いが含まれてしまいます。上司に対して、上目線物を言っている印象を与えてしまいますよね。決まりの挨拶というわけではなく、相手に応じて変えなければならないのです。上司や先輩などの目上の人に対して返事をする言葉として不適切なので、使わないようにしましょう。
参考記事:「どういたしまして」はNG?「ありがとう」への敬語マナー
「どういたしまして」以外の適切な返事は?
目上の方に使いたいお礼の返事は?
それではどんな言葉を使って返事をすれば正解なのでしょうか。あくまで謙遜した表現が求められるので、無難なのは「感謝をされるなんてとんでもないです。力になれて私も嬉しいです」といったニュアンスのものが好まれます。
例えば「とんでもございません。お役に立てればうれしいです」や「喜んでいただけて幸いです」、「お役に立てて幸せです」といったあたりなら、決まったフレーズであっても良い人の印象を受けますよね。またお願いしようという気持ちにさせてくれる言葉です。
当たり前のことをしたまでだという意味合いで伝えるなら、「そんなに言われると恐縮です」や「またいつでも仰って下さい」といったところが適切です。
もっと手伝うことはないか、と支える姿勢を見せるのであれば「お手伝いできてよかったです。」や「他にもお手伝いできることがあれば、お申し付けください」がいいでしょう。上司が声をかけやすく、使いやすい人材だと認識してくれます。
基本的には目上の人には謙遜して、なおかつ丁寧な表現でいきたいです。でも仲の良い人だと逆に他人行儀に感じられてしまいます。相手とどのくらい親密なのかも見ていきたいです。
目上の人と関係が親しいのであれば、「どういたしまして」でもOK!
目上の人であっても、仲が良くて、相手もあなたに親しみを感じている場合であれば「どういたしまして」という表現もありです。すべての場合でNGというわけではなく、親しい間柄であれば「どういたしまして」でもマナー違反ではなくなります。
相手の立場と心の距離感を見て、何という言葉をかけていけばいいのかを見ていきます。また同じ言葉を伝えるのでも、軽く明るく言うのと、本当に恐縮をしたような面持ちで、おじぎをしながら言う感じなのでは全く受け取る印象も変わってきますよね。
言葉選びは、臨機応変に表現をつけながらすると、相手との関係にしっくり合ったものが見つかりやすくなります。
まずは相手との距離感を掴もう
言葉より人間関係を進展させよう
上司や先輩といった目上の人に対して親しさを持って接したいと思っているのなら、言葉から「どういたしまして」と縮めていくのは不正解です。人間関係あっての言葉の選び方があるという順番は入れ替えてはいけません。仲の良い親しみを込めて使いたいのなら、上司との関係を縮めていきましょう。
一気に縮めると、相手が警戒をする場合もあるので、頻繁に話しかけたり、笑顔で接したり、褒め言葉やプライドをくすぐるような発言をしましょう。あなたがまず相手を認めているという態度を十分というほどに出すことで、相手もあなたのことを認めようという気持ちになります。その間はあくまで礼儀正しくしておくことも大事です。
相手の性格も見る
上司によっては親しくても、礼儀正しく固めの言葉を用いてほしいと思っている場合もあります。上下関係を崩したくないと思っていそうな場合は、相手がOKと言うまで丁寧な言葉を心がけましょう。普段上司とどんな関係で接しているのかを考え、どうやって上司との距離感を掴むのが先決です。単純なようで、その言葉にはいろんな人間関係模様が現れてきます。
結局は「ありがとう」に対して「どういたしまして」というお礼の返事の言葉を使うかどうかというよりも、上司とどのような関係なのか、ということにフォーカスを置くことの方が大切になります。どのようなニュアンスで伝えるのかということが、コミュニケーションとしては大きくなってきます。
他の国ではどうしてる?
気になるのは、日本だけがこの「どういたしまして」にこだわった文化なのではないかという疑問です。国や文化によっても、ありがとうと感謝された後に何と言えばいいかは異なってきます。
それは普段どういった姿勢で過ごしているのか、他人に役立てることや感謝サれることに対して、どう思うのが普通だとされているのかが重要になってきます。まずは英語から見ていきましょう。
英語では何て返事する?
英語でどういたしましてはYour’re welcomeなのではないかと思ってしまいますよね。これが一般的な表現なのではないかと、認識している人も多いはず。でもどういたしましての伝え方は、英語で他にも沢山あります。状況に応じて使い分けれることで、英語力が格段に伸びます。
英語の場合は、使う場所や使う相手によって、色々な表現が使い分けられます。大きく分けて3つのバリエーションがあります。
丁寧などういたしまして
ゲストや知らない人、初対面の人と話す時に、日本語でも敬語を使うように、英語でも丁寧な表現を覚えておく必要があります。初対面なのにラフでカジュアルな表現を使われると、よく思わない人がいるのも事実です。
Thank you for your time.(お忙しいところありがとうございました。)
My pleasure / It was my pleasure.(どういたしまして)
My pleasureやit was my pleasureといった表現は直訳すると「それは私の喜びでした」となり、それが和訳になっています。他にも「それは何でもありません」という直訳の「It’s nothing.」です。日本語の「礼には及びません」といった雰囲気です。表現の仕方が日英で似ていますね。
カジュアルなどういたしまして
友人や親しい人に使う場合は、感謝の気持ちのお礼は必要ないという意味で使う、「No problem」で、カジュアルな「どういたしまして」になります。
I’m sorryに対する返答としても良く使われます。
Thank you.
No problem.
これを短縮して、更にカジュアルにしたNo prob /やNo probsという表現もあります。仲の良さがわかりますよね。
まとめ
感謝されて一概に「どういたしまして」と言えない複雑さがあります。相手との関係性によってどう使っていくかを考えていきたいですね。