「自己研鑽」という言葉を聞いたことがありますか?
「自己研鑽」は「じこけんさん」と読み、自分自身のスキルや能力などを鍛え、磨きをかけることです。
「研」には“物の道理を調べる、究める”という意味があり、また「鑽」も“物事を深く究める”という意味があります。つまり、この2つの字が組み合わさっているということは、“物事を調べ、深く究める”といった意味合いになっていますので、なんとなくイメージが湧いてくるでしょう。
ここでは、似たようなイメージを持ちがちな「自己啓発」との違いを確認してから、効率的に自己研鑽をしていけるように、ビジネス的な視点から解説をしていきます。
「自己啓発」との違い
まずは「自己研鑽」を正しく理解するために、類似したイメージの言葉である「自己啓発」との違いを確認していきましょう。
冒頭でお伝えした通り、「自己研鑽」は、自分が持っているスキルや能力などを鍛えて磨きをかける、つまり知識を深めていきながら技術を高めていくといった意味となっています。自己研鑽を行うことによって、得意な分野の能力を伸ばしていったり、苦手な分野を少なくしていくことができるのです。
では「自己啓発」は、どういったことなのでしょうか。
自己啓発は「意識の改革」
自己啓発も自己研鑽と同様に、自分自身を高めていくという意味を持っています。
ただし自己啓発の主旨は、どういった目的を持って能力の向上を目指していくのかや、どのような理由から技術の改善を図っていくのかという意識を持った上で取り組んでいくことにあります。よって自己啓発は、意識の改革という部分に重点が置かれているわけです。
直接「結果」が出るものではない
よく、書店などに自己啓発本が並んでいますよね。また、起業や独立を目指す人向けに自己啓発セミナーがあちこちで開催されています。ところがこういった自己啓発というものは、心の持ち方や意識の変化、モチベーション向上などを図るものです。意識や考え方について改めようとしたり、講師などから学ぶことによって「気持ちの向上」に目を向けていくこと自体が自己啓発のため、直接的に何か結果が出るとは限りません。
誰か成功している人から話を聞いたり、その人の本を読むことによって心を打たれて気持ちが一時的に高ぶり、「そういうことか!よし、私も今からそういう意識で頑張ろう!」と意気込んだものの、その後に目に見える成長などがなかった…という経験、あなたもありませんか?
このように、自己啓発は一時的な自己満足や「つもり」で終わってしまうことがあるのです。
自己啓発後は自己研鑽を!
とはいえ、自己啓発自体に意味がないということではありません。むしろ、意識を改革することはとても大切なものであり、「気持ちの切り替え」や「視野を広げる」といった意味では、大事な要素であると言えるでしょう。
ただ、それ「だけ」で終わってしまっては意味がないということです。自己啓発によって意識の変化を図ったのであれば、次はそれを持って「結果」「成果」を現実に出していくために、自己研鑽が大事な行動となってきます。
自己啓発によってどんなに意識を前向きに変革させようとも、気持ちだけ前のめりになってしまって、成長した「つもり」で済ませてしまってはただの自己満足にしかなりません。
しっかりと行動に移し、確かな結果を出していくためにも、自己研鑽が大切なものとなるのです。
自己研鑽「だけ」では非効率
では逆に、自己研鑽さえ徹底すれば、自己啓発は不要なのでしょうか。いいえ、そういうわけではありません。
闇雲に自己研鑽を始めて取り組んていったとしても、やはり、その研鑽を行うにあたっての根拠や理由などが明確でないと、継続していくことが難しくなるだけでなく達成感が満足に得られなくなってしまう可能性があります。そうなっては、せっかくの自己研鑽も意味がなくなってしまうでしょう。
まずは、どのような理由から、どういった目的を持って能力の向上を目指していくのかということを自己啓発によって明確化して意識を変化させましょう。そして、そこからその実現化のために自己研鑽をしていくことで、効率的な自己改革を実現することができるのです。
目標を数値化する
自己啓発と自己研鑽を効率的に実施していく際には、目で見て確かな進捗や目標達成度が分かるように目標を数値化することが大切になってきます。
数値で示すことによって、より指標が具体化され、今どのような状態になっているのかを把握することができ、そこからそのまま継続していくのか、別の方法を取り入れてみるのかなどの改善を図っていくことができるのです。
効果的な自己研鑽とは?
前項では、自己啓発と自己研鑽の違いや効率的な組み合わせ方について説明しました。
それではここからビジネス向けとして、新社会人における効果的な自己研鑽の方法について、より具体的な解説をしていきたいと思います。
社会で活躍されているビジネスパーソンの内、特に30代~40代の人たちの多くは、20代の頃から自己研鑽を実践してきていると云われています。
通勤時間、休憩時間、就寝する前や休日など、空き時間を無駄に過ごすことなく自己の能力向上にあてている人たちは、それだけの結果を出せてきているのです。
正しい方向性
『自己研鑽「だけ」では非効率』の項目でもお伝えしましたが、やはり闇雲に自己研鑽に取り組んでいるだけでは、効果的とは言えません。まずは目的意識を明確化させるために、自己啓発を行いましょう。もちろん、本を買うとかセミナーに参加することが必須という意味ではありません。どういった理由から、何の目的があって自己研鑽をするのかという方向性をしっかり考えて認識するということです。そうすることで、実際に物事を学んでいく時に効果が高まってくるのです。
新社会人になりたての時は、仕事をしながら実践で学んでいくことと、自己研鑽における目標や内容が統一しており、リンクしている状態が望ましく、効率的であると言えるでしょう。最初から別々の目標を設定して取り組んでしまうと「二兎を追う者は一兎をも得ず」になり、どちらも上手くいかなくなってしまう恐れがあります。そのため、まずは目の前にある自分が習得すべき業務に基づいて、自分の能力向上に努めるようにした方が良いと思います。
社会人として経験をある程度積み、日々の業務を円滑にこなすことができるようになってきたならば、別の目標を掲げて自己研鑽に取り組んでいくことで、スキルアップも効果的に行えるはずです。
くれぐれも注意したいのは、「あれもこれも」と様々なことに見境なく手を出し、どれも結局途中でやめてしまい、何もかも中途半端…という状態になってしまうことです。また、「今の仕事が嫌だから」という理由で、まったく業務には関連性のない事柄に集中して学習するといったことも「自己研鑽」としては無意味なものになってしまうので、気をつけましょう。
もし、自己研鑽に意欲があるものの具体的に何をしていけば良いか分からないという状態ならば、目標とする先輩などにアドバイスを求めてみるのも良いと思います。
観察学習と自己分析
方向性を定めたら、次は具体的な実践方法を考えていきましょう。
方法自体は色々ありますが、効果的なものの一つに「観察学習」というものがあります。
観察学習とは、「モデルとする他者の良い行動を観察して真似ることによって、その行動を習得する」という方法です。いわゆる「模倣」となりますが、モデルとなる他者の行動が実際に、その相手となる人物たちにどういった影響を与えたのかということをきちんと考えてみることが大切となります。
なぜなら、そのモデルの良かった点や秀でている部分がどこにあって、それがどのように望ましい結果を得ることができたのかということを理解できないのであれば、自身が「習得」して「再現」することが困難であるからです。
効果的な模倣(観察学習)をするには、モデルがその行動によってもたらした結果と根拠を考え、それを自分に当てはめながらイメージしていくことが重要です。上司や先輩と共に業務にあたる場合は、このように観察学習を行うチャンスだという認識をもって取り組むようにしましょう。
また、自分の思考や行動そのものを客観的に把握して認識することも、自己研鑽においてはとても大事なものです。何気なく仕事や生活をしていると、周りや相手のことばかり目についたり評価してしまうものですが、客観的な視点から自己評価を行い、良い点や改善点を冷静に分析することで、自身も納得しながら効果的なスキルアップを図っていくことができるのです。
実践と継続
方向性を定め、効果的な方法をもって取り組んでいく具体的な計画が立てられたら、いよいよ実践していきましょう。
何事もそうですが、理想やイメージを抱いたり、計画を立てるだけで終わってしまっては、残念ながら成果は出せません。言わずもがな、大事なのは「実践」することです。そして、それを根気良く「継続」していくことがポイントとなります。
取り組み始めてすぐに目に見える効果が出るとは限りません。焦らず、慌てず、諦めず、根気良く継続的に実践していくことで、その後の結果が変わってくるのです。もちろん、その中で今の手法が非効率だということが明らかになれば、やり方を見直して改善する場面も出てくるでしょう。そういったことも含めての「継続的な実践」が重要です。
「石の上にも3年」ということわざもある通り、自己研鑽、つまり「深く究める」ためには、それだけの時間を要するのは当然のことです。簡単に達成できるようなものであれば、それは真の「能力向上」とは言えないでしょう。(※目的に至るまでの短期的な目標は除きます)
まとめ
自分自身の能力向上を図る「自己研鑽」についての概要、「自己啓発」との違い、そして具体的な自己研鑽の流れやポイントまでお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
いくつかキーとなる言葉を出してきましたが、もしあなたが自己研鑽に取り組むのであれば、忘れないでいただきたいのは「明確」「実践」「継続」という3つの要素です。
明確な目的をもって効果的に実践していき継続すること。これ無くして、自己研鑽はあり得ません。自身が納得して、喜びを得ながら実践していき、しっかりと目的を達成するためにも、効率的に進めながら取り組んでいきましょう!!