懲戒免職とは?そうなる条件やデメリット、解雇の種類を知ろう!

犯罪

勤めている会社で重大なミスをしてしまったり、規則違反をすることなどにより大きな迷惑をかけてしまうと、「懲戒解雇」(ちょうかいかいこ)という重い処分になってしまうことも…。

公務員の場合には「懲戒免職」(ちょうかいめんしょく)という言葉になりますが、どちらも、労働者に与える罰則における解雇の中でも最も重いものになります。

そもそも会社は、容易に労働者を解雇することはできません。よく「お前はクビだ!」なんていうセリフをフィクションなどで見聞きすることがあると思いますが、実際にはそんな簡単にできるものではないのです。いくつも条件があり、解雇日の30日より前に予告をしなければならないといった決まりもあります。

しかし、この通常の解雇より遥かに重い罰則が「懲戒解雇」です。よって懲戒解雇となる人は、それほど大きな不祥事などを起こしたということになります。

ここでは、この懲戒解雇というものの概要や基準について詳しく説明していきます。

解雇の種類

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「解雇」には、大別して3種類あります。「懲戒解雇」は前述した通り最も重いものとなっていますが、まずはそれぞれの解雇について簡単に紹介しましょう。

普通解雇

会社ごとの就業規則に定められている、解雇の自由にあたる事実があった場合に行われる解雇です。

規定として存在していることはもちろん、客観的で合理的な理由があれば施行することができます。

整理解雇

経営が傾いているなど、経営上の事情によって人員の削減が必要とされた場合に実施される「リストラ」のことです。

むやみやたらと施行することはできませんが、経営が危機的状況である、解雇に至るまでに他の努力をしてきた、労働者に充分に誠実な説明をした上で納得が得られるよう尽力したといった要件を満たすことで、行うことができるものとなっています。

懲戒解雇

極めて重い懲戒処分が科された際に実施される解雇です。

普通解雇は「30日前までに予告する」または「平均賃金の30日分を予告手当として支払う」といった決まりがありますが、この懲戒解雇の場合は即日解雇するのが一般的です。
加えて、退職金の支給がなかったり減額されたりといったこともあります。

懲戒解雇の特徴

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前項で少し触れましたが、懲戒解雇における最も大きな特徴の一つは、「解雇予告をせずに解雇することが可能」というところになります。

おそしてもう一つは、退職金が普通解雇や整理解雇のように支払われないということです。
とても簡単な表現をするならば、普通解雇は「来月をもってクビだが、退職金は払うよ」といったものであるのに対し、懲戒解雇は「お前はクビだ!退職金も出さない!」といった極めて厳しいものであるわけです。

ただし、だからと言って懲戒解雇にもしっかりと決まりがあり、それに準じていなければ不当解雇となってしまいます。それぞれの特徴と決まりごとについて、具体的に見ていきましょう。

解雇予告除外認定

解雇予告をせずに懲戒解雇を実施するためには、「解雇予告除外認定」というものを労働基準監督署に申請し、許可を得る必要があります。ここで許可が下りることで、即時の解雇が可能となるのです。

大まかな流れは、『懲戒解雇事由にあたるトラブルの発生⇒会社内にて審議⇒労働基準監督署に「解雇予告除外認定」の申請⇒労働基準監督署から許可⇒懲戒解雇の施行』となり、申請してから許可が下りるまでに約1週間ほど要します。

一般的にはこのようになっていますが、会社に重大な損害を与えるようなトラブルや事件を要因とし、会社側としてその労働者を即時に解雇することが必要とされるような場合には、解雇予告除外認定は事後申請にし、先んじて労働者に懲戒解雇の通告をするパターンもあります。
ただし、事後申請した結果、却下となった場合は、普通解雇と同様の「30日前までに予告する」または「平均賃金の30日分を予告手当として支払う」が必要となるため、それぞれに則って解雇とすることになります。

退職金の不支給または減額

懲戒解雇にもかかわらず退職金を支給する会社は、ほとんどないと言って良いでしょう。懲戒解雇になるということは、それだけ重大なトラブルを起こし、会社に多大な損害や影響を与えていることが考えられるわけなので、そこは容易に理解できる部分だと思います。

しかし、こちらにもやはり決まりがあり、会社の就業規則に「懲戒解雇の場合は退職金は支給しない」旨が明記されていることが必要となります。逆に言えば、就業規則に明記されていないのであれば、不支給を強行することはできないということになりますので、労働者が請求することは可能です。

なお、長く会社に勤めて貢献してきた労働者が何かを理由に懲戒解雇となってしまったといったケースにおいては、その労働者の姿勢次第で、不支給ではなく「減額支給」とすることもあるようです。

その後の再就職が不利となる

これは誰もがイメージを持っていることだと思いますが、懲戒解雇をされてしまった場合は、その後の再就職が極めて不利となります。

前職が懲戒解雇による離職であることを正直に出していれば、当然ながら各企業はそれだけ不採用とする可能性が高いですし、書類選考の時点でアウトとなってしまうでしょう。

ただ、懲戒解雇となったこと自体は、再就職活動時に履歴書に明記する義務も事実上なければ、面接で自発的に申告する必要もないことです。

ところが、再就職先での雇用保険切り替え手続き時などに離職票を提出することになった際、そこに懲戒解雇となった旨が記載されている場合は、その時点で露呈されることになります。もし、書類上や面接時に自己都合退職であると偽っていた場合は、また「経歴詐称」を理由に懲戒解雇となってしまう可能性があるのです。

懲戒解雇の条件

文書

繰り返しお伝えしているように、懲戒解雇は最も重い罰則です。よって当然ながら、それ相応の事由があったり事態が発生していなければ、認められるものではありません。

懲戒解雇とするためにはまず条件が4つありますので、解説していきます。

企業秩序違反であること

前提として、懲戒解雇とする理由が、極めて重大で悪質的な「企業の秩序を乱す行為」(従業員の責に帰すべき事由)である必要があります。
詳細は後ほど、一つ一つ確認していきましょう。

就業規則に記載されていること

次に必要な条件は、会社の就業規則に、懲戒解雇に関する事項の明記があることです。どういった場合に懲戒解雇となるのかといったことが記載されていなければ、仮に刑事事件に相当する行為を犯した者であったとしても、「懲戒解雇」にすることはできないのです。

社労士など専門家が就業規則を作成しているような会社であれば、まず間違いなく、こういったことは記載されているでしょう。そういう意味では基本的に、大きな会社においてはこの条件を満たさないといった事態にはならないと思います。

ところが、労働基準法では「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届けなければならない」としています。つまり、労働者が10人以下の零細企業などの場合は、就業規則といったものがないということがあり得るのです。

解雇手続きが正当であること

先述した通り、即時に懲戒解雇とする場合には「解雇予告除外認定」が必要となります。
加えて、対象者の悪質性の程度にかかわらず、弁明の機会は平等に与える必要もあります。

社会的にも「懲戒解雇」とするべき事由であること

解雇理由が懲戒解雇として相当性があること、また、それ以外の処罰(降格など)とすることができないのかなど、懲戒解雇するに相応しいとする状況である必要があります。

解雇予告除外認定基準

手錠

前項の1つ目で述べた「企業秩序違反であること」ですが、会社が懲戒解雇対象として労働基準監督署に解雇予告除外認定の申請をした時は、従業員の勤務年数や勤務状況、地位や職責などを考慮した上で、これから紹介する6つの基準に照らして使用者と労働者の双方から直接事情などを聞いて判断されます。実際に労働基準監督署が示している「解雇予告除外認定基準」を参考に、一つずつ確認していきましょう。

横領や傷害など刑法犯に該当する行為があった

会社内における窃盗や横領であったり、社外で傷害事件や強制猥褻行為を起こすなどして逮捕された場合は、認定基準を満たすことになるでしょう。
実際に刑事告訴されなかったとしても、懲戒解雇の事由としては当てはまる可能性が高いです。もちろん、社内外問わず刑事告訴された場合は、職務に戻れなかったり、雇用を継続することが会社の信用失墜に拍車をかけるであろうことから、なおさらです。

職場の風紀や規律を乱すような行為があった

賭博やセクハラなど、職場の風紀や規律を乱すような行為により他の従業員に悪影響を及ぼす場合は、認定基準を満たす可能性があります。軽度なハラスメントの場合は判断が困難となることもありますが、痴漢などの猥褻行為や脅迫行為などにより刑事告訴された際は、認定されると考えられます。

経歴を詐称した

最初はバレなかったとしても、ある日、何かをきっかけに経歴の詐称が発覚した場合は、懲戒解雇となる可能性が高いでしょう。学歴や職歴はもちろん、所持している資格や免許に虚偽があったり、過去に犯罪歴があった場合は、会社の信用問題にも関わってくる大きなことになり得ますので、認定基準をクリアすると考えられます。

他の事業へ転職した

ここで言っているのは「副業をしていた」というレベルではなく、他の会社の社員としてフルタイムで就業していた場合となります。当然ながら、2つ以上の会社で職務を果たすことはできませんし、重大な就業規定違反になると考えられます。

2週間以上無断欠勤し、出勤の督促に応じない

犯罪に巻き込まれたなど、やむを得ないような正当な理由もなく無断欠勤が長期間続いた場合は、懲戒解雇が認定されるでしょう。その基準となる期間は、「2週間以上」とされています。逆に言うと、このぐらいの酷い状態でなければ、即時の懲戒解雇にはならないということです。
これは労働基準監督署が明示していることなので、仮に会社の就業規則にもっと短い期間で懲戒解雇とする旨が記載されていたとしても、労働基準監督署における認定はされない可能性が高いでしょう。

遅刻や欠勤が多く、幾度も注意を受けても改めない

勤怠不良が多く、数回にわたって注意を受けても改善が見られない場合は、懲戒解雇の認定がされる可能性があります。つまり、無断欠勤ではなかったとしても、あまりにも勤怠の悪い状況が継続するようであれば、それを理由に認定されることがあるということになります。

まとめ

以上が懲戒解雇の具体的な内容でしたが、いかがでしたでしょうか。
解雇自体、会社にとって施行することが難しいことであることはもちろんのこと、その中でも懲戒解雇がどれだけ重い処罰であるか、ご理解いただけたと思います。
よって、懲戒解雇や懲戒免職となるということは、それだけ労働者に大きな非があるということになるのです。万が一、自分が懲戒解雇となってしまった場合は、心から深く反省してその後の考え方や振る舞い方を改める必要があります。

しかし、もし不当な解雇だと思われる事態が発生した場合、つまりここで解説したような事由に当てはまっていないと思われるような場合には、弁護士など専門家へ必ず相談するようにしましょう!

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