事実婚とは?同棲との違いやメリット、デメリットを紹介!

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「結婚」と言えば、いわゆる「法律婚」を思い浮かべる人が多いでしょう。実際、一昔前まではこちらが当たり前の世の中でした。
しかし最近は女性も社会進出したことにより、「事実婚」という形態も目立ち始めています。

あなたは、この「事実婚」というものをご存知でしょうか。耳にしたことはあるけど、詳しくはよく分からないという人もたくさんいるかと思います。
ここでは、事実婚の内容とメリットやデメリットについて解説していきます。

「一緒に暮らしていきたいけど、結婚はまだちょっと…」とためらわれている人は、ぜひ参考にしてみてくださいね!

事実婚とは

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周りから見ても通常の夫婦と特に変わりのない生活を送っているものの、いわゆる「入籍」という法的な婚姻をしていない状態のことを「事実婚」と言います。

内縁関係とほぼ同義であり、事実婚には「結婚の意思」や「夫婦としての意識」があります。つまり、婚姻届を役所に提出しておらず姓を同一にしていないといった戸籍上の法的手続きが行われていないだけで、実態としては夫婦として生活をしているのです。

「同棲」との違い

同棲とは、カップルが「一緒に住んでいる」だけのことを言います。よって、お互いに「夫婦」という意識はなく、あくまでも「恋人同士」であるため、法的な権利(※詳細は後述)などもありません。

事実婚における義務や権利

事実婚は「婚」と付くことからも分かるように、「事実上の婚姻関係」として扱われます。そのため法律的な義務や権利も、法律婚と同じレベルで有しています。
具体的に挙げると、以下となります。

  • 同居・協力補助義務
  • 貞操義務
  • 婚姻費用分担義務
  • 日常家事の債務の連帯責任
  • 夫婦別産制と帰属不明財産の共有推定
  • 財産分与と不当破棄への慰謝料
  • 第三者の不法行為に対する救済
  • 遺族補償および遺族補償年金の受給
  • 公営住宅の入居や携帯電話の家族割引など

「法律婚」との違い

  • 相続権がないなど、有さない権利がある
  • 重婚罪が成立しない
  • 子供が生まれた場合、「非摘出子」となる

こういったことから、事実婚のまま暮らしてきたカップルであっても、子供ができた場合は婚姻届を提出して法律婚へ移行するパターンも多いようです。

なお、事実婚のカップルの片方または両方が別の人と法律婚をしている場合は、「重婚的内縁」という扱いとなります。

事実婚のメリット

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事実婚は法律婚と比較した際に、大きく2つのメリットがあります。

  • 手続きが簡単
  • 実質的な「離婚」をするのが楽

婚姻届を提出しない、つまり戸籍上においては影響がないため、このようなメリットが存在します。それぞれについて、具体的に解説していきましょう。

手続きが簡単

最大のメリットとも言えるのが、法律婚と比較して圧倒的に手続きが簡単だということです。正確に言えば「簡単」どころか「ほとんど不要」ということになります。

法離婚の場合、様々な手続きが必要となってきます。その根本的なものとなるのが、言わずもがな「婚姻届の提出」です。

法律婚は、婚姻届を記入して役所に提出し、受理された時点からスタートします。この瞬間は記念すべきタイミングであり、どんなカップルも喜びに満たされる素敵な感動を味わえることでしょう。

しかし、ただ喜んでいられるだけなのも束の間、この後には個人差はあれど大変多くの各種手続きが必要となります。それは、片方の姓が変わるからです。(※外国人との結婚を除く)

まず結婚をしたならば、会社への各種書類提出が必要となります。自身の雇用形態や、配偶者を扶養に入れるかどうかなどにもよりますが、社会保険や税金関係なども含めて2~4種類くらいの書類提出を求められるでしょう。もちろん、住民票などの確認書類の取り付けも必要となります。

さらに、銀行、免許証、パスポート、クレジットカード、ネットショッピングなどのそれぞれの名義もすべて一つ一つ変更手続きをしていくことになります。ネットショッピングなどは即時に手続きが完了するものの、利用しているサービスが多ければそれだけ手続きする量も増えます。銀行やクレジットカードについては数日から数週間を要しますし、パスポートに至っては手続き費用もかかってきてしまいます。

これらのことを考えただけでも、人によっては結婚後マリッジブルーの要因にもなりかねないほどのボリュームですね。もちろん、こういった手続きを一つ一つ済ませていくことに充足感を覚える人もいるとは思います。

いずれにしても、法律婚の場合はこういった負荷が発生しますが、事実婚の場合はせいぜい住所変更くらいですので、極めて手続きが簡単だと言えます。すでに同棲していたのであれば、実質的に手続きが無いというパターンもあるでしょう。

ただし、事実婚によってパートナーを年金や健康保険の扶養に入れる場合や携帯電話契約の家族割引などを受けるということであれば、それらの申請手続きは別途必要となります。ただ、これは負荷というよりも、むしろメリットに当たりますね。

実質的な「離婚」をするのが楽

法的な婚姻をしていないことから、事実婚の場合は実質的に「離婚」にあたる別れが楽であることもメリットと言えるでしょう。別れに伴う精神的な面はさておき、少なくとも戸籍上や手続きの観点から言えば、確実に「楽」です。

これもやはり姓が変わらないことが理由であり、各種名義を再度変更していく必要がないことはもちろん、見た目上「離婚した」という明確性がないことから世間体においても法律婚における離婚より気持ち的に楽であると言えます。

言い方を変えると、事実婚は「離婚しやすい」ということになります。そこには、プラスなものとマイナスなものの両方の意味合いが含まれているということです。

プラスの視点から言えば「夫婦生活が辛くなった時に、無理に我慢しなくて良い」ということになり、マイナスの視点から言えば「離婚に至るハードルが低いため、簡単に別れてしまう」ということになります。よって、良くも悪くも、とても自由で楽な形式の結婚形態だと言えるでしょう。

メリットのまとめ

  • 改姓しなくて良い(手続きが簡単)
  • 別れても戸籍に傷がつかない(離婚が楽)
  • 相手の家族や親族との付き合いにおいて、距離感を比較的自由に持てる
  • 対等なパートナーシップを築きやすい

事実婚のデメリット

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それでは、次にデメリットについて確認していきましょう。

「事実婚は自由な上に法的な権利も多々あるから良い」ということだけを考えていると、後々になって後悔をしてしまう場面が出てくるかもしれません。
そうなる前に、あらかじめ知っておきたい事実婚におけるデメリットについて紹介していきます。

相続の権利がない

法律婚と同等の権利が発生する事実婚ですが、残念ながら相続権はありません。
もし、相手を介抱して看取ったとしても、遺産の相続権は事実婚の配偶者にはないのです。

ただし、遺言が残されていた場合は相続すること自体は可能となります。しかし、戸籍上における本来の相続人が申し立てることによって遺留分は諦めなければならない他、相続税の控除がないどころか加算されてしまいます(血縁者や配偶者ではないため)。

税金における控除は対象外

事実婚の場合、夫婦が得られる税金面での控除を受けることができません。人によっては、これが最大のデメリットと感じるかもしれませんね。

事実婚であっても、それが認められており他の適用条件も満たしていれば、年金や健康保険においては扶養者とすることが可能です。しかし、税法上においては「法律上の関係」が重視されるため、配偶者控除を受けることや医療費控除をまとめるといったことはできないのです。

子供が非嫡出子になる

事実婚のまま子供が生まれた場合、「非嫡出子」(婚姻関係を結んでいない男女の間に生まれた子)となります。

非嫡出子は「夫婦2人の子」とはならず、「母親の子」ということになり、母親の戸籍に入ります。

父親が認知をすれば「認知した父」として戸籍の父親欄に父親の名前が入り、その父親の相続をすることができますが、認知していない場合は法律上は親子関係が認められないため、父親の相続ができなくなってしまいます。

このように、子供にリスクが発生するのが事実婚のデメリットの一つです。そのため、子供が生まれることをきっかけに、法律婚に移る夫婦も多いようです。

「夫婦の証明」が困難

配偶者が急に倒れて病院に運ばれた場合でも、事実婚だと証明がすぐにできないため面会ができないといった事例が存在します。それどころか、緊急手術が必要となった際にも、手術の同意書にサインできないことがあるそうです。

また、生命保険の受け取り人に指定することも困難なようで、日本においてはまだ社会的に認められているとは言えない部分が各方面において多々あるのです。

内在的に「同棲」と「事実婚」をしっかり区別して暮らしていたとしても、「同性ではなく確かに事実婚だ」と一発で外部に証明することは極めて困難と言わざるを得ません。そのため、何かあった時に周りからいちいち細かく追求されたりすることもあるでしょうし、わずらわしさを感じる場面が出てくる可能性は高いと言えます。

ちなみに、完璧な証明にはならないものの、一つの補助資料として住民票を有効活用することがあります。それは、住民票上の続柄の片方を「夫(未届)」や「妻(未届)」としておくことです。
(※一般的には、夫を「世帯主」、妻を「妻(未届)」にするケースが多いでしょう)

デメリットのまとめ

  • 相続権がない
  • 税金の配偶者控除を受ける事ができない
  • 子供が非摘出子になる
  • 社会的に「夫婦」としての信用性が不足する
  • お互いの家族や親族の理解を得るのが大変
  • 他人に説明するのが面倒
  • 生命保険の受取人に指定するのに手間がかかる
  • 戸籍上の拘束がないため、夫婦としての結束力に不安定さがある

まとめ

いかがでしたでしょうか。
事実婚には一言で「束縛感が少なく自由性が高くて楽」というメリットがある一方、「証明が困難で、社会的理解も不足」というデメリットがあります。

事実婚という形態を選択するカップルは増加しているものの、しっかりと全員が客観的事実などを認識しているとは言えないのではないでしょうか。

今後も事実婚が増加していけば、現時点で不足している権利なども付与されていく可能性がありますが、まずは現状を知った上で最適な夫婦生活を選んでくださいね!