「申す」「申し上げる」という言葉。ビジネスシーンや目上の人との会話ではよく使用される言葉です。
お店などで買い物や契約などをしている時に相手側が使用していることを聞いたことがあると思いますので、そこまで不自由なく使用できるかと思います。
しかし雰囲気で使用していると誤った使用方法で相手に不快な思いをさせてしまう可能性があります。
ただの敬語だと思って使用していると敬意がないと思われてしまいますので注意しましょう。
ここでは特に間違えられやすい4つのシーンの紹介と、「申す」「申し上げる」の正しい使用方法について紹介していきます。
「申す」「申し上げる」について
敬語と一口に言ってもさらに細分化すると尊敬語、丁寧語(丁重語)、謙譲語に分けられます。
「申す」はその中でも謙譲語に分類される言葉です。これらの詳しい内容について紹介していきます。
「申す」「申し上げる」は謙譲語
「申す」は敬語の中でも謙譲語Ⅱにあたる言葉です。「申し上げる」は謙譲語Ⅰに分類される言葉です。
「話す」「言う」などの言葉の謙譲語という認識が正しいでしょう。
「申す」の謙譲語Ⅱは丁寧な言い方で述べることで相手を上位に持ち上げる言い回し。
「申し上げる」の謙譲語Ⅰは、自分がへりくだることで相手を上位に持ち上げる表現という意味合いがあります。
なので基本的には自分の行動を示す場合に使用されますが、取引先や上司などの行動を述べる場合には使用することができません。
「申す」「申し上げる」の同義語
「申す」「申し上げる」の同義語について紹介します。語彙力を増やして異なるシーンでの使い分けができるようになりましょう。
- 弁ずる
- 語る
- 言い表す
- 表明
- 提唱
- おっしゃる
- 仰せられる
- 申し述べる
などが類義語として挙げられます。会社でのスピーチ、会社外でのスピーチでも使い分けができますし、飲みの席での会話や取引先の会社での会話の中でも使い分けができるでしょう。
「申す」の間違った使用シーン4つ
全く敬語や謙譲語などを使用しなかった学生時代から急に社会人になった時に雰囲気で言葉を使用していると、細かい間違いをしてしまうことが多々あります。
中には誰にも指摘されない環境で月日を過ごしてしまったばかりに、役員のクラスになっても間違ったままの人も・・・そうなってしまってはもう誰も修正することはできません。一生地味に失礼な言葉を使い続けてしまうことになりかねません。
特に間違えやすい3つのシーンを紹介しますのでぜひ参考にして正しい使用方法を覚えてください。
社長が申し上げた通りです
「申し上げる」は謙譲語Ⅰに当たる言葉です。
対象がへりくだって相手を上位に持ち上げる敬語の類なので、それを「社長が申し上げた通りです」と言ってしまうと、「社長がへりくだって言った通りです」という意味になってしまいます。
なのでこれは明らかな間違った使用例。かしこまった雰囲気で対面して話している中ではそれなりに意味はごまかせますが電話などで声のみの通話をしている場合には非常に無礼な言葉使いになってしまいます。
なのでこの場合”申し上げた通りです”は”おっしゃる通りです”に変換することが適切でしょう。
主語が”私が”ですと「私が申し上げた通りです」となりこれは正しい使い方になります。
もし上司の発言に対して「申す」を使用する場合は「社長がお申し付けくださいました通りでございます」「社長からのお申し付けでありましたら喜んでお受けいたします」などでもいいでしょう。
「申付ける」には命令や指示するという意味があります。頭に”お”を語尾に”ございます”をつけると非常に丁寧な言葉としてより相手を敬う意味合いが強くなるので上司のランクやその場の雰囲気によって使い分けるといいでしょう。
先ほどお客様が申しました通り
接客のシーンでよく聞かれるこの言葉も間違いです。
”お客様”と言っている割には”申しました通り”と相手がへりくだって発言している様になっています。これでは言葉の文章に違和感が生じます。
この場合の正解も上記と同様に「お客様がおっしゃいました通り」「お客様にお申し付けいただいた通り」ということが自然です。
”おっしゃる”は”言う”の尊敬語です。尊敬語は存在、行為、状態など対象に対して話してが言葉に相手への敬意を持たせている言葉です。
上の者に申し上げておきます
相手の発言や提案を上司に伝える場合に「部長に申し上げておきます」と言ってしまうのも間違った使い方です。
正しく言い直すとすれば「部長に申し伝えておきます」となります。
取引先の相手の提言を引き継ぐ場合は「おっしゃいました内容を早急に上司にお伝えしておきます」や「申し伝えておきます」と表現しましょう。
社内の人間の意見を取引先の人に伝える時は「部長が申しておりました」と社内の人間は下げて社外の人に敬意を示すようにすることが適切です。
と、申しますと?
相手の話の相槌の中で「と、申しますと?」と話の内容を振り返るシーンがあると思います。これも間違った使い方です。
この場合も正しい使い方としては「と、おっしゃいますと?」と言った方が相手に対して敬意を示す表現となるでしょう。
「申し上げます」の例文
社会人になると増えるのがビジネス的な堅苦しいメールや暑中見舞いなどでの簡単な文章での挨拶。
そんなシーンでも「申し上げます」というキーワードが出てきます。この場合の使用方法について例文を交えて紹介していきます。
「申し上げます」と「致します」の違いは?
文章の最後の締めの言葉として「よろしくお願いします」と綴る時、「よろしくお願い申し上げます」と「よろしくお願い致します」という二つの言葉の選択ができると思います。
それぞれの意味について紹介すると、まず両方とも謙譲表現の類になります。その上で「致します」は万能的にあらゆるシーンで使用できるのに対して、「申し上げます」は相手にとってマイナス要素を含む内容の場合には使用でない言葉となります。
例えば「ご迷惑をおかけ申し上げます」「失礼申し上げます」などは適切ではないでしょう。意味として「迷惑をかけさせていただきます」となってしまうのでNGです。
しかし、飲み込みづらい条件を相手に飲み込んでもらった場合に対して「失礼申し上げましたお詫びとして」と表現するのはOKです。
例文色々
「申し上げます」を使用した例文をいくつか紹介していきます。
文面を作るときの参考にしてみてください。
感謝申し上げます
「この度は弊社のイベントにご参加いただき深く感謝申し上げます。」
「深く感謝申し上げます」の他にも、「誠に感謝申し上げます」や「心より感謝いたします」などと表現してもいいでしょう。
まことにをひらがなで書くこともできます。決して誤りではありませんが、全てひらがなだと砕けすぎる文章になってしまうため、”誠”の漢字を使用することが適切でしょう。
御礼申し上げます
「この度はこのような素敵な席をご用意いただいたこと深く御礼申し上げます。」
スピーチや文章などでの活用が可能な表現です。文末に使用するのではなく、初めに持ってくる文章として適しているので、覚えておきましょう。
申し上げますという表現はあまり繰り返すとくどくなってしまう言葉ですので、その場合には文末の感謝の言葉は申し上げますではなく、「よろしくお願い致します」や「誠にありがとうございました」などのシンプルな形で言葉を変えた方がまとまりやすくなるでしょう。
謹んでお知らせ申し上げます
「ようやく挙式の日取りが決まりましたことを、ここに謹んでお知らせ申し上げます。」
お知らせを自分が相手に申し上げるということですので正しい使い方です。
結婚式の挙式やパーティーの連絡や葬式の知らせなどの際に「謹んでご報告いたします」や「謹んでご通知いたします」などというふうに言い換えることもできます。
まとめ
「申し上げます」は自分がへりくだって相手に対して何かを言う時や報告をする際に使用する言葉。
言葉自体が向かう方向にいる人物を立てる言葉になります。「お客様が申されましたのは〜」を例にするとお客様が→自分に言ったですので自分で自分のことを立てている表現になってしまいます。
そうならないようにこの場合はおっしゃるという表現をして話をするようにしましょう。
ビジネストークと手紙やメールなどでのビジネスシーンでも間違った表現で相手に不快な思いをさせないように注意しましょう。
関連記事としてこちらの記事も合わせて参考にしてみてください。